勉強を好きになる玄米

「ねえ、ご飯がなんか変だよ」

「これは特殊な玄米なの。これを食べれば、どんな人も勉強が好きになるんだって」

 里美は怪訝そうな顔をした息子の志恩にそう語った。

「一学期の通知表の成績が良くなかったんだから、これでも食べて少しでも頭が良くなるといいわね」

「本当?」

 志恩は不思議に思いながら、玄米を食べた。


 食後に志恩は自分の部屋に戻って机に座る。

「本当にあの玄米で勉強が好きになるのかな?」

 そうつぶやきながらも夏休みの算数の宿題を進める志恩だった。


 二学期の終わり。

 志恩は家の前で通知表を見て、ニヤリとした。

「これならすげえ褒めてもらえるな」

 そこへ一台の軽ミニバンがやってきて、おじさんが荷室から米袋を出す。

「おお、坊や、お母さんがいつも頼んでいる玄米だよ」

「えっ、これが勉強が好きになる玄米ですか?」

「これはただの青森県産だよ。まさかだまされて、その気になっちゃったか」

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