無職の僕に、なぜか異世界で大人気のゲームキャラ『アヴァロンの騎士』と同じ姿をした3人の女の子が押しかけてきた!?
あずま悠紀
第1話
「えーっと、とりあえず落ち着こうか。話せばわかるからさ」
3人の女子たちは無表情なまま、それぞれ僕に向けて右手を伸ばしてきた!
これはマズイっ!! こうなったら――僕はポケットに手を入れてスマホを起動し、『アヴァロン騎士~最強の騎士は異世界でも無口だ~』の主人公にして3人の中で最も美しい少女【レイシア】のカードを取り出す! 3人ともこのヒロインが好きだというのはわかっている! 3人はきっとレイシアの格好をした僕の言うことをきいてくれるはずだ!!
――だけど3人のうち2人が僕の方に歩み寄ってきただけで、残りの1人がその場から動かなかったことで、僕の計画はあっけなく破綻してしまった。
「お姉様。私はその方を殺すべきだと考えますわ」
金髪ツインテールの少女【エリカ】の言葉によって――
――僕の手からスマホが落ちていったのだった――
「えぇぇ~~ッ!!」
まさに寝耳に水とはこういうことなんだろうな。まさかこんな展開になるとは全く予想してなかったよ。
どうやら、あの金髪ツインテールの【エリカ】ちゃんが僕の味方じゃないみたいだね。ということは残り二人の【レイシア】【アーシャリア】のどちらかってことだよね? よし。それじゃまず、この状況を打開するためにも、彼女たちについて知っておきたいところなんだけれども――正直言って誰なのか全くわからない! 見た目だけ似てるんじゃ区別しようもないんだけど、そんなことより、どうしてこの人たちは急に押しかけてきたのかを知りたい!! そもそも僕は何も悪いことをしていないはずなのに!! はぁ。とにかく落ち着こう。まずはこの人たちが何者でなぜ僕を殺そうとしているのかを探ろうじゃないか!
よし、そうと決まれば質問をしてみようかな。とりあえずは――そうだなぁ。よし。やっぱりここは、まずは定番である自己紹介をするべきだと思うんだよねぇ。ということで自己紹介からいこうかな。うん。そう決めたよ。さてさて一体どんな挨拶が返ってくるのかな?
「初めましてこんにちは」
――ん? なんか違うぞ。あれ、僕間違って何か言ったっけ?
「初めましてこんにちは。わたしの名は【サーティアン】です」
え、ちょっと待って。サーティアンって何のことですか? え???? しかも、よく考えたら名前を聞いているのだからこちらも名前を言わないと失礼にあたるよね!? でも困ったことに僕の名乗るべき名はこの世界に存在しないんですよ!!!! はあああ!!!? もうどうすりゃいいんだ!!!??? というか今更なんですけどあなた達はいったいどういう目的でここに来たんですか?? あとなんで僕の部屋に上がりこんでいるのでしょうか!!!? と疑問を投げかけるために言葉を発するよりも先に彼女達の姿が消え去った!!?? 消えたと思ったら次の瞬間には目の前に再び現れていたんだけど――今度は何が起きてるの!? また僕の思考を遮る出来事が起こったわけですよ!?!? もう訳が分からない!!!! そして現れた4人目の女の子は【アーシャリア】と名乗ったのだけれど、これがなかなか強烈な印象を残してくれた子なんだよねぇ――
「えーっと、つまり、君たち4人は全員レイシアのクローンで姉妹のような存在だということなんだよね?」
僕は必死になって情報を整理しようとしていたんだけどね。だって意味不明すぎるんだもん。
結局、僕に襲いかかってきた理由は『お姉様が殺せと命じた』とかなんとか――そんなことを言い出してただけだった。どうもレイシアの命令だとかで僕を殺しに来てしまったみたいなんだよねぇ。いやほんと勘弁してほしいんだけど!! ともかく今は落ち着いて話をしないとだよね! よし! とりあえずは自己紹介でもしよう! みんなの名前を聞くのを忘れないようにしないと!
――そう思っていた時期が確かに僕にもございました。はい! 4人ともまったく同じ容姿なので見分けることが全く出来ないのだよ! これは参ったなぁ! うーん、どうしようかな。というところで僕は一つの閃きを得てしまった!! よし! これならきっと何とかなるはずだ! ということで試してみるよ! 3人とも僕の前に整列していてくれているんだけど、ここで一つやってみたかったことがあるのです! その前に、まずは3人の立ち位置の確認をしておこう!! この3人はそれぞれ左右の位置に立っていてくれてるんだけれどもね。その立ち位置の関係から察することが出来たことが2つほどあるんだ! 3人の中で1番右側にいる子は僕の正面を向きながら左側に視線を送っていたし、1番左側の子の右隣にいる子と、真ん中にいる子が同時に僕の方を見ていた。これは恐らく間違いない!! よし! まずは向かって右側の子に近付いて行ってみようかな。よし、早速やってみるか。まずはゆっくりと歩みを進めつつ話しかけてみるとするか。
「あのぉ。ちょっと聞いてもいいかな? 僕、ずっと聞きたいことがあったんだけど、その質問をしてみてもいいかな?」
「なんでしょう。私のスリーサイズを聞きたいとでも言うのですか? それとも好きな食べ物の話をしましょうか。それともお風呂の時間について話し合うのもありかもしれません」
おおう!? 急に話が始まったよ。なんだろう、この人。無表情すぎて感情が全然読めないというか、そもそも表情が変わっていないのでは? まあそれはそれで可愛いとは思うけれども、やっぱり人間ってさ。もっと喜怒哀楽が激しい生き物だと思ってるんだよね! うん。それにしても、スリーサイズって――いきなり何を言っちゃってるのこの子? そんなことは絶対に知りたくない!
「いやいや! そんなことを聞こうとしてはいないよ! ただね。君が右側を向いていて、君の左隣りの子も同じ方向を向いていたり、さらにその隣の子も同じ方向の目線で僕をじっと見たりしているのを不思議に思ったからさ。気になっただけだから!」
――おっ。やっと彼女の顔に変化が現れた。目が大きくなったような感じだね。うん。やはり、3人の中でも1番この子は可愛いね。この可愛らしい女の子から、この子について少しだけ情報が得られたぞ!
「なぁるほど。ふむふむ。貴方の質問について考えて見ましたが、結論から言って、貴女の質問に対する回答は【YES】になります。私は貴方がどのような人物かを判断するため、そして貴女のことを常に観察していたのですよ!!」「へ? ど、どういうことですか? ぼ、僕ってそんなにおかしな行動をしていましたかね?? えっと。例えば、どういう風に僕を見てたんですか?」
「はい。私が見たところ、貴女の言動には不自然なところが多すぎます。まるで、どこかの誰かが、私達の姿を模造したかのように。その証拠に貴女の一人称もおかしいですし。他にも、仕草一つ一つを注意深く見てみれば、どこか機械的というか。明らかに普通の人間がとるような動作を逸脱している部分があります。そうですね。簡単に言えば、非常に高度なAIが搭載されているかのような印象を受ける、といった具合です」
――この子すごい洞察力を持ってるんじゃなかろうか。もしかして天才なのかな?? でもそうなると余計に謎が深まるよね。なぜこの人たちはレイシアの命令だけでここまで僕を殺しに来るのだろうか? そもそもどうしてこの世界にレイシアのクローンが? しかも4人もだ。しかもこの世界に来た目的もよくわからないんだよなぁ。僕を殺すって――一体なんなんだってばよ!? と頭を抱えていると、突然アーシャリアが口を開いてくれた。どうやらこの場を仕切り直すつもりなのかな? 助かるぜ! ナイスタイミング! さてどんな話題になるのか――楽しみにしておきたいところだよ! それじゃよろしくね! とばかりに手を差し伸べて握手を求めてしまう僕だったりする。だって他にやることがないんだもん! はい。もちろん無視されて終わりましたよ。はい。悲しいね。
「どうでしょうか。もしよろしければ私たちのお願いを聞いて頂けないですか? いえ。聞くしかないと思いますよ? 私たちは、レイシアの命令がなければ動くことが出来なくなってしまいました。でも貴女なら、レイシアが設定した命令を無視して行動できるはずですから」
ん? ちょっとまって。設定を無視したらまずいって、それじゃ僕のスキルも発動しないということになってしまうんじゃないの?? それってまずくない!? でもレイシアには『僕のステータス画面を見るな!』と言われているわけだしなぁ。でも、このアーシャリアって子は、その僕の【偽装スキル】を解除しても問題ないと判断したのかもしれないね。まあそういう判断をされる程度に僕は信用されてしまっているわけなのか?? それと、そもそも、なんで僕の能力を知ってるのかなぁ。うーん。よくわかんないけど、まあいっか! よし! とりあえず話を聞くことにするぞ!! アーシャリアの話は続く
「単刀直入に言ってください。私たちは、これからどうすれば良いのでしょう。私たちはもう生きる意味すら分からなくなりつつあるのです。お姉様の命令通りに生きていくことしかできない。そんな存在になっています」
え? 急にどうしたというのか。なんか話が飛躍していないかい? それに生きる意味がないって――
んん?? もしかして僕ってレイシアの設定で生み出された存在ってこと?? そんなことを考えていた僕の前に突如として【エリカ】が現れる。そう。僕と初めて会った時と同じような格好で。そして彼女は僕の耳元でこう囁いたんだ。『レイシアはわたしが殺す。あなたが生き残る方法はわたしに従えばいい。わたしに従う限りあなたの願いをかなえよう』と――僕はこの時理解したんだ。この【エリカ】ちゃんは僕の【偽装】を見抜いているってことを。その上で言っているのだということを。
だから、僕の出した答えはこれだ――
「分かったよ。君たち3人のことを信頼すると約束する。だから僕の質問にもしっかりと応えて欲しい」
アーシャリアは僕の手を取ってくれていたんだ。僕が彼女の手をギュッと握ることで返事をすると同時に『はい』と呟いてくれたんだよ。その言葉を合図にするかのように、残りの3人が一斉に僕の元へ近づいてくると、それぞれ僕の右手のひらへと順番に触れてきた。それと同時に彼女たちの身体は淡い光に包まれ始める――
そういえば、レイシアの時は僕が触れるたびにレイシアの姿が徐々に変化していったんだよね。この【エリカ】っていう子の場合もそうだといいなぁと思いながら見守ることにした。
しばらく経つと光が消えて行ったんだけど、そこには【アヴァロンの騎士の装備一式】を装備した彼女たちがいたんだよ! うん。本当に綺麗な人たちだ。みんな美の女神が降臨しました! と言っても過言じゃないほどだよ。そんな美人たちが僕に『お慕い申し上げております』って言ってくれたんだ。うん! これって最高だね!!
――そう思った瞬間に、僕は意識を失ってしまうのだった。あ、やばい、この流れってまずいかも!! と心の中では思っていたものの、抗うことなど出来るはずもなく、そのまま倒れこんでしまったのだった。
**
***
僕が目を覚ました時には辺りが明るくなっていたんだ。うーん。いつの間に寝てしまったんだろう? とりあえずは現状を把握しないとダメかなぁ? あれ? ここは――僕が目を開けている場所から見える景色には見覚えがあったんだ。僕が最初にこの世界に降り立った時の草原じゃないか。というか――
――僕の目の前に3人の女性が並んで座っていたんだ! 金髪ロングストレートの子。赤髪ショートヘアの子。青髪ショートカットの子――って、え? こ、これは一体どうなっているんだい??
「あら。ようやく目覚めたようね。おはようございます。私達は、貴女の敵ではありません。私はエリカ。隣に座っているのが妹のアーシャリアと、双子の姉妹のアイシアとセフィラです。貴女が目覚めるまでずっとお話をしていました」
「うん! よろしくね! あたしがアーシャルで、こっちがアイシィよ!」
「え? ああ。ど、どもです。よろしくです。それでどうして僕の前に現れたんですか?」
「ふむ。やはり私の思った通り、まだ記憶の混乱が治っていないみたいですね。まずはこの世界で貴女が何をしてきたか。貴女の記憶にあることだけでも教えてください」
それから僕は彼女にこの世界に飛ばされる前に僕に起こっていた出来事を話し始めたんだ。でも不思議なことにレイシアに騙されて殺されたことは言わなかったんだよね。それは彼女達に嘘を教えることになるような気がしたから――
――そして話を聞き終えた彼女たちはというと、真剣な表情を浮かべつつ、なにやら思案し始めているのであった。
* * *
それから3人は相談を始めてしまう――その内容は僕を殺さないかとかそんなことだったと思うんだけど。僕としてはそんな話聞きたくないから無視してしまおう! うん! それにしても3人とも綺麗だなぁ――やっぱり、僕も男の子なんだよなぁ。どうしても気になるんだよねぇ。よし! 思い切って聞いてみちゃおう! 僕は、【エリカ】さんの胸について触れてみることにした――そう、巨だ!! ん? なんだろ? なんか睨まれている感じだけど、どうしたんだろう??
「あの。何か気に障りましたかね?」
「いや、なんでもないわよ。えっと、確かレイシアが貴女のスキルは偽装スキルと言っていたわね? その偽装はどこまで通用するものなのかしら?」
「うーん。正直言ってレイシアにはバレてるっぽいですけど。たぶん【エリカ】ちゃんにも同じだと思うんですけど。試しに【ステータスオープン】と言って貰っても良いですかね?」
僕が【ステータスオープン】と言うと、僕の視界の中に【偽装解除】って文字が表示される。そしてそれをみた彼女たちが驚愕の眼差しで僕を見てくるわけなんだけど――あれ? もしかしてこの人なら信用できるんじゃないかな? そう思ったからこその質問をぶつけてみる。
『僕の【偽装】は解除できる??』ってね。すると彼女たちはすぐに反応してくれたんだ。
『私達を信用してくれるのなら――』とね。
僕は大きく首を振ると同時に彼女たちの言葉を遮って宣言をしたんだ。
「もちろん! 信じさせていただきます! だからお願いします! レイシアを殺す手伝いを僕にさせてくれませんか?? 僕はレイシアに復讐をしなければならないのです!!」ってね。
「わかりました。では早速作戦を話し合いましょう。貴女が協力してくれることで私達はかなり有利になるわ。さあ、時間がないわよ! 早く始めましょ! 3対1の状況を作ってしまうなんて流石に想定外だったのよ! まずは私達が貴女の仲間として認識できるようにしないといけないのよ! それに貴女はレイシアに対して【鑑定スキル】を持っているはずだし、貴女自身が【偽装】を発動することでレイシアに対抗することが出来るのよ! ただ【エリカ】の身体を使っている私が【偽装】を使ってレイシアのスキルの影響を受けてしまうのが唯一の弱点なのよ」
そう言いながら、僕に向かって手を差し伸べてくれるんだ。だから僕はすぐに彼女の手を握る。そうすれば彼女たちも僕のことを信じてくれるってわかっているからね。だって彼女たちは、僕が『レイシアを倒せるかもしれない力』を持ってここに来ていることを理解しているんだから。
『エリカ』ちゃんの口ぶりから察するに『アーシャリア』ちゃんと『アイシア』ちゃんの姉妹のどちらかがレイシアと入れ替わっているという可能性が高い。そうなると彼女たちの本当の目的はなんなのかを知りたいんだよ。それが分からなければどう動いて良いのか分からないからね。とにかく、今は彼女たちの目的を知ることが最優先事項だよ! だから彼女たちの話に乗るしかないと思ったんだ。
僕たちは今レイシアに殺されないようにするためにどうすれば良いのか話し合っていた。彼女たちの話だとレイシアを倒すためにはまず、レイシアと僕が入れ替わる必要があるみたい。そこで僕が彼女たちのことをレイシアだと認識していなければ【鑑定】が通用しない可能性があるんだって。でも僕はレイシアの容姿を知っているわけだから当然、【鑑定】することが出来るわけ。だからこそ【偽装】を使ってレイシアと僕の外見を変えるって話になったんだ。
レイシアは僕よりも少し身長が高い。それに加えて銀髪の髪がとても長いため髪型が特徴的だったりする。つまりレイシアの特徴とも言える部分を隠すことが出来れば僕と入れ替わっても問題なく、彼女たちは安心してレイシアとして行動することが出来て僕の方も【偽装】の能力を使用することができるって話になっているんだ。
「うん! じゃあ【偽装】のやり方を説明するね。エリカちゃんが、まずは僕のことを貴方って呼ばずに貴女と呼んでくれると嬉しいなぁ。そして、まずは自分の姿を確認することから始めてね」
そう言って【偽装】を使用する準備を行うことにした。といっても【アヴァロンの騎士シリーズ一式】を着るだけなのだけれど。僕は、3人が見ている前で次々と着替えを行っていった。そして彼女たちの目の前に現れたのは僕であって僕でない人物だった。僕の姿をレイシアがしているのだ。
そして僕の口から僕の声ではなくレイシアの声が発せられるのである。
『わたしの身体がここまで完璧になるとは――』
僕の身体は完全にレイシアと化していた。鏡を見るとそこにはレイシアが立っているんだよ。レイシアが僕を見てきている。うん。僕の【偽装】は完璧に作動したって確信した。でも彼女たちからはまだ、その確証を得ることができていなかったんだ。そのため彼女たちからの質問が飛び交ってくる。
彼女たちが求めていたのは、この【エリカ】の身体と僕の姿を完全に一致させる方法なんだけど、これは意外と簡単な方法で実現できたんだよ。僕は自分の髪の毛を一房取るなり【鑑定】してみることにしたんだ。その結果が――『エリカ』という名前が頭に浮かぶ。うん! 成功だ! これこそが【アヴァロンの騎士のスキル一覧表】に記載されていた『偽装の魔剣』(僕にしか使用できないアイテムらしい)の効果なのだろう。これで僕は、【エリカ】の身体を手に入れたんだ。これでもレイシアには絶対に見破れない。僕はこの事実をもってレイシアと【アヴァロンの騎士のスキルの一覧表】をすり替えることに成功したんだ。
――こうして僕たちはこの世界の真実と向き合うことになったのだった。
*
* * *
***
「なるほど、そうでしたか。それでこの世界にやってきてしまったというわけですね。ところで、私のことについて何か気付くことはありませんか?」
ん? どういう意味だろうか? 特に気にすることなどはないはずなんだけどなぁ? 僕がそう思っていたのが顔に出てしまっていたのかな? 【エリカ】の顔を曇らせてしまったよ。彼女はこう言うんだ。『私と貴女はとても似ているのです。私は貴女で貴女は私です。ですから、もし貴女が望むならば私は貴女を受け入れることができるのです。私の中に貴女の意識を残すことも出来ると思います。私と一緒に行きましょう。貴女にとっても悪くない話です』とね。そんな言葉をかけてくれたんだ。
正直な話、今の段階では【エリカ】が何を言っているのか僕は全く理解できていなかった。それでも【エリカ】が言っていることを聞いているうちに何となくだけど彼女が何を言おうとしているのか、その真意を察することがきるようになった。
要は、【エリカ】の肉体を使えば僕は本来のレイシアを殺すことだって出来るかもしれない。ただ僕は彼女を殺していいものか判断が出来なくなっている。でもレイシアは、僕のスキルとこの【アヴァロンの騎士】の身体を奪い取って僕を殺そうとしてくるに決まっているんだ。
だから僕に【偽装】を教えてくれた彼女から、この世界に来る時に渡された『聖槍グングニルの加護の書』の【ステータスプレート】について説明を受けた後、僕は彼女と【エリカ】の中に入ったんだ。
『レイシアは僕にとって一番邪魔になる人間なんだよ。あいつを殺さないと気が済まないんだよ』
『ふふっ。そうでしたか。でしたら私もレイシアを殺そうと思います。それにレイシアを殺せなければ私たちは確実にレイシアに殺されてしまいます。だから私たち姉妹の力を合わせる時が来たということです。貴女に【神域の聖女シリーズ】を差し上げます。さあ! 行きましょう!!』
僕はこの時、まだ完全には状況を飲み込むことが出来ていない状態だったんだ。だけど、もう引き返せないところまでやってしまった。なら後は突き進むだけだ! そう思いながら僕は【エリカ】と【アーシャリア】と共にレイシアが居る場所へと向かう。するとそこではレイシアの悲鳴が聞こえてきた。それはレイシアが今まで生きてきて一度も味わったことのないような激痛に襲われることを表している。僕たち三人がそこに姿を現すと、その瞬間にレイシアの瞳からは涙がこぼれ落ちるのだった。
「うぐぅ。お、お前達は!? まさか――どうして、私の中に――」
「レイシアさん? もしかして今の状況で、自分が優位に立てていると思っているんですか? もしかして私が誰なのか分かっていないのでしょうか? それとも忘れてしまっているのですか? 私の名前はエリカ。そうです! 私が本物のレイシアなのです! 【アヴァロンの騎士】に乗っ取られている貴方の偽物を始末する為に私達がやってきたんですよ!」「そ、そうだよ。レイシア。僕と君は、ずっと一緒に戦ってきたじゃないか! 僕は君の味方なんだ! だから信じて欲しいんだ! だから、レイシア!! お願いだよ!!」
「嘘よ! 私を裏切るって言いたいんでしょ? でもね! 騙されちゃ駄目よ! レイシア! こいつは私達を利用しようとしているだけよ! レイシアがレイシアを殺すための手伝いをしているのよ! レイシアのスキルを奪うことが目的だったに違いないわ! レイシアがレイシアを殺すのが目的なんてあるわけがないじゃない! そうよ! きっとそうよ! 私がこんな女に負けるわけがないわ! だから私を信じなさいよ! ねぇ! レイシア! レイシアは騙されているのよ! 目を覚まして! こいつを殺してしまいましょ!」
そう叫ぶと【エリカ】が【エリカ】とレイシアの間に立ち塞がる。そして――『レイシア! 覚悟を決めてください!』そう叫び、手に持っていた武器を彼女の首筋に叩きつけた。レイシアは、そのまま気絶してしまったようだ。僕は彼女の手を取り、【エリカ】に話しかけた。
『大丈夫だよ! レイシアは必ず救ってみせる! だから、レイシアを連れて早くここから離れてくれないかな?』
『分かったよ。レイシアのことをよろしくね。私は少し離れたところから君のことを見守らせて貰っていることにするよ。じゃあね』
【エリカ】とレイシアがその場から離れていく。僕は彼女たちの後ろ姿を見守ってからレイシアの方へ歩み寄っていった。僕は【鑑定の魔剣】を手に持ちレイシアに対して【鑑定】を使用する。そうすれば僕の頭の中には【エリカ】という文字と僕の姿が浮かんでくるはずだと思ったのだ。しかし――何も反応はなかったのである。
僕の【偽装】は完全にレイシアを騙すことに成功しているようだった。僕は、この事実をもって【偽装】の能力が完全に作用していることを確認することができた。つまり僕の力ではレイシアを倒すことが出来ないのだ! レイシアと僕は、お互いの姿を見つめ合う。僕はこのチャンスを無駄にする訳にはいかないのだと改めて心に誓ったのであった。
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******お読みいただきありがとうございました。
次話は、『無職の僕』はレイシアを倒すための準備を始めることになります。
本日は、21時にもう一話投稿いたしますので、ぜひ楽しんでいってくださいね。(●
́ω')人(́ε^*)♥*.:+
「なるほど、それで僕の前に現れたんですね。僕と入れ替わるために。でも僕としてはレイシアを倒して良いものか迷っています。僕はこの世界で、やりたいことをたくさん見つけることができています。でも僕は、どうしてもレイシアを許せません。僕からスキルを奪って殺してくるのであれば尚更のこと、レイシアを生かしておくことはできないでしょう」
レイシアが僕の目の前で、気を失った状態のまま倒れ込んでいる。僕たちのやり取りは、全て僕のスキルである【アヴァロンの騎士シリーズ一式】が【鑑定の魔剣】の機能を用いて録画しておいてくれていた。僕たちが交わしていた会話が記録された映像を見れば、この世界にレイシアが現れ、この場にいないはずの【アーシャリア】の名前を口にしていたことが分かり僕たちに何が起きたのかを知ることが出来るだろう。ただその事実を知っている者は僕と彼女たち姉妹以外には居ないだろう。何故なら【アヴァロンの騎士】というスキルの存在そのものがこの世界から消滅させられていたからである。
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「そうなんだ。僕は、あの【アーシャリア】って人が、どうしてレイシアの中に入っていたのか知りたいんだけど――もしかして僕と同じように誰かに頼られてその人にスキルを貸し与えてあげたとか、そういうことだったりしない?」
「はい。実はレイシアさんの身体と入れ替わった後は、私の意思で行動することができなくなります。これは私の能力の一つに、他人の身体を借りることを可能にするというものが存在します。私の【神の領域】というスキルですね。【エリカ】さんにも協力して貰ったのですが、やはりこの能力は私の意識を残したまま他の人に移ることは不可能なようなんです。そこで私は、この世界にやってくる前から私を信頼してくれる人を待ち続けてきました。そうすることで、私の意識を残して【エリカ】の身体をレイシアに奪わせないようにしようと思ったのです」
「えっと、それじゃあ、もしかしてレイシアは――」
「はい。レイシアさんには悪いのですが私はレイシアを殺すことを決めていました。でもレイシアが持っている強力な【偽装】によって私はレイシアの中に入ることしかできませんでした。だから【エリカ】さんの能力を【偽装】してもらった後、レイシアの中に入り、そして、【エリカ】がレイシアの中に入らなくても私が自分で【アーシャリア】として動ける状況を作り出していたのですよ。そして私は、【エリカ】さんと協力してレイシアを殺せば、この世界の管理者に殺されることも無いと思いました」
僕は彼女から聞かされた話を整理することにした。
まず、レイシアは『僕とレイシアの中に入っている2人の女性のどちらかは、僕たちを殺すつもりなのではないか』ということに気づいている様子だった。そしてレイシア自身も僕に自分のスキルを渡そうとした理由や僕がレイシアから『僕の命を奪うこと』についての依頼を受けていると知った時にも僕を殺そうとしなかった理由について理解してくれたみたいだった。だから『もしかしたら彼女は僕を殺さなくて済むかもしれない』と考えていたようである。
僕は『彼女が僕を騙して【アヴァロンの騎士】のスキルをレイシアが受け取れるようにして、その上で僕を殺してレイシアを操ろうとしているのではないか』と不安になっていたけど――どうやら、そういうことではないようだったのでホッとしたのである。でも僕はレイシアを疑ってかかった方がいいんだろうなぁ。僕は彼女のスキルを奪い取ろうとした人間なんだから。
レイシアは自分が利用されていることにも気づいていたのだろうか? レイシアを【アヴァロンの騎士】の呪いに掛けたのは、どうやら彼女の中に入っているという【アーシャリア】らしい。
そう考えれば全ての謎が解けていく。レイシアは自分の中に【アーシャリア】が居ることを知っているようだった。レイシアにスキルを与えようとしたのは【アーシャリア】でありレイシアではないのだ。【エリカ】にスキルを託そうと考えたレイシアが居たように、レイシアに力を貸す【アーシャリア】が存在したということになる。その【アーシャリア】の本当の目的は、レイシアの邪魔者を消し去りたいというものだったようだ。レイシアに自分の中の【アーシャリア】を知られてしまえば自分が狙われることになると気づいたレイシアは【アーシャリア】のふりをして行動することに決めたということである。
「ところで聞きたかったことがあるんだけどいいかな? 君はどうやって僕のところにやってきたの? 君と僕とは縁が無かったよね? なのに君が現れたことが不思議なんだよ。僕はずっとこの世界で一人きりで過ごしてきたからね。だから君との接点なんて無いはずなんだ。君みたいな美人と出会ったのなら覚えていないはずがないと思うんだけれど。もしかしたらどこかで出会ったことがあるのかもしれない。そう思って確認させて貰ってもいい? 本当にゴメンね」
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エリカと名乗った少女の口から驚くべき内容が飛び出してきたのであった。まさかレイシアが僕のところにまで現れることができるとは思っていなかったのだ。レイシアが僕と【アーシャリア】が入れ替わっていることに気づいたのであれば僕の居場所が分かっていても不思議はない。だが【アーシャリア】にそんな力があっただなんて全く知らなかったのである。そう言えばレイシアが『【アーシャリア】には特殊な力がある』と言ってたのを思い出す。きっとそれがこれのことなんだろう。
レイシアが僕に【鑑定】を使わせなかったことやレイシアが僕に対して『私を殺す手伝いをする』と言ったのは僕を信用させる作戦の一環だったという可能性もあるが――正直僕はレイシアのスキルを手に入れるために彼女と【アーシャリア】の両方を騙し続けていたので今となっては全てを鵜呑みにすることが難しくなっていた。
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*エリカと名乗る少女の話によると【エリカ】からレイシアの記憶をコピーしてもらいレイシアを真似して僕の前に姿を見せたのだという。確かにレイシアが【アヴァロンの騎士】のスキルを使えるようになっているのであれば【エリカ】の姿を借りる必要もないもんね。でも僕の前に姿を見せることが出来たということは、レイシアの意識は完全に【エリカ】に移っているのだろうか? 僕はそう考えるのが自然なんじゃないかと思ったのだ。そう考えた僕は、エリカと向き合って話を続けた。僕は彼女にレイシアの意識について尋ねた。レイシアが自分の意識を取り戻したのか知りたかったのだ。すると――
「うーん。そう言われると難しいですね。私はレイシアさんの中にいた訳ですが、レイシアさんの人格を完全に乗っ取るような真似をした訳ではありません。ただ、この世界に来た時のレイシアさんの状態だと私が表に出ることは不可能だったのでレイシアさんに身体を渡したという形になるんですが――その前に私の力の一部を預けていたので、それでなんとかなると思ってレイシアさんと入れ替わることにしたんですよね。それで【アヴァロンの騎士】のスキルの仕組みを利用してレイシアさんの中に入り込んだのです。そして私の能力を使って【アヴァロンの騎士】のスキルを発動させたんです。それでレイシアさんの中の【アーシャリア】の力に呼びかけたところ――私の声に答えてくれました。後は、私の力を使いこなすために、しばらく二人で訓練をすることになったのですが、その間に私がこの世界に来るまでの話をお互いにして意気投合しました。レイシアさんも私のことを信用してくれました。なのでレイシアさんの記憶を【偽装】で隠した上でレイシアさんになり切ってこの世界を生きることを決めたんです」
僕は【アヴァロンの騎士】のスキルにこんな使い方が出来るのだと知って驚いてしまった。そして僕も、自分の力でスキルが進化すれば、このような使い方ができるのかどうか考えてみたのだが、今のところ思いつくことは出来なかった。それにしても【アーシャリア】にそんな特別な力が有ったとは知らなかったよ。でも、これでようやく分かったことがある。
それは【アーシャリア】と僕の間に交わされていた依頼の内容は『僕の命を奪ってくること』であるという事実。つまり僕が【アーシャリア】を殺さないと、僕はレイシアに殺される運命にあったということが分かったのだ。僕は改めて、どうしてレイシアが【アーシャリア】のふりをしていたのか、どうして彼女が僕を殺すためにやってきたのかという理由を理解するに至ったのだった。
そして僕を殺そうとしたのはレイシアの身体を操って、その力を試してみたいというのが一番の目的であり僕を殺してしまった方がレイシアも楽になると彼女が判断していたからなのだと僕は理解する。
【エリカ】に聞いた話では【アーシャリア】はレイシアのことをかなり警戒していたらしい。
僕を殺すためにレイシアに身体を譲らせたり、自分の力を使うために必要な【アヴァロン】を僕の身体に入れてレイシアを操るために僕の目の前に現れたりして、僕を殺そうとしているとレイシアも気がついていたという。
それじゃあ【アーシャリア】がレイシアの中に入ったことで僕の前に現れたという彼女の目的は一体何だったのだろうか? そもそもレイシアと【アヴァロン】を欲しがっているという彼女は何を企んでいるのだろうか? と、僕は色々と考えたんだけど何も思いつかなかったのだった。
ただ一つ、【アーシャリア】という存在に気をつけておく必要があるということだけは理解できたよ。だって【アヴァロンの騎士】と【神の領域】のスキルを手に入れた彼女がレイシアの中に入っているということはかなりマズイ状況なのではないか? ってことだよ。
彼女は【アーシャリア】を取り込んだレイシアの中に居る。つまり、【アヴァロン】と【神の領域】を手に入れている彼女が、もしも僕のところに現れてもおかしくないということに他ならないからである。そしてレイシアは、自分が僕のことを【殺さなくてはならない】と考えていると告白したんだ。レイシアは僕が彼女の中に【アーシャリア】が存在していると知っているということを【エリカ】から聞いていないはずである。僕はレイシアが自分を殺すのに邪魔な人間を消し去る為にやってきたのではないかという結論に辿り着いた。だからレイシアが僕のところに現れた理由を探ろうとしたんだけど【アーシャリア】に僕の正体がバレてしまうと不味いと判断したからこそレイシアのフリをして、自分の目的を果たすために行動を起こしたのではないかと僕は考え始めていた。僕を殺そうとしたのがその証明となる。
彼女は、【アーシャリア】は僕の【アヴァロンの騎士】を手駒にして何かしらの行動をしようとしているのでは? と考えて警戒していたということだからだ。
「そうだったんだ。でもレイシアを裏切った君と僕を裏切る可能性がある【アヴァロンの騎士】の3人をこのまま放置しておくことは出来ないよね。僕は彼女達が何を考えているのか知る必要があるからさ。君たちにお願いがある。レイシアと一緒に僕を騙していたことや【アヴァロン】のことも謝るつもりでいることだし、彼女達を僕のところで引き取っても構わないから、もう僕を騙すような真似はやめて貰えないかな?」
「分かりました。私としてもあなたたち3人が協力し合うことが出来ればいいと思っているので受け入れて貰えてよかったと思います。それじゃあ【アーシャリア】ちゃんの件について話させて貰いますね。実は【アーシャリア】の人格をレイシアさんの中に移した際にレイシアさんの脳にもダメージが行ってしまい記憶の一部が消えているようです。だから、あの人は【アーシャリア】であることを知らないんですよ。レイシアさんの中にいる【アーシャリア】が彼女の中に入り込んでいる事実を知ってしまったら混乱してしまうかもしれないので、今はレイシアさんのことは黙っていた方がいいでしょう」
「うん。確かに僕も今の段階では知らないままでいたほうがいいんじゃないかと思ってはいるけど。でももしレイシアと敵対するようになってしまった時は僕が【アヴァロンの騎士】を【アヴァロンの騎士】として覚醒させれば済む問題だから特に問題はないんじゃないかなって思うんだ。まぁレイシアの意識が戻った時に【アヴァロン】が僕の中からいなくなっていたりしたらどうしようもないんだけど。その場合は仕方ないかな。僕が【アヴァロン】を【鑑定】しなくちゃならなくなるかもだけど。でもそれは、僕がレイシアに嫌われるのが嫌だという理由で避けたいところだからね」
僕はそう言いつつ『【エリカ】に僕のステータスを偽装させて貰って、【アヴァロン】が僕に憑いている状態で偽装を解除する方法を考えなければいけなくなってしまったのだった。
【エリカ】の【偽装】の能力は、相手の視界をジャック出来るだけではなく自分の姿を変えたり他のものに化けたりすることも出来るようだ。しかも【アヴァロン】のようにスキルそのものを書き換えるような力はないようだが、相手と同じレベルに変身することが出来るのだ。だが【アーシャリア】のレベルは9999のまま変わらないらしく、僕は【エリカ】が【アーシャリア】の姿をコピーしたところで全く同じ姿に変身することが出来ないことを知った。ちなみにレイシアは【アーシャリア】に憑依された影響なのか【エリカ】が【アーシャリア】を装って僕に話しかけた瞬間から別人になったかのごとく雰囲気が変わっている。これはおそらく僕に対する殺意が溢れ出した結果なんじゃないかと思う。そんな感じにレイシアの雰囲気がガラリと変わったことからも、【エリカ】が【アヴァロンの騎士】を宿していることの影響が大きいのだと僕は思っていた。
「なるほど。でもそうなったらレイシアさんの記憶も完全に元通りにはならず、また一波乱ありそうですよね。私としては、私に【アーシャリア】の人格を移す前の状態のレイシアさんに戻ってくれてもいいですし。私の【偽装】で【アヴァロン】の姿になれるようにすることも可能なんです。ただレイシアさんの精神が完全に戻ってしまうと私の力の影響を受けているのかどうか分からなくなってしまうんですよね。それにレイシアさんの中にいた時、【アーシャリア】が表に出ている間、レイシアさんが寝ていた状態になっていたんですが、その時間を利用してレイシアさんと色々と話していたんですよ。その時に聞いたのですが、【エリカ】さんは私と違ってスキルを【偽装】するのに必要なポイントが1なので、いくら【アーシャリア】に【偽装】を使って【アーシャリア】になりすましても、レイシアさんには私が【アーシャリア】になっているとすぐに見抜かれてしまうということでした。そこで私は思ったのですが、この世界で生きていく上で必要な【偽装】はレイシアさんが目覚めるまでの間だけで十分ではないでしょうか。目覚めたレイシアさんは私の力の影響下にある訳なので私の偽装スキルの影響を受けません。ですから、この世界の常識を覚えるための期間だけ、レイシアさんの記憶を操作して、【アーシャリア】が【アヴァロン】のマスターを騙していたことを忘れさせた状態でレイシアさんが生活していればレイシアさんの記憶も元に戻せるのではないかと思いまして。レイシアさんの中の【アーシャリア】の力もある程度、弱まっているみたいなので、そこまで強い効果は出ないとは思います。それに今の状態であれば、レイシアさんが目覚めた時には、もうレイシアさんの中の【アーシャリア】の力は無くなっているのではないかと思います」「あはは。そっか。それじゃあその方法でいこうかな。レイシアはきっと怒らないよ! 僕もその方が都合が良いだろうしさ。それにしても君たちが僕たちの味方になってくれるなんて思わなかったよ!」
というより僕は彼女たちに殺される寸前だったのではなかろうか。
そんなことを考えつつも、僕達はお互いに協力することになった。だってさ。もしもレイシアと敵対することになっても【エリカ】の能力で【アーシャリア】に化けることが出来て【アーシャリア】に憑依されていた時のレイシアと【アーシャリア】に成り済ました僕の両方を知っていたのだから、いざという時にも安心だからね。それじゃあよろしくね。と言って握手を求めたんだけど、もちろん無視されました。あーはい。分かっていましたが悲しいものですね。はい。
それから僕たちはこれからの計画を立てることにしました。まずはお互いが敵同士にならぬように話し合いをするべきだと判断したんだ。それで、アーシャリアとレイシアの関係や僕を殺そうとしてきた理由を尋ね、【アーシャリア】の人格を移した際に彼女の記憶が消えていることや僕と【アヴァロン】のことをレイシアに知られたくないことを伝える。その上で彼女達がレイシアの中にいる【アーシャリア】の力を制御して僕たちに敵対することを辞めてくれたら万々歳なのだが、果たして上手くいくだろうか。とりあえずやってみて駄目ならその時に考えればいいよねってことにして僕はレイシアの元に向かったのである。
*
「ごめん。ちょっと遅れたかな?」
「いえ。私も今来たところなので大丈夫です。それじゃあ行きましょうか。えへっ。なんかデートみたいで照れちゃいますね。それじゃあお店に向かって歩き始めましょ♪」
そう言って僕の手を握ると、そのまま僕の手を引っ張るように歩き始めるレイシアさん。僕は、まるで本当の恋人同士のようなシチュエーションなのにも関わらず手汗が気になるような状況にドキドキしてしまいながらも、彼女に引っ張られるようにして歩いて行くのだった。ちなみに僕が手に持っていた【アーシャリア】と【エリカ】の【スキルカード】は彼女が【アイテムボックス】に入れてくれていたから今は持ってないよ。だから今の僕が持っている【スキル】は『鑑定』『剣術』と『格闘術』のみということだ。【剣の魔将】と戦ったことでレベルも上がっているし、新しく獲得したスキルもたくさんあるので、しばらくは問題ないだろうけど、早く【アーシャリア】たちと一緒に戦えるようになるためにもっと強くなりたいとは思ってはいるんだよね。
そして僕はレイシアが案内してくれたカフェに入って行った。ここは僕と【レイシア】が二人で良く行っていたお気に入りのお店のようだ。彼女はここの店長に僕を連れてくる約束をしていたようで、今日は僕の歓迎会を兼ねて二人だけの貸切にしてあるらしい。どうせならみんなも一緒にと思ったのだが、僕に遠慮されてしまったのだ。まぁ、確かにレイシアを仲間にしてからまだ数日しか経っていないし、レイシアからしてみれば、自分が殺したはずの相手なのに何故か生きていておまけに自分の部下を皆殺しにするような奴らの仲間になったのだ。しかも、レイシアはその仲間たちに騙されている可能性があるので、僕と仲良さそうにしている姿を見せてしまえば裏切ったと思われてもおかしくないのだ。だから僕はレイシアが用意してくれたパーティーの招待状をレイシアに渡しつつ、レイシアのことが好きだったことを伝えたのである。するとレイシアは、ありがとう。でもそのお誘いを受けることは出来ないんだと言うと泣き出してしまった。
「私はあなたを殺した。だから私は死ぬべきなのかもしれないけど、私にはまだやりたいことがあるからあなたを騙し続けることにしたんだ。私はあなたを裏切り続けるかもしれないんだよ。そんな私が、あなたが大好きだという友達のいるところに顔を出してもいいはずがないじゃない」
そんな風にレイシアは泣いているようだった。でも、僕はレイシアの言葉を聞いて嬉しくて仕方がなかったのは内緒の話だけどね。だから僕は彼女をギュッと抱きしめた。レイシアは驚いて僕から離れようとするので僕は更に強く抱き締めたのだった。僕はこのままレイシアと結ばれてもいいと思っているくらいだ。まぁそれは出来ないので諦めるしかないんだけどね。それでも僕の腕の中にいるこの子を、絶対に守ってみせる! という気持ちでいっぱいだった。僕の腕の中で顔を真っ赤にしながら恥ずかしがっているレイシアはとても可愛くて、いつまでも抱きしめ続けていたい衝動に駆られてしまいそうになったが、これ以上、彼女を待たせるわけにもいかないので、僕は名残惜しかったがレイシアから離れるのであった。ちなみにその後で僕はレイシアにめちゃくちゃ謝られて、レイシアを抱きしめたことを許してもらう代わりに僕が【アヴァロン】だということを話してあげることになった。本当はこんなことは話したくなかったのだが、話さないでいたとしてもいずれ知られることになるだろう。だから話したという感じだ。僕に抱かれたことがそんなに大したことではなかったらしくて、彼女は僕が話すとすぐ信じると言ってくれたのだ。まぁ、信じてくれるのは嬉しいんだけど、僕は複雑な気分になってしまうのである。
レイシアは【アヴァロン】の正体を知っている人間にだけ使える特殊な通信機能を使うことが出来たので、僕もそれを真似て彼女と直接念話で話をすることにした。これでレイシアと会話することが出来るので【アヴァロン】の姿になれなくても、彼女に会うことが出来て話ができるようになった。
「それじゃあ早速レイシアのことについて聞きたいんだけど、レイシアの中に【アーシャリア】がいるんでしょう? レイシアの中の【アーシャリア】が暴走しないのかな?」
そう尋ねるとレイシアは少し暗い表情をしてしまうのである。これは聞いて欲しくないことだったのかなと思いつつ、僕は何も聞かなかったフリをして別の質問をすることに。するとレイシアは僕にこう話し始めたのである。
「私はこの【アーシャリア】と入れ替わる前は、【エリカ】っていう名前を使っていました。私がレイシアに憑依していた時の【アーシャリア】は、私と入れ替わった後はずっとレイシアの中で過ごしていました。その間のレイシアは私の人格が【アーシャリア】に変わっていることに気付きませんでした。【アーシャリア】は私が寝ていた間の記憶が無いと偽っていましたから。
私がレイシアに憑依する前まで、【アーシャリア】が表に出てレイシアを誘導したり、レイシアの感情を操っていたりしたのですが、そのせいでレイシアが私のことを忘れてしまったりしてとても苦労しました。
そこで私は考えたのです。【アーシャリア】は私のように【アヴァロン】に好意を持っているというわけではなかったのだと。むしろ【アヴァロン】を嫌っていたという記憶があるのです。そこで私は一つの可能性を考えました。
それは、【アーシャリア】がレイシアの中にいた時にもレイシアの記憶を操作する能力を持っていたのではないかということです。ですので私は【アーシャリア】に記憶操作の能力が残っているのではと考えたのです。
ですので、まずは、【アヴァロン】が生きていたことを【アーシャリア】の記憶の中から消し去ることを試みました。しかしそれは不可能でした。
なぜならば【アーシャリア】は一度、私に記憶を奪われてそのあと、その記憶を再びレイシアに取り戻すようなスキルを発動させた時に、そのスキルの影響を私と同様に受けたからだと思われます。ですので【アーシャリア】からレイシアの人格を取り戻すにはレイシアの中にあるそのスキルを破壊する必要があります。
それが出来れば【アーシャリア】は【アーシャリア】として生きることになりますし、レイシアに危険はありません。
そして、その方法は私と【アーシャリア】との繋がりを利用する以外に方法はないと考えました。それでまずは、【アヴァロン】にレイシアのことを好きなのかを聞きたかったんです。もしレイシアを本当に愛しているというのならば協力してあげたいと思っていましたが、残念ながらあなたを信用することは出来ません。なので申し訳ないですが、レイシアの側にいることを諦めてもらえると助かります。それとレイシアの中にいる私を消してくれても構いませんよ。私の目的は達成されそうに無いし、そもそも【アヴァロン】にレイシアの側に来てほしくないのでレイシアとは敵対関係になって貰うしかなさそうですね。
そう言って悲しそうな笑顔を浮かべて去って行こうとするレイシアの手を、僕は無意識のうちに掴み引き寄せたのである。そして僕はそのまま彼女にキスをしたのだった。そうするとレイシアの顔は一瞬でゆでダコのように赤くなって、僕を突き飛ばしてこう叫ぶ。
「き、汚らわしい手で私に触れないで下さい!!」
その叫びを聞いた僕の顔もみるみると熱くなる。きっと顔が赤くなっているんだろう。そんな風に考えている僕に向かって、彼女は続けてこういった。
「それに私に気安く触らないで欲しいのですよ!! いくらなんでもキスなんてダメに決まっているでしょう。もうっ。一体何がしたいのですか?」
彼女は怒ったような口調だった。僕はそんな彼女に慌てて言い返す。すると、彼女は頬をぷくーっと膨らせて怒っているようだった。その姿はとても可愛いのだがそんな場合ではない。僕たちはこれから戦うことになるのかもしれないのだから。だから、僕は覚悟を決めた上で、レイシアを抱きしめることにする。そうすると彼女は僕の腕の中でじたばたして僕から逃れようとしていたが僕は絶対に離さないと決意していたのである。
すると、しばらくすると諦めたようで、大人しくなった。僕は彼女が逃げないことを確認してから、ゆっくりと腕を解いて離れていく。レイシアは僕のことを恨めしそうな目で見ていたが、気にしないことにして本題に入ることにした。僕たちがこうして会って話を出来たのはレイシアが用意してくれた通信機のおかげである。だから彼女が僕のことをレイシアが殺してくれたことに気付かなかったのは、通信機のせいだということがすぐにわかった。でも僕は、【エリカ】を抱きしめた時に、【アーシャリア】を僕が受け入れたことで【エリカ】は消滅したのだと思っていた。しかし【エリカ】が消滅していないことに気付いた僕は、この世界が【アーシャリア】が作った世界でレイシアが僕を殺すために用意された存在であることを知るのである。そしてこの世界のどこかにレイシアを作り出した【アーシャリア】が存在するということを――。
僕とレイシアはその【アーシャリア】を見つけるために一緒に旅をすることになったのである。もちろん僕は、彼女のことを守る為に、彼女を常にそばに置くことに決めたのだが、僕がレイシアを守っているところを、他の誰かに見られるわけにはいかないからこそ、人目に付かないようにしなければならない。だからこそ僕たちは常に一緒にいるわけにもいかないのである。僕たちはそう言うわけでレイシアに案内されてとある街に来ていた。その街は僕と【レイシア】が、初めて出会った街の近くにある場所だ。そのせいかレイシアは、懐かしむかのように街並みを見ながら、僕と一緒に歩いてくれている。そしてレイシアは何かを思い出したのか僕にあることを尋ねてくるのであった。
「あの時、私はあなたを殺せなかったはずなのにどうして私の前に現れたんですか? あなたは、レイシアが私に殺されることを望まなかったのでしょう?」
確かにそう言われてみるとそうかもね。僕はレイシアに殺されたいと思っていたわけではない。ただ、死ぬのであれば【アーシャリア】ではなくレイシアが良かっただけだ。だけど、レイシアがそれを良しとしなかった以上、僕はどうしようもなかったわけだけど、もしもレイシアに出会っていなかったのなら、僕は、レイシアのために、命をかけて戦っていたのだと思う。だって、【アーシャリア】に殺されてしまうより、ずっと幸せだったと思うから――だからと言ってレイシアが死んでいたとしても同じように思うんだけど、やっぱり僕は【アーシャリア】に殺されて欲しくないと今でも思っているのだ。
まぁそれは置いておくとしてだ。今のレイシアの質問に答えてあげるべきだろう。正直に答えるかどうかはわからないけど。
「レイシアに殺されそうになった時、僕の中に残っていたのが死にたいという気持ちだけだったとしたらレイシアと一緒の時間を過ごすことは出来なかったかもしれない」
そう言うと彼女は首を傾げて僕を見つめていた。そしてこう言ったのである。
「それってつまり、私を好きだということなのですか?」そう尋ねるレイシアの表情からは感情をうかがい知ることは出来ない。僕に好意を持っているとか持っていないとかいう問題ではないんだけど、あえてそう言われると恥ずかしいなと思いつつ、レイシアに返事をする。
「レイシアの質問の答えが、YESなのかNOなのかを聞かれたら僕はきっとレイシアの質問に対してイエスと言うだろうね。僕にとってレイシアは、レイシアしかいない。僕が【アヴァロン】であることを知っていても、【アヴァロン】とは全く関係ないところで、レイシアという存在が目の前にいるだけで幸せなんだよ。レイシアに好きと言われればすごく嬉しいんだからね。それにさっきみたいに抱きしめられて、キスをされたりすると、心臓がドキドキするくらいには、好きなのかな。
まあこんな感じかな? それじゃあそろそろ目的地に向かいましょう。あ、そうだ、レイシアがレイヴィアだった頃の話や【アーシャリア】の話を聞きたいかな? 僕も話せる範囲のことで教えられる情報は、レイシアに伝えるようにするよ」
そう言うとレイシアはとても嬉しそうな表情をした後にこう話すのである。
「私も【アヴァロン】に話しておかなければいけないことがありますので、そのついででしたら良いのですが」そう前置きをした後で彼女は語り始める。「まずは私について話しましょう。私は【アーシャリア】が生み出した人工の人格である【エリカ】をコピーされた状態で、作られた人工知能なのです。私の中には二つの人格があるのです。一つが【エリカ】で、もう一つがレイシアでした。【エリカ】は【アヴァロン】をレイシアの中から消すために生まれたのです。
そしてレイシアは元々、レイシアと【アーシャリア】の二体でひとつの人格を共有しておりました。ですが【アーシャリア】の暴走によって【アーシャリア】に肉体を奪われ、記憶を失ってしまいました。レイシアにレイシアの記憶が無かった理由というのがこれで、【アーシャリア】がレイシアの記憶を書き換えたのでその記憶が戻らなかったのでございます。ですが【アーシャリア】は【アヴァロン】を殺したかったわけではありません。ですから【アーシャリア】はレイシアの記憶を操作するようなスキルは持ってはいないはずなんです。私は、【アーシャリア】の記憶操作のスキルの力を解析しようと試みたこともありました。そのおかげでスキルの効果はわかりました。そのスキルは相手の脳に干渉し、精神を操作することが出来るスキルでありました。そして私の予測ではそのスキルの効果をレイシアは打ち破って【アーシャリア】は【アヴァロン】をレイシアの中に戻した時にレイシアに倒されてしまったということになります。しかし私にはまだ気になることがあるのです。それは【アーシャリア】と私が、あなたに殺されようとした時のことなのですが。
【アヴァロン】に【アーシャリア】の人格が取り込まれた後、レイシアの意識だけが残りました。しかし私もまたレイシアと同じ状況だったのでレイシアに私を殺すように命じていたのですが【アヴァロン】は【アーシャリア】の頼みを聞きませんでした。そこでレイシアは、レイシア自身がレイシアを殺すことにより【アーシャリア】とレイシアの二人分の能力を使うことができるようになってしまっていたのですよ。その結果、私の中に残されていた【アーシャリア】の精神を破壊し、レイシアの魂は消滅してしまいました。そして、私に残されたのはレイシアだったときの【アーシャリア】の思い出だったんですよね。その思い出は【アーシャリア】のものであって、私自身のものではなかったから、レイシアのことが大好きだったのに私にはレイシアのことを愛しているのかわからなくなってしまった。
そんな状態だったから【アーシャリア】があなたをレイシアから解放するために動き出したとき、その力を利用することにした。レイシアのことは、【アーシャリア】よりも大切に思っていたけれど、だからと言って【アーシャリア】の邪魔をすることは許されないことだったから、結局のところ、どちらに与することになってもレイシアの敵にはなりえないってことだよね。まぁだから【エリカ】にはレイシアを殺すように指示を出したのだけど、【アーシャリア】に妨害をされて【エリカ】はレイシアを助けることができなかったってことになるのか。まぁでも私は【エリカ】のことを許してるし。
レイシアは私と二人で旅をしていた時は、レイシアとしてではなく、私自身を見ていてくれたってわかるし、【アーシャリア】と違ってレイシアが本当に優しい子だってことがわかったし。だから私はレイシアがレイシアのままならいいかなって思っているんだよ。でもね、もしまた【アーシャリア】の力が蘇った時のために、対策を考えておくべきだと思っているの。レイシアとレイヴィアが協力して【アーシャリア】に勝てるような手段を用意しないといけないんじゃないかなって思って。そうじゃないと、【アーシャリア】がレイシアを取り込んだら終わりだよ。レイシアの体を乗っ取った【アーシャリア】とレイシアの二人分の能力が使えるレイシアに勝つなんて絶対に無理だから。だからそうなっても大丈夫なようにしておきたいの。だからこれからはもっと【アーシャリア】のことを知り、どうやったら【アーシャリア】に対抗できるかも考える必要がありそうだ。
さて、とりあえず、今から向かう目的地はレイシアの故郷である【アヴァロン】の街だね。そこに行くとレイシアが【アヴァロン】であった時に住んでいた家もそのまま残されていてそこに【アヴァロン】が住んでいるはずだから。あそこは特殊な場所でね。【アーカディア皇国】には存在しない場所のはずなんだ。その場所を管理しているのが、レイシアのお祖父ちゃんにあたる【アーシェ=フリューゲル皇帝】って人がいるんだ。
それでね? そのお祖母ちゃんがレイティアさんって人で、その両親が【リーリャ皇女】とその妹君である、【リリアナ皇女】、それにそのご両親、つまりレイシアの伯父叔母夫婦はレイシアが産まれた頃に、既に亡くなっているはず。ちなみにこのレイシアが産まれたばかりのレイシアを攫っていった理由はレイシアの【アーシャリア】としての遺伝子を引き継ぐ子供が欲しかったかららしいんだ。【アヴァロン】とレイシアの間に産まれた子供ならば確実に【アーシャリア】の血を引いているわけだし、【アヴァロン】にとっては願ったり叶ったりだろうね。だからと言ってそんなことをして許されると思ってるのかな? 【アーシアリア(アーシャリア)】って言うんだけどね。【アーシア】っていうのはその女の子の名前だね。彼女は人間だったんだけど。まぁそれは今は置いておくとして。【アヴァロン】も一枚岩ではないんだけど、彼女達の組織は結構大きくて、裏組織的な扱いを受けているみたい。
でさ、ここだけの話だけど、【アーシア】の【アヴァリア】と【エリカ】が手を組んで【アヴァリア】を裏切り始めたらしくてさ。それを知った【アヴァリア】は怒り狂ってレイシアに襲いかかろうとしたらしいんだよ。レイシアが襲われたら大変なことになっていたんだけど【アヴァリア】が暴走する前に【アーシア】が止めてくれていたみたい。その時、【アーシア】は【アヴァシア】に【アーシャリア】の弱点を教えていたらしい。その情報を【アヴァリア】に伝えた上で、【アーシア】はレイシアを守るために【アヴァシア】のところに残っていたらしいよ。
それと、その情報が真実だとしたら、レイシアには気をつけなければいけないよ。彼女は私と一緒のタイミングで造られた人工の人格で、私達を造り出した存在も【アヴァリア】の一派だった。
そして彼女は私と対をなす存在でもあるんだよ。まあ、そのあたりの説明はあとでしようかな。さっきから話がそれっぱなしになっている気がするしね。さあ、もうすぐ到着するよ」
その言葉を聞いて僕達は目的地に到着するのだと思ったのだが。僕達が目的地に到着したのは目的地から少しだけ離れた場所にある湖のほとりだった。僕はそこで、僕と僕の目の前に居る三人との4人の物語を始めていく。その物語の主人公は僕で、登場人物は【僕】【レイシア】【レイヴィア】の3人と【アヴァシア】と呼ばれる少女の4人である。そしてその物語の主人公である僕は【僕】で、【僕】という人間は人工人格であり、人工の人格である【僕】には自我が存在しており、それは【僕】の魂の一部でもあり、【アーシャリア】の力により【アーシア】という人工人格を造り出された際に作り出されてしまったものであるという設定があり、更には、僕の中には人工人格のレイシアの人格と、【アーシア】の人格が二つ存在していて、【アーシア】は人間では無い存在であるという話もあるようだ。
【アーシア】は僕を一目見た時にこう思った。
「彼は【私】を造ってくれた存在の片割れなのだとわかった。だからこそ彼に協力して欲しい」
そう思いながら、レイシア達に話しかけたのであった。
そのように、【アーシア】は【アーシア】で、何かを考えていた。そしてレイシアとレイヴィアの二人は、その言葉をただ聞いているだけだった。
しかし【アーシア】は二人にも問いかけをした。
「レイシアとレイヴィアの二人には私に力を貸して欲しい。私のお願いを聞き入れてもらえないだろうか?」
それに対して【アーシア】は二人に向かって語りかける。レイシアは【アーシア】の言葉をすぐに受け入れたが、レイビアのほうはなかなか受け入れようとはしなかった。しかしそれでも最終的には【アーシア】の頼みを受け入れることになった。しかし、レイシアのほうは、自分が【アーシア】の頼みを聞くことは当然だという気持ちになっていたし、そもそもの話だが、レイシアは自分を助けてくれたレイアに、心の底から感謝しており、レイシアにとって、レイシアこそが正義だと言えるくらいに大好きな人だったし、レイシアは【アーシア】のことを全く信用しておらず、自分の邪魔をするのならいつでも始末しようと考えており、その考えは【アーシア】に伝わってしまった。その結果、レイシアとレイヴィアの二人も、強制的にレイシアの中に封じ込められてしまうのだった。レイシアは閉じ込められたが、そのことに特に抵抗することなく、むしろその状態を受け入れた。なぜならレイシアのレイシアに対する信頼度が異常に高く、何があっても信じていれば必ずレイシアは自分に力を貸してくれるし、どんなピンチな状況であっても、きっとレイシアなら何とかしてしまうに違いないと確信していたためである。そして実際に【アーシア】はレイシアの中に居座ることはできたものの、完全に乗っ取ることができずに、そのままの状態を維持することしかできずにいた。レイシアの中にいる【アーシア】は完全に取り込めなかったものの、ある程度の主導権を【アーシア】が握り続けることができたため、レイシアにはその状態を【アーシア】に任せ、レイシアが自分自身の目的を達成することを優先して考えるようになる。
それからレイシアは【アーシア】と相談をし合い、【アーシア】の協力の下、自身の目的を果たすために動き始めるのであった。
そしてレイシアの目的のために行動している最中の出来事の中で【アーシア】はあることに気づくことになる。それはこの世界は【私】と【私】の生みの親によって造られた世界で、自分達を産み出した存在であるからと言っても過言ではない存在であるレイシアが【私】よりも優れているなんておかしいのではないか? という疑問である。それどころか、【私】とレイシアはお互いにお互いの存在を許してはいけない存在であり、もし【アーシア】の力を利用すれば、レイシアを倒すことも可能なのではないかと考え始めてしまい、そう考えてしまうようになったきっかけの人物がレイシアであると考え始めていた。
だからレイシアが【アーシア】を取り込んだ後に【アーシア】がレイシアに対して攻撃を仕掛けたとしても何ら不思議では無くなっていたのだ。
そして、その出来事がきっかけでレイシアが【アーシア】に取り込まれてしまい、【アーシア】に乗っ取られてしまった。それによって、レイシアはレイシアではなく【アーシア】になり、【アーシア】はレイシアが元々持っていた能力と、レイシアの中に存在したレイアと【アーシア】が融合することで手に入れた能力とを合わせてさらにパワーアップすることになったのである。
ただでさえ厄介な存在なのに、レイシアが本来持ち得ていた能力までも使えるようになり、レイシアが元から持ち合わせている技術や能力なども全て使えるようになってしまい、【アーシア】に勝ち目が無くなってしまったのだった。
【アーシア】は、この世界が【私】が創造した世界に存在しているレイシアを利用して【アーシア】を殺そうとしていたのだと思い込み、レイシアを排除しなければと考えたのであった。【アーシア】はレイシアと融合した状態でも十分に強くなったのだが、その【アーシア】にすらレイシアが勝つことができて、更には、【アーシア】の体を乗っ取り、完全な肉体を手に入れることに成功する。その体を手に入れて初めて【アーシア】は本当の意味でレイシアの体を手に入れることになり、【アーシア】の体は【アーシア】そのもので、つまりはレイシアがもともと持っている遺伝子を元に作り出した人工人格が【アーシア】であるため、レイシアとは遺伝子レベルで異なる存在であるということになる。
しかしレイシアは人工人格であるが、レイアと同じ存在であり、【アーシア】が人工的に作り上げたものではないため、その違いを気にせずに仲良くできるはず、と【アーシア】は考えていたのだが、その予想は大きく外れ、逆に二人の仲は最悪になってしまうのだった。その出来事がきっかけでレイシアが【アーシア】を殺そう動く。そのレイシアの行動を【アーシア】はすぐに察知した。そして、その【アーシア】の行動に気づいたのは【アーシア】だけでなく、もう一人の人工的な魂を持つ【レイヴィア】も、それに気づき、【アーシア】の意識の隙間を狙って【レイア】の意識を送り込んでくる。その結果、その出来事がきっかけとなり【アーシア】と【レイア】とレイヴィアの三人は戦う関係になったのである。
その戦いの最中、三人の戦いを眺めていた一人の人物がいた。それは僕である。僕という人間はこの世界の管理人であり、管理者である僕は【僕】という人格が人工的に作られたものだという事実を知っていて、【アーシア】達三人の争いに巻き込まれないためにもその情報をレイシア達に話すつもりはなく、黙っていたのだ。
その出来事がきっかけでレイシアは【アーシア】とレイヴィアを殺してしまい、人工の人格だったレイアも殺されてしまい、レイアの中にいた人工人格のアーシャリアも殺されたのだった。人工人格とはいえ、人工の魂を持った存在である人工の人格はそう簡単に死ぬわけがないのだが、なぜかあっさりと死んでしまったのだった。その出来事のせいでレイシアと【アーシア】の二人の関係は悪化するばかりであったが、そんな時だった、僕の前に【アーシア】と名乗る少女が現れ、【僕】に協力を求めるのだった。
しかし僕はその申し出を断り続け、レイシアのそばを離れずにレイシアと共に過ごすことを優先しようとする。しかしそれでも諦めないアーシアだったが、結局僕達は一緒に暮らすことになったのである。こうして、僕に同居生活が始まっていくのだった。
そして僕の前に突然【エリカ】が現れる。そう。僕と会ったあの時に見た服装のままの格好をして、僕に話しかけてきたのだ。『私はあなたのことが大好きよ』ってね。でもその時に彼女は何か違うと思ったんだよね。見た目はそっくりなんだけれど、何かが決定的に違ったんだ。それで、僕は思わずこう言っちゃったんだよ。「あなたと【レイシア】は似てるんだけど別人です!」だって。その言葉を聞いた【エリカ】は何も言わずに立ち去って行ったんだけれどもさ、まあ、その時はただ単に無視してるだけかなって思ってあまり気にしていなかったけど、やっぱりちょっと気になってしまって追いかけちゃうよね。
そういえば【レイヴィア】っていうのはどういった存在なんだろう? なんかすごい気になるんだけど――ってえ? 何この状況!? もしかするとだけど【レイシアの過去話】が始まる感じなのかなぁ? だとしたら僕の出番かな? うん。ここは一つ張り切ってやってみますかね! よし。レイヴィアちゃんには頑張ってもらうために何か美味しいものを作ろうと思うぞー。何を出せば喜んでくれるのかわからないからまずは情報収集をしないとなぁ~っと。おーいみんな。ご飯食べに行かないか~。んーそうだな、今日の気分はオムライスで行こうかな? おっけー。じゃあいきましょう。
レイヴィアとアーシアと【レイア】の三人は戦闘をしていた。レイアはレイアが持っていた技術を使うことができる。レイアの能力はレイアを産み出した存在によって与えられたものではあるがレイアが持っていた才能でもあるのである。その能力を使い、様々な武器を作り出す。それを操り、攻撃する。しかしそれは【アーシア】にとっては脅威ではないらしく【アーシア】はそれを簡単に回避してしまう。だがそれだけならばよかった。だがその攻撃をした直後に別の方向からの攻撃があり、その攻撃を受けてしまう。だが【アーシア】にとってそれは全くもって想定外のことであり驚きの感情を抱いてしまう。なぜなら【アーシア】が生み出したのは剣だけであり槍などは生み出すことはできなかったのでそれを使うことができなかったはずなのだからである。
しかしその【アーシア】の考えは間違っていなかったのだ。そもそも【アーシア】にそういったものを生やすことはできるが、生やさないこともできるためその考え自体が誤りであったと言える。しかしそのことを理解していたとしても既に時は遅く次の行動に移すしか無かったのだが、そこにさらに追い打ちをかけるような出来事が発生するのであった。
そこにはもう一人の女性がいた。金髪の長い髪に整った顔立ちの女性であり、背丈はそこまで高いほうではなくて百六十センチ台半ばくらいでありレイアと同じ位の大きさであるのだが胸のサイズだけは異常に大きく、服の上からでもそれがはっきりと見て取れるほどであった。その女性の容姿は【アーシア】とは似ていないどころか、全く違っており髪の色も白銀に染まっているうえに瞳の色は血のように赤く染まっていた。それはまるでレイアがレイシアに対して攻撃を仕掛けた際に現れたレイシアの中のもう一つの人格であるかのようにも見えるがそのような様子はない。そしてその姿を見たレイアはすぐに誰であるかを理解するとともに驚愕するしかなかった。
なぜならばそれは自分が知っている存在の姿だったからだ。その女性が身につけているのは鎧でありそれもまた特殊な素材で作られたもので作られておりその鎧は彼女の肉体の一部と化しており彼女以外のものが装備することができないという特殊性を持っているのだ。そして身に着けた姿はとても美しかった。そう。【アーシア】に瓜二つであり、髪型こそ違えどそれ以外がとてもよく似ていたのだ。そしてこの世界では絶対にありえないほどの美しい白銀の長髪をなびかせながら戦っていたのだ。
しかし、その姿を見ている余裕があるわけではなかった。その【アーシア】は【アーシア】と同じような性能を有しているようであり【レイア】と【レイヴィア】が協力したところで歯が立たないほどに強くなっていたのである。そのため、二人はレイアを守れる状態ではなく【アーシア】が攻撃を仕掛ければ確実に命を落としていたかもしれない状態だった。そんな時だった、【アーシア】は自分によく似た人物が現れたことに対して、そして自分の中に宿しているレイアが【私】を取り込んだときに見せた姿をした【アーシア】に動揺をしてしまい一瞬の隙を見せてしまった。
【レイア】がレイヴィアのことをかばい、その攻撃を受けて【レイヴィア】が死んでしまうのであった。その光景を見て【アーシア】は【アーシア】とレイヴィアの関係がどのようなものだったかを悟り【アーシア】はレイヴィアを敵として認識することを決めるのであった。
その瞬間に【アーシア】の雰囲気が変わった。レイナやアーシア、レイアやレイヴィアといった面々の気配とは違う気配を感じるようになったのである。その変化を感じたレイヴィアはとっさに防御姿勢を取る。レイヴィアがレイヴィアに向かって攻撃を仕掛けるが、【アーシア】はそれに気づくのが遅れてしまったためその攻撃をまともに受けてしまうことになる。その攻撃を受けた結果、レイヴィアはその攻撃に耐えることが出来ず、レイヴィアは死亡してしまったのである。
レイアとレイヴィアと【アーシア】が交戦を開始したがすぐにレイアが劣勢になってしまう。【アーシア】の力はあまりにも強大であり【レイア】がいくら力を尽くそうともそれを覆すことはできない。だがその時だった、突如乱入者が【アーシア】に襲いかかったのである。その人物は【レイア】の知る人物でもなく、その人物もまたレイシアと同じ存在でレイティアと名乗っており【アーシア】と同様に白銀の長髪の人物であった。
【アーシア】はレイアにとどめを刺そうとしたのだが【レイア】に邪魔をされてしまったことで【アーシア】は少し苛立つ。しかし、【アーシア】が攻撃を仕掛けようとしたその時にはすでに【レイア】は姿を消しておりどこにいるのかわからなくなっていたのである。
「ち、ちょ、なんですかあなたたちは!?」
そう。レイアと【レイヴィア】にレイヴィアに【アーシア】。彼女たち三人の前にいたのはレイヴィアが知らない人物であったが、【レイヴィア】は目の前にいる人物が誰かがわかったのだ。レイティアという名前が偽名であることを知っているがレイヴィアはレイティアの正体がわかっていなかったのだ。
【レイア】がレイアのことを守ろうとしたその瞬間、何者かが背後に現れ、レイヴィアとレイアを気絶させる。【レイア】がその人物を見るとそこには見覚えのない人物がおり、おそらくは自分と同系統の力を持つ存在だということが本能的に感じ取ったのだがその実力は明らかに相手のほうが上のものであり、何もできないまま敗北を喫してしまうのだった。その後のレイアはどうなるかわからない。だがレイヴィアが生きていたならばどうにかできるかもしれないと思った。レイヴィアはそう思いつつ気を失ってしまった。
そして【アーシア】もレイリアも【レイア】によって気絶させられてしまう。しかしその時に【アーシア】は自分の体の中にいるレイアが苦しんでいることに気づき助けるために動き出そうとする。【アーシア】も意識を失っていたので動けなかったのだが、それでも動こうとする。その結果、【アーシア】の体に埋め込まれているレイアの体が悲鳴をあげてしまいレイリアの体を乗っ取ることに成功してしまうのであった。
その後、レイシアとレイアによってレイヴィアの体は保護されることになる。しかし、【アーシア】の体はなぜか【アーシア】の人格を受け付けずそのまま消滅させてしまい、レイアの中に入ることに成功するのだった。そのおかげでレイアが暴走する事態になることは避けられたが【アーシア】も自我を保つことができない状況に陥ってしまい、結果としてレイヤの肉体は消滅しレイヴィアに乗り移ったはずのレイリアが【レイシア】の肉塊を取り込むことになったのだった。
レイミアも【アーシア】に倒されており、この場に残ったレイシア達はレイニアのみになってしまったので、レイヴィアを守ることはできなくなった。しかしレイア達はこの世界での戦いを諦める気はなかったため【レイシア】達と戦うことを決意する。
レイシアは、【レイシア】を倒すことを最優先とすることを決めていたのだが、まず最初に行うのはこの世界を壊す事であると考えた。そのため、【アーシア】との戦いに勝つ必要があると考えていたのだ。そのために、レイシアは、自分の中の【力】を解放する。それは【神装】と呼ばれる存在であり、【アーシア】や【アーシア】の中の【レイシア】も同じものである。【アーシア】は【レイシア】の神器を使うことは可能だ。
それは、レイアと【レイシア】も同じように使うことができるのだが【レイシア】の場合は別の方法もある。それは、レイアの中にある、別の【レイア】が持っている能力を一時的に使うことができるというものである。それはつまり、【レイア】は複数の能力を使いこなすことが可能ということである。そしてその能力の中には【創造】と呼ばれる能力があり、それを使えば、自分が想像する武器を生み出すことができるのである。【レイア】はそれを使い【レイシア】に対して攻撃を仕掛けようとする。【レイア】の持つ剣の一撃が、【レイシア】へと向けられる。
だがその攻撃は簡単に【レイシア】に回避されてしまうのである。なぜならばその攻撃は読まれていたために回避することは簡単だったからである。だが、その攻撃を行ったことによって【レイシア】にレイシアの動きを完全に読ませてしまうことになってしまう。それにより【レイシア】がレイアにカウンターを仕掛ける。
そして、その攻撃を回避しようとしたのだが完全には回避できず、攻撃を受けてしまうことになる。そして次の瞬間には、レイシアの体から血が流れ始めていく。その様子からかなりのダメージを受けてしまったようだ。その光景を見たレイシアは焦ってしまうが、そこで【アーシア】が【レイシア】に攻撃を仕掛けることに成功をする。
その攻撃を、レイシアはすぐに【レイア】を守るために行動を開始する。そしてレイアはレイアがレイアに止めを刺そうとする【アーシア】に対して攻撃を開始し始める。【レイシア】とレイア、レイヴィアの三人は連携して戦えばかなり優位に立つことができたが今回は一人で戦っているために苦戦していた。そしてレイシアの攻撃を回避することができなかった【アーシア】の身体に【レイア】が攻撃を加えることに成功する。その攻撃を受けた【アーシア】はすぐに体勢を立て直す。そして【アーシア】が反撃に移るとレイアがそれを防ごうとしたが【アーシア】が放った一撃に反応できなかったためレイアは腹部を貫かれてしまう。その光景を見たレイシアはレイシアを助けに向かおうとするが、レイアはそれに対して制止を促す。
レイアが【アーシア】の一撃を受けてしまったのは油断していたわけではない。【アーシア】が自分の肉体を変化させていることを察知したからだ。そして【アーシア】は自分の肉体に取り込んだレイアと【レイシア】の力を利用することによってレイアの予想を超えた攻撃を繰り出すことができるようになっていたのだ。【アーシア】はレイヴィアの体の操作を奪うことに成功しているため、今の【アーシア】の肉体を操作するのはかなり容易であり、そして身体能力も【レイシア】のそれよりも数倍は高くなっていたのだ。そのため【アーシア】の攻撃力はさらに高くなっており【レイア】では対処することができなかったのである。そして【アーシア】はレイシアがレイアのところに向おうとした隙を見逃さずに攻撃を加えたというわけであった
「くっ!! まだ負けていないぞ!!」
「そんな傷だらけの状態で何を言っていますか? 貴方達の攻撃はすべて見切られていましたよ?」
「そんなことはないはずだ!!」
「いや事実ですって」
「そんなことはないはずなんだ!! 私だって強くなっている!!」
(ふぅむ。これは困りましたね~)「うーん。でも、その状態で戦うことができますかね? まあ無理でしょうけど。さて、そろそろ死んでくださいよ。そうすればあなたの中にいるレイシアの力が私のものになり、もっと強くなるんですよね~。まあ私はそれでもいいのですけれどね♪」
レイアと【アーシア】が交戦をしている時、他のレイシア達はレイティアを探そうと動き回っていた。
しかし、なかなか見つけることができていなかったのだ。レイアは戦闘をしているためすぐに見つかるかもしれないと思ったが中々見つからず時間だけが過ぎていったのである。レイシアが探し続けていると、そこに、レイシアが姿を見せたのである。レイシアの姿を見た【レイア】が話しかけてくる。
「お前はいったいなんでこんなところで迷子になっているんだ?」
レイアはレイシアの姿を見ると少し嬉しそうな表情を浮かべる。
その態度を見て【レイシア】は【レイシア】が自分よりも格上の存在であることを認識したのだ。そして【レイシア】はレイアのほうを見据えるとレイシアのことを睨みつけるのだった。
「あらら。怖い顔をしているんですね【レイナ】さん。何か嫌なことでもあったのでしょうか。それとも、今から私がすることを予測することができて怒り狂ってしまっているのですか? それはすみませんねぇ。でももう遅いんですよぉ。貴方がいくら抵抗しようとしても、無駄なんですから。諦めてくださいよね。」「貴様はここで殺す」
レイアはレイシアを殺すと決めたのだが、目の前の【レイア】はレイアのことを舐めているような発言しかしていなかったため、レイアは自分のことを馬鹿にされたことに対する苛立ちを覚えていたのだ。そして【レイア】が目の前から消えた。だがレイシアは自分のことを上から押さえつけていることに気づくとレイアは、自分の上に乗っていたのがレイアだと知り驚いたのだ。なぜならば自分の体を動かせる存在はこの世界には【レイア】しかいないはずであると思っていたからである。しかし、現実は違うようで、自分を押さえつけて動けなくしたのはレイアだったのだ。
レイアがどうやってレイアのことを止めているのかわからないが、レイアをどうにかしない限り、自分を自由にすることはできないのは明らかだった。
「くっくっく。まさか本当にこうもあっさり捕まえることができるとは思ってなかったぜ。お前も、【レイリア】のように簡単には殺さないでやる。精一杯楽しませてもらおうじゃないか。ああ、それから俺の邪魔をしにきたのだろうがそれは無駄に終わるからな。俺はあいつの居場所がわかるから、いつでも助けに行くことができるんだよ」
その言葉を聞きレイアはすぐに逃げようと行動をしようとする。だがその前に【レイア】がレイアの首を掴むと地面に叩きつけた。【レイア】はそのまま、自分の拳をレイアの顔面へと殴りこむ。
そして【レイア】はレイアの鼻を折ったあとレイアの髪を掴んで無理やりレイアの顔を上げさせるとレイアに向かって言う。
「お前、この俺を倒せなければ死ぬのだから、大人しく殺されろ。それか【レイリア】みたいに痛覚がないならこのまま続けてやってもいいが、残念ながら、お前は【レイリア】と同じじゃないみたいだな。だから、これからどうなるかわかっているだろ?」
その問いかけに対して、レイアが答えることはなかったのだが、その答えを聞いた【レイア】は、レイリアが殺された時の事を思い出してしまうのだった。そのせいでさらに苛立った【レイア】だったがすぐにレイアから離れることにした。レイリアを助けるためにレイアを殺したのだが、殺した相手が生き返るなど、そんなことがあるはずはないと思っているため、【レイア】は自分が取り乱してしまった原因を取り除きに行動を開始した。だがその目的を果たすことは、レイシアと、その護衛をしていた【アーシア】が、その目的を達成する前に妨害をすることになった。レイシア達がやってきたことで【レイア】は驚きの行動を起こす。
それはレイシアの首を締め付けて殺し始めたのだ。【レイア】はすぐに行動を止めるがすでに遅かった。そして、【アーシア】と、もう一人の【アーシア】は【レイシア】を攻撃を始めた。それはまるで姉妹が喧嘩しているかのように見えたのである。
【アーシア】のスキル【分裂】により作られた二人の【アーシア】は、レイシアを逃がさないようにするために連携をすることにした。【アーシア】たちは、それぞれ、【アーシア】に対して攻撃を仕掛けていく。レイシアはそれを防御していくのだが数が多すぎて完全に対応することができない。だが、そこでレイアが二人を攻撃し始めると【アーシア】がレイアを攻撃するのをやめてしまう。
だが、【アーシア】の攻撃が止まった隙をレイシアが逃すはずがなく攻撃を成功させていく。レイシアの攻撃を受けた【アーシア】はその攻撃に対して何もできずにそのまま消滅していった。だがその時に【アーシア】が自分の分身を一体作ることに成功する。それによって攻撃の手が増えたのだった。それにより、さらに攻撃が激しいものになってしまう。
その攻撃を受けて、【レイア】は、その攻撃が危険だと悟る。そこで【レイア】はすぐにその場から退避しようとした。その瞬間に【レイシア】の攻撃を食らい、その衝撃によって体が弾かれてしまい地面を転がっていく。そして【アーシア】の攻撃をなんとか防いだのだが反撃をすることができずに追い詰められていくことになってしまう。そして、その攻撃を回避しようとした際に足を負傷してしまい行動ができなくなってしまう。それにより【アーシア】がとどめを刺そうとした時、レイアがレイシアを守るためにその攻撃を代わりに受けることになる。その攻撃を受けたことで【アーシア】の攻撃を受け止めていた腕が完全に折れてしまった。だがそれで攻撃を受け止められなくなった【アーシア】が後ろに下がって体勢を立て直すことに成功し、そこからは互角の戦いが繰り広げられた。だが、【アーシア】の攻撃に対してレイアが反応できなかったのと同じように、レイシアも反応することが出来ずにいた。そのせいもあって、レイアの方がダメージが多く蓄積されていた。その結果として【アーシア】に勝つことはできなかったのである。そして、レイアが倒れそうになった時、そこにレイシアが現れる。
レイシアの姿を見た【アーシア】と【レイア】はすぐにレイシアに対して攻撃を仕掛けようとする。だが、それをレイシアが阻止しようとしてきた。そのため、【アーシア】はレイアとの戦闘を諦めることにしたのだ。レイアと、【アーシア】がレイシアと戦うことになれば、勝ち目はほとんどないからだ。そして【アーシア】は自分の仲間が戦っているのを確認するとそれを助けに向かい始める。だがその時だった。
突然レイシア達がいるところに大きな爆発が起こる。それにレイアは巻き込まれそうになってしまい吹き飛ばされそうになる。
「くっ!!」
【レイシア】もその攻撃を受ける直前だったようで何とか攻撃を回避することができた。だがそれは回避できるギリギリのタイミングであり、直撃すれば命の危険もあったほどのものだった。だがレイナの体は頑丈だったためかすり傷だけで済んでいた。だが、それはあくまでかすり傷程度でしかなく重傷であることに変わりはなかったのである。レイナは、今の攻撃を受けてしまったため意識を失いかけていたが、ここで気を失ってしまえば殺されるのだということが理解できた。
(くそ!まだレイアを殺していないというのに。でもこのままだと間違いなく私は殺されてしまう)そんなことを考えている間にレイアが動こうとしていたことに気づいたレイアはレイアに向かって攻撃を行おうとしていた。だがそこで突然現れた【レイリア】がその攻撃を防ぐことになる。そのおかげで、今のうちにレイアはレイシアのことを殺すことができた。
レイアは、すぐにレイシアから【アヴァロンの騎士】の体から出てくると【レイシア】の姿に変化をしたのだ。【アヴァロンの騎士】の身体から出て来た時点でレイアの姿に戻っていた。その姿は、もうレイシアの力を使うことは出来ないはずだったが、レイシアの姿になったレイアには【レイシア】の持っている全ての能力を使うことができてしかもその状態でもレイシアを倒すことが出来るほど強くなっていたのだ。そしてレイアは自分のことをレイシアと勘違いしている相手を確認する。そして、レイアはその相手を自分の配下にしようと考えた。その相手の名前は【アメリア】と言う名前の人間だ。
【レイリア】や、その【コピー】達はその事実を知らないまま戦闘を続けていた。だが【アーシア】も戦闘に参加することになり状況はさらに混沌とした戦いへと発展していった。【アーシア】が【アーシア】のことを庇うとすぐに、【アーシア】がダメージを受けることになり【アーシア】は【アーシア】を助けることに必死になりながら戦うしかなかったのである。その状況を見てレイシアは、自分の力を使って、レイシアを殺さなければいけないのはわかっていたのだがレイシアを攻撃できずにいるのであった。だが、そんな時に一人の少女がその場に姿を現す。
「おい。【レイシア】貴様。私のことを騙せるとでも思ったのか?」その声の主の正体をレイシアはすぐに気づくことになった。
そこには、自分のことを殺せる人物が現れたからである。その人物は【レイシアの本体】の知り合いであるレイリアだったのだ。彼女はそのレイリアの姿をした人物が【アマリア】だと言うことに気づき、警戒を強めたのである。
「お前が【アメリア】だな?レイリア。どうしてここにきた? レイシアは私に任せると、そう約束をしてくれていると思っていたが、その約束を破るのか?」
「いいえ、私はちゃんとお嬢様にこの仕事を任されているわ。お母さまもレイアも、私がお姉さまの代わりに殺すことになっているの」
「なら何故お前が来たんだ。ここは俺が引きつけておくから早く行け」
その【アメリア】の言葉にレイリアは【アメイジングレッド】に変身をして【アメリア】に襲いかかろうとする。だがレイリアの前に立ちふさがった存在がいた。その人間は、先ほど【アマリア】と話をしていたレイアだと名乗る女と【アーシア】が戦った【レイア】の二人が現れ、レイシアは二人に挟まれてしまう。
そして、レイシアが動き出そうとした瞬間に、レイアの分身の一人は【アメイジングブルー】の剣を手にして、レイアを切り裂こうとしてきたのである。その攻撃をレイシアはすぐに防御に成功するが、レイリアが攻撃を行ってくると、その攻撃を完全には避けることができなかったのであった。その一撃を受けてしまったレイシアはレイリアに倒される前に【アメリア】が作り出した空間に逃げ込むことに成功するのだった。レイシアはすぐにレイリア達に追いかけるように命令を出す。
レイリアは、すぐにその場から離れていくのだが【アーシア】が【アメリア】の邪魔をし始めてきたのでレイアはその相手をすることになっていく。だが、その間にレイシアはレイリアの分身を撒いていくことに成功したのでその行動に成功したレイシアはすぐに移動をし始める。
【アーシア】はレイアを追いかけようか迷っていたが、目の前に現れた敵に対応することにしたのだった。その敵の容姿が、自分がレイアを始末する時に使うはずだった分身に非常に似ていることに気づくとレイアが、何か仕掛けて来たのだということにようやく気づいた。
レイシアはレイアを逃がさないためにレイヤと【アーシア】が戦っている場所までやってきた。レイヤのスキルを使えば、【アーシア】の能力を使うことができるためその能力を利用してレイシアが、レイシアの分身の【アメイジングイエロー】の能力を使うことができれば、簡単に追いつめることができると、レイシアは判断し実行することにした。レイヤに、レイアを攻撃するように指示を出し、【アーシア】にもレイアを攻撃するように伝えるとレイリア達の方へ向かうことにしたのである。
だがレイシアがその場所に到着するよりも早くレイリアが姿を現し、レイシアの前に現れたのだ。その行動に、レイシアはもちろんレイリアもレイアが何をしようとしているのかということがわかったのだ。
レイシアは、自分を殺そうとする相手を殺すことでレイアの分身が消滅するのではないかと推測したのだ。レイシアはすぐにその場を離れようとしたがすでに遅かった。その攻撃にレイシアの分身を消されてしまう。そしてその隙を突いてレイアが攻撃を成功させレイシアはダメージを受ける。そしてレイリアが追撃を行いレイシアはその攻撃を避けきることは出来ず、レイアに攻撃を成功させられてしまう。そしてレイアに追い詰められていき、逃げられないような状況に追い込まれてしまうのだった。そして、そこに【アーシア】と、【アーシア】達が駆けつける。その姿を見てレイリアが舌打ちをした瞬間にレイシアはレイリアの腹を蹴ることでレイリアを吹き飛ばし距離を取ることに成功していた。
「まさかお前のスキルを使われてしまうとはね。でもレイシアを殺せば【アーシア】達も消えてしまうはずよ。さあ【アーシア】今すぐレイシアを殺しなさい。それですべてが解決するはずです」そう言ったのは【アメリアーナ】のほうだ。その言葉を聞いた【アーシア】はレイシアの方を見る。そしてレイアが自分に勝てることはないと判断して、その事実を受け入れた。
レイシアと、【アーシア】の二人は、レイリアに視線を向けると攻撃を仕掛けようとした。だがその攻撃が発動する前にレイリアが【アーシア】のことを殴りつける。それにより、その攻撃をまともに食らってしまった【アーシア】は地面を転がり吹き飛ばされてしまう。
【アーシア】と【アーシア】の体が同時に消えたことによりレイリア達はレイシアを殺すことができるようになった。レイリアは、すぐにレイシアのことを追い始めたが、レイシアは、レイリアの攻撃から逃れると、【アーシア】がいるところにたどり着いたのだ。そして【アーシア】は【アーシア】のことを見ると安心をしたのかそのまま気絶してしまったのである。レイシアは【アーシア】を抱えながらその場から急いで離れようとする。だがそれをレイリアが許すわけがなくレイシアのことを攻撃し始める。だが、その攻撃はレイシアが生み出した分身に防がれることになる。だがそのレイリアは、次の瞬間にレイシアに反撃されレイシアに殴られ吹き飛ばされることになった。だがすぐに体勢を立て直すと【アーシア】のことを助けに向かったのである。それを見て、レイシアはレイリアの相手をやめて、【アーシア】を助けることにした。だが、そこでまた別の乱入者が現れた。それは、自分の母親である【アリサ】の姿を見たのである。彼女は自分の姿と、【アメリア】の体を持つ人物のことをレイリアの母親である【アメリア】だということに気づくとレイシアが、今やるべきことは自分の母親と戦うことではなく、その人物を守ることにあると考えたのである。その瞬間にレイリアは自分の分身が、レイシアに倒されたことを確認することになる。
レイリアはレイシアに攻撃を開始する。レイシアはレイリアのことを傷つけずに止めるためにはどうすればいいのかと考えていた。レイシアがレイリアのことを止める手段はレイリアを消滅させるかあるいはレイリアの本体を殺す以外にない。だが本体である【アメリア】を殺せば、今、自分の目の前にいる【レイリア】や、その【コピー】達が全て消えるので、殺す意味がなくなる。なのでレイリアをどうにかする方法を考える必要があるのだ。
「お母様。私と一緒に帰りましょう」
「レイシア。貴方の考えていることを理解しているからこそ、その提案を受け入れることは出来ないわ。レイシア、私が貴女を殺してあげるわ」
その言葉を聞いてレイシアは少し驚いたがすぐに納得をすることが出来た。レイシアにはレイリアの言うこともよくわかったからである。そもそも【アメリア】と、【レイリア】の身体を手に入れた【アーシア】にはレイシアを倒すという目的があるからだ。レイリアと、【アメリア】の二人の目的は一致しているのである。だからこそ【アーシア】は【アメイジングブルー】に変身をして自分の母親が持っているレイシアのデータを手に入れるためにやってきたのだ。
【アメリア】にレイシアの情報を渡したくない【レイリア】がレイリアの目の前に姿を現したのである。
「レイリア。お前に勝ち目はない。諦めろ」
「いいえ、レイシア。貴女のその体は私のものよ。私のものに手を出す奴は私が殺してみせるわ」
「レイリア。お前がそう思うのならそれでいいさ。だが俺に勝てると思っているのか?」
【レイリア】の言葉に対して【アメリア】はレイリアの言葉を否定した。レイリアの言っていることが正しいかどうかは別として【アメリア】がこの場にきた理由を考えればレイリアが、この場で死ぬことを覚悟でレイアと戦いに来たと考えることもできるのだから、ここで自分が死ねばレイリアも消えると考えている可能性はある。だがそれでも【アメリア】にとってはこの勝負は負けられないものだった。なぜならば自分がレイシアを殺した時に手に入るであろう情報があればレイリアはレイシアに勝利する可能性が高いからだ。そしてレイリアは、【アメリア】が自分の言葉を信用してくれるかはわからないが嘘をついていないということは理解できるため信じることにした。そして、自分の身の安全を守るために【アメリア】を【アーシア】のところに行かせることにしたのである。
「さぁかかってこい。レイリア!」「言われなくてもいくわよ。私のレイシアのために、お前を倒してやるわ! そしてお前を消すために私はやってきたんだ。レイシア。お前を絶対に救って見せる。レイシアが生きていればきっと大丈夫なはずだ」
その言葉に、レイシアは嬉しく思い笑みを浮かべるがその表情はすぐに崩れることになる。その理由は目の前に現れたもう一人の敵の存在だった。その敵の容姿が、自分がよく知る【アリサ】だったのだ。
「久しぶりね。【レイシア】さん。いえ、ここではあえてこう呼ばせて貰うわ。【アーシア】ちゃん。もうそろそろえげつないわよね。レイリアもそうだけれど【アーシア】は。その能力が、一番危険で使いづらい能力だと思うの。だからあなたを倒させてもらうわね。だって【アーシア】を生かせばいつかレイリアも殺してくれるかもしれないし。そう考えただけでぞくぞくしてくるじゃない。それにあの子は可愛いし、いろいろ遊べそうよね。でもレイシアのスキルも厄介で面倒くさいし、先にあなたを殺しておかないと困ったことになると思うのよね。だから悪いけど死んでちょうだい。まあすぐに復活してもらうことになるでしょうけれどね。あなたの命はそんなに軽くないしね」
【アリサ】の言葉を聞いた【アーシア】は怒りを覚える。そしてその【アーシア】が行動に出るよりも早くレイシアが動き出し攻撃を仕掛けた。レイシアが、その攻撃を受けきると【アリサ】はレイシアのことを褒めるような口調になる。
「流石はレイシアといったところね。私に攻撃を仕掛けてくるなんてなかなかできないわよ。普通だったらね」
「アリサ、お前の目的がなんだがはわかっているぞ」
「へぇ~、そうなの? それはどういう意味でなのかしら?」
「【アリサ】お前の目的は【アーシア】がレイシアを始末するための道具を手に入れる時間を稼ぐことだ。レイシアはお前達二人がかりであってもレイシアを殺すことはできない。そしてレイリアが、自分の分身を生み出す前に決着を付けることもできない。だからこそレイシアにレイリアと、分身を作らせるためにこんな回りくどい方法を使ったんだ。そして分身は【アメリア】と、レイリアが戦い始めて、レイリアと、レイリアの分身が戦えるようになるまで待った。その間にレイリアにレイシアと、【アーシア】のことをレイリアの分身に殺させたいのだろう」
「それが正解ね。でもレイシアを殺せないっていうのが正解だとは思わないのかな。まあどちらにしろあなた達の相手はこの子たちよ。でもレイシアは、レイリアの分身を殺さないと【アーシア】と、レイシアを分断することが出来ないのよ。つまりはレイシアと、【アーシア】の二人を相手にレイリアの相手が出来るはずがないのよ」
「確かに、それは否定しないが、俺に勝てるつもりか? 俺は【アーシア】に力を与えることができる。だがそれだけじゃなく俺がレイシアの力を持っている以上、その力を完全に使えるようになっているんだよ。その意味を理解できているのか?」
「ええ、もちろんだわ。レイリアと、【アーシア】が、私達の目の前にいる以上貴方が、どんなに強力な力を使えても無駄ってことでしょう」
「違うな。そもそもレイシアがお前に殺されるわけないだろう」
そのレイシアの予想は当たっていた。実際レイシアと、【アーシア】がレイリアとレイリアのコピーと戦っていた時、二人はほとんどダメージを受けることはなかったのだ。だが【アリサ】が、その会話の最中に攻撃を仕掛ける。その一撃によって、レイシア達はダメージを負う。【アリサ】は【アーシア】のことを助けると、レイシア達にレイリアを倒すための手札を渡すようなことはせずに攻撃を続けた。
そして、しばらくして【アーシア】の体が完全に消滅することになった。その事実に【アーシア】は自分の体を再構築しようとしたが出来なかったのである。それどころか【アリサ】が生み出した偽物のレイシアに攻撃されてしまい消滅してしまう。そこで、【アーシア】は自分の体が【エリカ】ではなく【アメリア】の身体だということに気づく。【アリサ】が生み出したのが【アメリア】の肉体だという事に気づけば【アーシア】は【アメリア】に化けて自分の母親を騙すという手を考えたが、すでに遅かったのである。
自分の母親のことを騙したくはないが【アメリア】の体は自分が手に入れなくてはならないものであるためにレイリアの分身が、自分を倒しに来ることが確実だと考えている。
だからこそ【アメリア】に【アヴァロンの騎士】の能力を使うことをやめさせるためにレイリアを自分の前に立ちはだからせる必要があったのだ。そのためにレイシアと戦うことは必須事項であり避けてはならないことであった。【アメリア】が、レイシアとの戦いに集中することが出来たら、自分が【アーシア】の姿に【偽装】することでレイシアに気付かれず【アメリア】の姿でレイリアを殺せたのにと思いながらも【アリサ】は戦う。
「ふっざけんな。私のレイシアの分身の身体で好き勝手させるもんですか。あんたが私の大切なものを奪おうとするなら容赦はしねぇから」
【アリサ】が、【アメリア】の体に宿った【アーシア】に対して本気で怒る。だが【アーシア】は【アリサ】のことを見てすぐに【アリサ】の中身が本物のレイシアではないと判断をした。だからこそ彼女は、自分の攻撃を防ぐことに専念しはじめたのだ。自分の中のレイリアに、レイシアの本体が殺されれば、この世界もレイシアの世界の一部となってしまう。だが【アリサ】が【アーシア】を殺そうとしても、【アリサ】の攻撃は全て防がれてしまうのだ。そのため、自分の母親がレイシアを倒せばこの世界で起きている戦争は終わると考えていた。そして、この世界の平和を取り戻すためには、今レイリアを倒す以外に方法はない。だが今の【アリサ】ではレイリアを殺すことができないと判断したのだ。ならば今は、少しでも長く【アメリア】として生きて、自分の体を取り返すことを優先しようと考えたのだ。
【アリサ】が【アメリア】の攻撃を完璧には防ぐことができなかったのはレイシアの持つスキルや技術があまりにも高いレベルだったためだ。もし自分がレイリアの実力を理解していれば【アメリア】に姿を変えた【アーシア】がレイリアの前に姿を現しても何も問題なかっただろうと考えたのであった。
「はははははははは、どうした【アメリア】よ。そんな程度か? ははははは、俺には通用せんぞ」レイリアが笑いながらレイシアの【アメリア】を攻撃するが、その攻撃を全てレイシアは回避している。レイリアのスキルを完全再現するレイシアにレイリアはなす術がなく一方的に攻撃を受け続けレイリアの体力が尽きかける。だが、【アメリア】の肉体が消滅していないことに気が付き【アリサ】はレイリアに【アメリア】を追い詰めることを諦めさせることにしたのである。
「さすがに私の【アーシア】が殺されたって分かった瞬間、あなたをどうにかしようとするでしょうけれど【アリサ】ちゃんはあなたの敵にはならないわ」
「お前は一体何者なんだ?」
「ただの元【エリカ】よ。でも今は違うわ。私こそがレイシアなのよ」レイシアの言葉を聞いた【アリサ】は動揺するがすぐにレイシアに問いかける。その表情は驚きに満ちており、レイシアの言葉が嘘ではないと思ったのであった。「は? ふざけんな。なんであんたみたいな女が私の娘なのよ。絶対に認めない。私はお前が大嫌いだ」「あら残念。まあいいわ。あなたもそのうちわかるようになるはず。それにあなたを、私がレイシアから解放してあげる。あなたは【アーシア】と一緒にここで死になさい」
レイリアがそう言うとレイシアに【アメリア】と、レイリアのコピーにとどめを刺すように命じた。そのレイリアの命令を受けた【アーシア】が【アリサ】と、【アリサ】に化けていたレイリアの分身が、【アメリア】を始末しようと攻撃を仕掛けてきたのである。そのことに【アリサ】はすぐに、対応しようとしたがその前に【アーシア】の攻撃を受けてしまい【アリサ】の体は完全に消滅することになる。その光景にレイシアが慌てている隙に【アリサ】は最後の力を振り絞りレイシアの体を操ることに成功したのである。
その予想外の出来事にレイリアは驚くことになる。自分の中にいるレイシアが、突然自分の意識を奪ったかと思うと次の瞬間、【アーシア】と、【アリサ】の姿が消えてしまったのだから。レイリアはそのことに戸惑うことになる。レイリアにとって【アリサ】の力は脅威だった。だがレイシアにとってはその【アリサ】と、自分の力が合わさっても【アーシア】を殺すことはできなかったのである。だからこそレイリアは焦りを感じていた。自分の中にいたはずのレイシアが自分の目の前から完全にいなくなったという事実をレイリアは認めたくはなかったが、認めるしかなくなったのだった。そして【アーシア】に自分の姿を化けさせなければ、【アーシア】が自分と同じ存在になりつつあることに気づく。その事実を認められなかったが、受け入れるしかないのだと思い知る。【アーシア】は【アリサ】と【アーシア】の肉体を奪い取った時点でもうすでに、完全な人間ではなかったのだ。それはレイリアの魂に刻まれた呪いが【アーシア】の身体に侵食し始めたからである。
レイシアが、自分の身体と入れ替わってから数日、レイシアは自分の身体を取り戻せないことに苛立ちを覚え始める。
その事実がレイシアにストレスを与えていくのである。このままではまずいと感じ始めたレイシアは自分の肉体に【エリカ】の力を纏わせ【エリカ】に変身し、エリカの姿をして、エリカに化ければ【アリサ】と、【アーシア】が、【エリカ】の身体を手に入れるために行動を起こすのではないかと考えついた。そのことに気づいたレイシアは自分の【エリカ】に変身することにした。だが、その作戦は失敗に終わる。【エリカ】の姿で【エリカ】の姿になろうとしてもなぜかその変化が起きず元に戻れなくなるのである。
レイシアの予想通り、レイシアの肉体は、すでに【アリサ】によって【アメリア】に【偽装】された【アーシア】に乗っ取られている状態だった。だが【アリサ】がその事実を、まだ理解できていない状況のためレイシアがそのことに気づいていないだけだったのだ。レイシアはレイリアが生み出したレイリアの分身に体を入れ替えられてしまっているのだ。
そしてその状態で、レイシアは自分の力を完全に使えなくなってしまっているため、レイリアの分身達と戦うことは無理になっていたのである。レイシアがレイリアを倒すためには、レイリアの身体の中に【エリカ】が入り込み【エリカ】の力で、【アリサ】を倒すか、レイリアを操って自分の肉体を取り戻さないかぎりはレイシアはレイリアに勝つことはできないのだ。レイシアは自分が生み出した分身を殺せばいいと考えた。だがレイリアの作り出した【アリサ】は普通のアリサよりも強くなっていた。だから、レイシアは、【アリサ】に自分の肉体を奪われてしまうかもしれないという危機感を抱きはじめる。その不安を拭うことがレイリアにはできないでいた。
だからこそレイシアは、自分の力を少しでも取り戻す必要がある。そのためにも自分の分身がレイリアの前に現れる必要があると考えたのだ。そのレイシアの考えにレイリアは反対することはない。だが、レイリアも、レイシアと同じように分身を作ることができないのである。レイシアに、レイリアの姿を見せることはできた。そしてそのレイシアの分身を倒すことまで成功させたが、結局レイシアは【アーシア】に殺されることになり、再び自分の肉体は奪われることになるのであった。
僕はレイリアの【アリサ】と戦う。彼女は僕のスキルとこのアヴァロンの騎士の体を奪うことを目的としているのは間違いなかった。僕を殺そうとしている。ただレイシアに身体を返してほしくてレイリアの体を手に入れようとしているのではないのは、【アーシア】から聞いた話を聞いてよくわかった。
彼女は、この世界から、レイシアが生み出した【アーシア】や、レイシアと敵対していた【エリカ】を排除すればレイシアと、レイシアの分身は、レイシアが元居た世界に戻らなければならないと本気で考えているようだった。
だから、この世界からレイシアと、レイシアが作り上げた存在を消すことが最優先だと考えていみたい。それが、【アリサ】と、【アーシア】が望んでいることだとレイリアが説明してくれたのだ。だから僕は、自分の命を賭けることになったがレイリアを説得することにした。だが彼女は自分の目的を邪魔しようとするレイシアの分身のことを許さないと言い放ってきたのである。そんな彼女に、【アリサ】が【アメリア】の体に宿っていることを伝えてなんとか戦いを止めることには成功したのだ。だがその時はすでに、彼女の手遅れだったことを理解したのは彼女が完全に【アメリア】になってしまった後のことだった。レイリアは【アメリア】の肉体を使い、このアメリアの世界に存在する、全ての人を殺し尽くそうと、この世界を壊そうとしている。そしてこの世界の人達は、そのことに気づいていなかった。だからこそ彼女を止める必要があった。そのことで、レイシアが【アメリア】になった時に【アメリア】の肉体に宿ったレイリアが暴走した時のようにレイシアに自分の意識が移ってしまいレイシアの意識が完全に消失する可能性を考えてレイリアを【アメリア】から引き離すことには成功することになる。
だけどレイリアが【アメリア】を乗っ取ることを食い止めることは出来なかった。なぜならすでに、レイシアとレイリアはお互いに入れ替わっていて、レイリアが自分の身体をレイシアから奪い取りレイシアが、自分の身体を【アリサ】に奪われないようにレイリアの肉体を【アーシア】と【アリサ】と、レイシアの分身が奪ってしまったからだ。だからレイシアの【アーシア】がこの世界にいるレイシア以外の全員を殺してしまえば、レイシアは元の世界に強制送還されてしまい、自分の意思がなくなりレイシアに身体を奪われる可能性がでてきてしまったのだ。だからこそ、そうならないようにレイシアとレイリアの二人が争うような状況をレイシアは作りたくなかったらしい。でも今、二人はお互いの意識を共有していない状態だと言っていた。そのことからレイリアがレイシアを殺すことも可能なのではないかとレイリアは思ったようである。でも、そうなった場合はレイシアの魂に刻まれている【エリカ】への呪いは消え去りレイシアはこの世界でレイシアが死ぬ前に手に入れた記憶も、【エリカ】の力も全てを失う可能性があると言われたのである。
だからといって僕はレイリアを見捨てる気は最初からなかったのでレイリアを説得しようとする。でも、僕の言葉はレイリアに届くことはなく、【アリサ】を乗っ取った【アーシア】がレイリアの体を使って僕に攻撃を加えてきたのだ。その結果レイシアとレイリアは【アメリア】に乗っ取られてしまうのだった。その【アメリア】を倒さないとレイシアの身体が戻ってくる可能性は低くなる。それに【アリサ】にレイリアの肉体を取り戻させるわけにもいかない。それだけは何としてでも阻止しなければならないのだと気づくことになる。そのことに僕は、必死に抵抗することになる。
レイシアと、レイリアの二人を救い出す方法は一つしかなかった。その方法こそが、【アーシア】を倒すしかないということだった。【アーシア】を倒すことが出来れば【アリサ】と、【アーシア】に体を支配されていた人は助かるはずなのだ。だから、僕は自分の肉体を取り戻すことができるはずとレイシアは考えていたようだ。それなのに【アリサ】を【アーシア】と、【アリサ】の本体は、すでにレイシアが肉体に【偽装】して作った【エリカ】に乗り移っていたのである。
だからこそ、僕は自分の身体を取り返すことができなかったのだ。そして自分の魂に刻まれた【エリカ】に体が奪われたという事実は消えることがないのだった。【エリカ】が自分の肉体を取り戻してその肉体を乗っ取ったとしても魂に刻み込まれているその事実が変わることはないのである。つまり、【アーシア】は、このアメリアの世界からレイシアの分身と、レイシアの存在と、レイシアが得た力の全てを奪い去るつもりだったのである。そのことにレイシアは焦って僕のところにやって来たのだということも理解したのであった。
僕は【アーシア】が、なぜこんな暴挙にでたかと疑問を抱いていた。それは彼女が、【アーシア】の肉体に【アリサ】と【エリカ】の肉体が融合した存在だということが、関係しているのではないかと考えたのだ。
だから僕は【アーシア】を説得することにする。レイシアが【エリカ】の肉体に肉体を奪われてもレイシアが生き返ることが出来る方法が見つかるまでは、レイシアは【アーシア】をレイシア自身の肉体に封じ込めていた。だけどレイシアが死んでしまった場合【アーシア】をレイシアの中に閉じ込めておく意味がなくなるため【アーシア】の身体と、【エリカ】の肉体を分離させることを考えていた。だからこそ、【エリカ】に肉体を奪われたままの状態で【エリカ】をレイシアの肉体に戻すことは不可能だと【アーシア】は思っていたのだ。
だが、【アーシア】が想像していた以上に【エリカ】が強力な力を秘めていたために肉体から【エリカ】を引き離すことが出来ずにそのまま【アーシア】が乗っ取られる形になってしまい、【アーシア】と【アリサ】は肉体が一体化してしまったという経緯があった。だからレイシアは、【アーシア】を倒す必要があるとレイリアに言ったのだ。【エリカ】がレイシアの肉体に宿った以上、このままでは、レイシアが生きている間は【アーシア】は自由に行動することができないと考えたからである。レイシアに肉体が戻るまではレイシアに操られたりしないという安心感を抱かせるためにレイリアと入れ替わったのだそうだ。だが、そんなことをしてもレイリアは結局のところ、レイシアには逆らうことができないため無駄になる可能性もあるとレイリアが言ってきた。しかし、それでも自分の肉体を取り戻した時に、【エリカ】や、【アリサ】の呪縛から逃れられる可能性が少しは高まるはずだと言ってくれていたのである。
だから、レイシアが【アリサ】と戦うためにはどうしても必要なことだったのだそうだ。その説明を聞いている間に、【アリサ】に自分の肉体を操られてしまっていたレイリアを、どうにか正気に戻せないかと考えはじめる。そして【アリサ】はレイリアの意識に干渉することで、強制的にレイシアの意識を引きずり出そうとしていたのだ。そしてレイリアは抵抗することができなかったのだ。【アリサ】は自分の身体を完全にレイリアの身体に同化させた上で、自分の意思だけでレイリアの体を動かして自分の分身を倒すことができたので完全に油断していたみたい。
そして僕は、自分の肉体を【アリサ】の分身から取り戻すことに成功するのであった。僕の身体は【アリサ】の分身に奪われずにすんだのである。でも、僕の肉体を奪ったことで、【アーシア】も、【アーシア】が乗り移った肉体も完全に自分のものになったと思っている【アリサ】に対して、レイリアも、レイシアもどうしようもない状態になっていたのだ。
レイリアが自分の意志を失ってレイシアを殺そうとしていた理由もわかった。僕の肉体が奪われない為にレイシアは必死だったのだ。自分の身体が奪われると、元の世界に戻ることが出来なくなってしまう可能性があるからだった。その話をしているうちに、レイシアが、【アリサ】が僕にレイシアを乗っ取る方法を尋ねてくる。レイリアはレイシアを助ける為に【アーシア】に、自分の肉体ごと乗っ取られようとしているのだと説明してくれたのだ。
そこで僕はある提案をする。それは【アリサ】の本体である少女を僕に渡して欲しいと頼み込むのである。僕はこのアメリアの世界に転生してきた時からずっと自分の身体を手に入れる機会を狙っていた。でもその時には、この世界に居る人間を一人残らず殺さなければならないという制限がかけられていたのであった。でも、レイシアのおかげで、自分の意思で、自分の存在を消し去る方法を手に入れた。だから、【アリサ】に僕の体を与えることを条件にすれば【アリサ】は僕の身体を乗っ取ろうとするのをやめるかもしれない。そう思ってのことだった。だけどそのことは当然【アリサ】もわかっていたのだろう。彼女は僕の身体を奪い取ることを断念し、僕を殺すことを決意するのであった。そして僕の肉体は【アリサ】の手に堕ちてしまう。しかし、レイシアとレイリアと僕は、なんとか肉体を奪還することに成功したのだった。
「ご主人様。私と、レイシアが元の肉体を取り戻しました。これから、私たち三人は、【アーシア】と【アリサ】を倒すことになります。その前に私は貴方にお礼を伝えておきたいと思います。貴方が、この世界に私を連れて来てくれなかったら、私は今頃【アリサ】の肉体に融合されて消滅させられていたことでしょう。私を、私のまま、【アリサ】に乗っ取られてしまう前に引き止めてくれてありがとうございます。私の心からの気持ちです」
そう言って【アリサ】に乗っ取られた肉体から【エリカ】が、僕に頭を下げてお礼の言葉を告げた。
「ううん! こちらこそ、僕と一緒に居てくれて、僕に希望をくれて、助けに来てくれた。そのことについては本当に嬉しかった。僕も君たちの役に立てて良かったよ。レイシアの身体を乗っ取らないって約束してくれたのはすごく嬉しいかった。【アーシア】を倒せるのは、レイシアだけだと思うから頑張って欲しいと思う。でも無理だけはしないようにね。僕は、いつでも君の、側に居るから。レイシアを頼んだよ!」
レイシアの願いに応える為に僕がレイシアに笑顔でそう伝えると、レイシアも僕の手を取り笑顔を浮かべながらこう伝えてくれる。レイシアの言葉に、僕は涙が溢れそうになるが我慢しながら笑顔を向けるのだった。僕はレイリアにも、レイシアをお願いするとお願いしておく。二人は微笑み返してくれると、それぞれの役目を果たすために動き出すのだった。まず最初に【アーシア】が乗っ取ったレイリアと【アーシア】を倒さなければならなかったのである。
それからしばらく時間が経った後、二人の美少女の姿に化けた一人の女と一人の美幼女にしか見えない女の子の戦いが始まるのであった。僕はその様子をじっと見つめる。レイシアと、レイリアには僕が渡したスキルがあるおかげで大丈夫だとは思うけど、やっぱり不安になってしまう。そんな時だ。
「【アヴァロンの騎士】。私が、この世界を救うんだ! 私が、みんなを幸せにするんだ! 私が! 絶対に!!」『いい加減にしなさい! 私達はもうすぐ死ぬ運命なのよ!? なのになんの罪のない人々を、殺し続けて、それがこの世界の為になることなんて絶対にあるはずがないの!! 目を覚ましなさい!』
【アリサ】がレイシアとレイリアに話しかけてくる。しかし、二人がいくら【アリサ】に呼びかけても返事はなかった。しかし、二人も【アリサ】が簡単に自分の言葉を聞く相手ではないと思っていたのであろう。それでも懸命に訴えかける。
「何を言っているんだい? この世界の人たちに罪があるって? 僕はこの世界で何もしていないじゃないか!! それとも【アーシア】は、何か、心当たりでもあるのかい?」
しかし、僕のその言葉をきいても【アリサ】の表情は変わらなかった。【アリサ】は自分の思い込みだけで話しているように感じられた。【アリサ】は自分の行動が間違っていないと思い込んでいて自分の行いが正しいと思って行動しているようなのだ。僕は、自分の意見を言うことにしてみることにする。「あの【アーシア】の言うことは信じられるわけないよね! きっとレイリアさんの身体に寄生してレイシアを騙してるんだよ! 僕がレイシアと初めて出会った時はあんなに優しかったのに! それに僕は、あの【アーシア】の本性を見抜いていたのに、それをレイリアさんに伝えようとしなかった。それは、【アーシア】に操られていたせいもある。でもそれだけじゃない! 僕自身も騙されていたからなんだ。あの【アーシア】の優しさは、嘘だった。だから僕は、【アーシア】を信用できない!!」
僕がそう叫ぶと【アリサ】が、僕の方を見る。僕は【アリサ】に睨まれてしまい怖くなって黙りこんでしまう。でも、僕の身体は、僕のものではなく、レイシアとレイリアの物なのだ。その身体で【アリサ】をどうにかするのは僕の役目じゃなかった。僕の役目はあくまでも時間稼ぎだけだ。でも僕はどうしても【アリサ】を止めたかった。レイシアとレイリアは【アリサ】と戦うのは自分達に任せて欲しいと言っていたのだけど、レイシアのスキルを封じられている状態だと言うのにどうやって【アリサ】と戦うつもりだったのだろうか。
僕はそう考えるとどうしてもレイシア達だけで【アリサ】と戦ってもらうことはできなかったのだ。僕だって、できることならレイリアを助けてあげたかった。だからレイシアの制止を無視して、レイリアの傍に近寄ったのである。そして僕はレイリアの手を握ってレイリアにお願いする。「レイリアさん。どうか僕と一緒に【アリサ】を、レイリアさん自身の力で救ってくれませんか?」僕がそういうとレイリアは優しく笑って、自分の唇に人差し指をあててからこう言ってきた。「分かりました。【レイ】くん。レイシアを、私と、私の可愛い妹のレイシアを、お願いね」レイリアさんの言葉は優しい響きで、そしてその声も、まるで女神のように美しかったのだ。
僕の手を握り返してくれたレイリアに、レイシアのことをお願いする。僕の言葉でレイリアも納得してくれたようであった。そして、僕の方に顔を寄せてくると、そのまま自分の身体を押しつけてきたのである。その行為でレイリアスが、自分に僕がキスしようとしていることに気づいたのか、「【レイ】様。お待ち下さい。その行為はいけませんわ」と言ってきたのである。そして僕が「ダメですか? どうしていけないんですか? もしかしてレイリアさんも【アーシア】が怖いのですか?」と尋ねると。「いえ、そうではなく、私はレイシアの婚約者ですから、このような行為に及んでは、婚約破棄されるかもしれなくて心配なのです。だから、やめましょうと申しておりますの。それとレイシアにバレたら私まで殺されてしまうかもしれませんし」と言ったのだ。
レイリアの言葉に、僕は、自分のことを好きだとレイシアが言った時の事を思い出した。僕に対してレイリアの態度はいつもと全く変わっていなかったのである。だから僕がレイアスの身体に乗り移っても、特に動揺したりすることはなかったのである。ただ僕が他の人に取られるのではないかと考えたらしく僕を抱きしめて泣き出してしまったのだが。でも、それならば、今の状況を利用してレイリアをレイシアの代わりにするくらい許されるだろう。そう考えた僕だったのだけど。その時だ。【アリサ】はレイシアに近づいてくる。
僕の考えではレイシア達が勝つか、あるいは【アーシア】の肉体が完全に乗っ取られてしまった時に、僕は【アリサ】を殺すことになるだろう。だけど僕には【アリサ】が乗っ取られた状態で殺すことはできない。僕は【アリサ】も、助けたいと思っているから、そんな中途半端な真似はできないのであった。
レイシアとレイリアと僕の戦いが始まる。僕はレイリアが【アーシア】のスキルを発動させてくれないか期待していたのだけど。どうにも発動させることが出来ないようだった。レイシアも同じことを考えているようで困っていた。そこでレイアリアが僕の手を握った。その行為から何かを感じたレイリアは「スキルを発動させます! 【アーシア】から離れて! 私達の【レイ】くんのところに! 今すぐ!! はぁーー!!!」と叫び声を上げる。レイシアはそのレイリアの声を聴くと同時にレイリアの体を手刀で突き刺す。
「ぐふっ」
口から血を吐きだす【アリサ】に「残念でした! あなたのスキルをレイリアは封じています。私の、レイシアに不可能はないのですよ! 私に、私達に貴方を倒すことが出来るのはこの世界に一人しか存在していませんでした! それは貴方もわかっているでしょう? その方は私たちを、この世界に連れてきてくださった恩人の貴方は助けてくれるでしょうか?」と言い放つと、【アリサ】は僕のことを見た。僕を睨みつけた【アリサ】の顔を見て、僕は震えあがってしまう。そして【アリサ】はこう言うのであった。
「助けるに決まっているじゃない。助けに決まってるじゃない。そうよ助けるに決まっている。私がレイシアと、この世界を救うのよ!! 邪魔をしないで!! そうよ邪魔させない!! 私は、私が、世界を幸せにしなければならない存在なんだから!!!!!!!」そう言って【アリサ】は僕の方に突進してくると、僕の頭を掴んで地面に叩きつける。そして「レイシアと私の愛の邪魔をするものは、全員殺し尽くしてやるんだ!!!!」と言って僕を踏みつけて笑ったのであった。
レイリアにスキルを封印されている状態の【アーシア】にはレイシアとレイリアを攻撃することは出来ない。でも、レイシアに身体を操られて、僕と【レイリア】を殺しに掛かっているレイシアなら【アリサ】を傷つける事が出来るはずだ。しかし【アリサ】の攻撃は、僕にダメージを与えることができなかった。そればかりか僕を攻撃したことで【アリサ】の動きをレイシアが封じてくれたのである。「さっきの一撃が限界なのですね? もう諦めて降参したらいかがですか? このまま戦っていても勝ち目がないことはあなたもわかっているはずです」とレイシアは【アリサ】に語り掛けると「黙れ黙れ。お前にそんなことを言われる覚えはないし、私は負けていないんだ!! こんな世界、この世界の人たちなんて全て殺してしまえ!!」と言って再び僕の方に攻撃を仕掛けてきたのだ。僕はその攻撃を必死で防ぎ続けた。しかし僕の体力の限界が近いのは明白であった。
【アリサ】がレイシアの方に攻撃しようとするのを阻止するために、僕は全力を振り絞ってその攻撃を受け止め続けていたのである。
しかし【アリサ】はレイリアを倒さないと【レイシア】に勝つことが出来ないのだ。つまり、いくらレイシアを追い詰めたところで【アリサ】の勝機はなくならない。
僕も、そしてレイリアも、僕達を助けようとレイシアとレイリアが頑張ってくれているにもかかわらず【アリサ】を止めることが出来ていない事実に絶望してしまう。僕も、そしてレイリアも、もう無理なのかと思ってしまった時、レイシアの体が光輝いたのである。
そして次の瞬間レイシアの体が消え失せた。そして、僕の目の前に金髪碧眼の美しい女性が姿を見せる。
それは紛れもなく【レイシア】であった。僕は嬉しくなって、思わず抱きついてしまった。
すると、その僕の姿を見たレイリアが驚いていたのだけど、それは気にせず【レイシア】にこう告げる。
「ごめんね。【アーシア】さんを助けるために僕がレイシアを【偽装】させたからレイシアが僕の代わりに戦う事になっていたんだよ」
僕の話を聴いているのか、いないのか分からないような感じで僕の話を全く聴いていないことが、表情から分かる。
でも僕も、それ以上に今は余裕がなくてレイシアのことを心配してしまっていた。僕の顔からレイシアに対する思いを感じ取った【レイシア】は、僕の方に手を伸ばすと僕のことを抱きしめてきたのだ。僕はその行為が恥ずかしくて顔を赤らめてしまう。そんな僕をレイシアが微笑ましそうに見つめていたのだった。
僕は、レイシアから視線を外すと、そこにいる、もう一人の少女を見る。
その人物は僕達の様子を眺めてため息をつくと、
「本当に、どうして私が、この女のために、わざわざここまで来ないといけないわけ? 本当嫌だ。本当、もういい。もう、こいつらの相手をするの面倒臭い」
と言い放ったのである。僕達の前で堂々と自分の事を、自分の意志を語っていた。
その少女は見た目だけならば、とても美しくて可愛らしい。
でも【アリサ】とは全然違う。彼女は【アーシア】の体を使って喋っているのではなくて、その声帯を使って喋っているのだ。
それに、彼女の顔も少し違っていた。レイシアが、【アーシア】として、僕に見せてくれていた顔も美しかったけど、それよりもさらに美しかった。まるで本当の女神みたいだと、僕はその人物を見ながらそう思うのであった。
そして、その女性はレイリアの方に近づいて行くと、こう言うのである。
「ねえ、あなた。レイシアっていうのよね? その女の中身。まあ良いわ。とりあえずそのレイシアとかいう小娘が死ねば、【アーシア】も助かるのでしょう? それだったら私に任せなさい」
とレイリアに対してそう言うのであった。
「ちょっと待ってくれ。僕も一緒に戦いたい。僕の力も使ってほしい!」と、僕はその女性に話しかける。
その僕の姿を見て、その女性の目が一瞬見開かれたように感じると、急に僕のことを殴りつけて来たのだった。その行為によって僕は地面に倒れこんでしまう。僕の身体は僕の思った通りに動かないのであった。僕の口から悲鳴が出る。
そんな僕に対して、【アリサ】と【レイシア】は驚いた様子を見せるのだけど、レイシアはすぐに冷静になって僕にこう言い放った。
「申し訳ありませんが、今の貴様では、我々の足を引っ張ることになりかねません。今すぐ私と一緒にここから離脱することを強くお勧めします」
そうレイシアが【アーシア】に言ったのだ。
レイシアの言葉を聞いて、レイシアに何かを伝えようとした僕なんだけど。レイシアはそれを遮ると、僕を抱きかかえてレイシアはその場を立ち去るのであった。
僕はレイシアと手をつないで歩いていくのだけど、どうやら僕の【ステータスプレート】の機能に【アーシア】が使っていた【転移】というスキルがあったらしく、それを起動させることが出来たらしく、僕達はすぐにその場を離れていくことができたのである。
僕は悔しかった。レイシアの役に立ちたかったのに結局何もできず、むしろ足手まといにしかなっていない自分が許せなかったのだ。
レイシアが僕の方を見下ろして心配そうな顔を浮かべながら、「私の事を思ってくださり、感謝しております。私は幸せです。ですが今は私よりも自分の身を守ることを考えてください。私は絶対に大丈夫ですから」と言ってくれるのだ。レイシアから見れば僕はレイシアに迷惑をかけ続けているただの子供に過ぎないはずなのに、それでもレイシアは僕のことを愛してくれるんだ。そんなレイシアに、レイシアを信じる以外の道を選ぶことはできないと僕自身思ってしまった。だからこそ僕は【アーリア】を信用することに決め、レイリアを頼ることにしたのだった。
レイリアは「私を信じてくれたことに感謝しています。貴方がこれから何を選択し、その結果どんな答えを出すにしても、それは私にとって喜ばしい事なのです。さて、この先には私たちの知っている仲間がいてくれるはずです。この先にある村に向かって移動を続けていきたいと思います」と、僕の事を抱きしめてくる。
「レイシアさんと一緒だから、もう怖くないです」と笑顔を見せてくれる【アーシア】のことが、僕は羨ましくなる。僕はそんなこと口に出すことが出来なかったのであった。
「ありがとう。僕が、この世界でレイシアの力になりたいんだ。だって、僕は、レイシアのことを大好きになってしまったから」
レイシアは嬉しそうに笑うと「私の中の『聖槍グングニルの加護の書』の【スキル】を使いますのでしばらくそのままで居てほしいと伝えてきました。私が【レイシア】と【アリサ】の両方の力を使えるのは、【アリサ】の肉体の所有権を一時的にレイシアに移したことで、彼女がレイシアのスキルを扱えるからなのだそうです。レイシアにスキルの使用を禁止された状態の【アリサ】のスキルはレイリアのスキルを無効化されてしまっている。
レイシアと【アーシア】の能力の関係性について教えてもらうために【アリサ】を安全な場所に誘導する必要があったのですが、それは既に【レイリア】が終わらせてくれていました。そのため、もうこれ以上【アリサ】を危険な目に合わせないようにするため、レイリアの【偽装】によって、【アリサ】を【アーシア】と入れ替えてもらった。そうすればレイシアが安全
無職の僕に、なぜか異世界で大人気のゲームキャラ『アヴァロンの騎士』と同じ姿をした3人の女の子が押しかけてきた!? あずま悠紀 @berute00
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