半分こしたアイツのこと

気がつくといつも2人で遊んでいた山の奥にある古ぼけた神社に座り込んでいた。


「まさか、あいつがな…」


はぁっとため息が漏れた。

祖父母から告げられたのは2年前、梅雨頃に川で溺れていた近所の子を助けた。その時に足を滑らせその近くの崖らしきところから転がり落ちたらしい。

しばらく植物人間状態だったが、やがて脳死判定され詩歩の意向により臓器提供を詩歩の母親が決めたと言う。

祐介に連絡が行かなかったのは大事な時期であり、詩歩自身その邪魔をしたくなかったと昔から言ってたとのこと。

もう一つの理由は詩歩の母親がその事実を受け入れきれず他言しないでと止められていたらしい。

祖父母も祐介にお別れの挨拶くらいと言ったが拒んだらしい。


「確かに少し前だっけか?

話してたな。臓器提供するって…なんでも半分こにする癖が命まで半分こなんてな…」


『でも、半分こって悪いことじゃないでしょ?

辛いことは寄り添って嬉しいことは倍増!』


そう言っていたのは幼き日のことだ。

幼い日と言っても小学生4年生か5年生のこと。

中学に上がるのをきっかけに祐介の家族は父親の転勤のため東京に向かうことになった。

それ以来、祐介はお盆と正月に戻っては会いに来ていた。

詩歩はこの村で母と2人で暮らしていた。

なんでも、詩歩の母親が詩歩の父親の暴力から逃げるために二人でやってきたとの事だった。

それ以来、詩歩はこの町から出なかった。


「まぁ…あいつらしいな。」


寂しそうにポツリと呟く。

祐介は1人になり幾分、落ち着きを取り戻してきていた。

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