第4話 もう一人の部員

 思わぬ妨害により終わった作戦会議の翌日、空人そらとは企画の全容を一人の少女に電話越しで伝えていた。


 彼女の名は立野紗季たてのさき。容姿端麗で、顔だちもかなり美しい。紗季はラブコメ部が企画を実行するときのオペレーターのような立ち位置で遠隔で連絡をとりあっている。


 しかし、何故紗季は昨日の会議に参加しなかったのか。理由は簡単。


 ただの、コミュ障である。

 対面で向き合って話そうとすると、頭がこんがらがるのか、意思疎通ができなくなる。やはり、天は二物を与えないようだ。


 空人から全容を聞いて通話を終了した紗季は、机に突っ伏した。いくら、空人とはいえ、誰かと長時間話すことがあまりない紗季にとっては拷問に等しい。2分ほど、じっとした後、紗季は企画決行のときのために、機材の調整を始めた。


 一方空人は、紗季との通話を終え、机に突っ伏していた。

 ただ、疲れているだけである。


 それにしても、紗季はどうして空人とは会話(?)が出来るのか。


 実は二人は幼馴染なのだ。


 という、ラブコメラノベのようなテンプレでは無い。

 普通に学校の近くの書店で会っただけだ。二人は偶然にも同じ本を買いに来ていてお互い趣味が合ったこともあり、少しだけ話したりする仲になったのだ。


 世の中、そんなに広くはない。思わぬところで出会いがあったりするものだ。


 と、思うかもしれないが、空人と紗季の出会いは偶然ではなく必然だった。

 神崎空人の本質を忘れてはいけない。現実でラブコメ展開を起こそうと部活まで立ち上げるようなやつである。当然、良い人材を見つけたとなると、まるでラブコメにありそうな感じで親密度をあげていく。


 お分かりいただけただろう。神崎空人の根は腐っている。ただのゲス野郎だ。それでも、親友が多いのは彼の魅力を感じ取ってる人が多いから、ではなく顔がかなり整っていて、友人相手には自分を偽っているからだろう。

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