第11話 準備

ラーマ市街に向かう前に、一度自宅に戻ることにした。

 

 自宅は他の家屋よりかは半壊に留まっていた。


 あの日、レイに留守番を頼んだことを後悔する日が来るとは思わなかった。


 レイと一緒に行動していれば、レイだけでも助けられたかも知れない。


 正直レイが死んでしまったのかどうかも分からない。


 村の遺体は皆焼かれていて、誰だか区別がつかなかったからだ。


 それでも、子供が3人しかいないこの村では身体の大きさで判別がつくと思うが、それらしき遺体を見つけることが出来ていない。


 それ故に、レイやエレナ達はまだ生きているかもしれない。


 父さんは最後に、連れて行かれたって言っていた。


 少なくとも母さんが連れて行かれたとして、他にも捕虜として生きている可能性があるかもしれない。


 考えに耽つづ、家の瓦礫を捌けながら何か使えそうなものがないか探す。


 しかし、家の中は荒らされていて使えそうなものが無かった。


 唯一、自身の衣類の替えだけ、汚れてはいるがまだまだ使えそうだった為回収しておいた。


 また、薬草作りの道具で鉢など無事だった道具があった為こちらも回収しておいた。


 自宅の物色を終えると、今度はブノウ宅に向かうことにした。


 これからのことを考えるとやはり武器は必要になってくると思う。


 そんな考えから、ブノウ宅であれば剣の一本や2本あると思った。


 が、実際探して出てきたのは果物ナイフぐらいだった。


 でも、無いよりはマシなのでこちらも頂いておくことにした。


 あと、ブノウが使っていたと思われる兵士時代の大きなショルダーバッグがあった為、ここに諸々の荷物を入れて持ち運ぶことにした。


 最後に図書館に寄り、本の山の中から世界地図だけ探し出し、アイと合流してラーマ市街に向かうとしよう。


 そんなアレトが図書館に向かう道中、別行動をしていたアイと再び合流した。


  アイは猫のような大きな目でこちらを見ながら少し嬉しそうな様子で



「アレト様、旅の身支度は整いましたか?」


「うん、最後に地図が欲しいかなって考えてたところ。アイはどうよ?」


「はい、私は村中のお金を集め回ってました。私の能力であるサーチを応用的に使えばお金が落ちている場所を把握することができました。」


「へ〜すごいね。それでどのくらい貯まったの?」


「ボロ家一件分の価格と一ヶ月程生活できるぐらいのお金です。」


「めっちゃ拾って来てるじゃん!」



 アレトは久々に声を大きくして驚いた。


 この村にそんな大金が眠っていたとは。


 連中、端金だと思ってあまり金銭の強奪はしなかったのか。


 ともかく、アイが集めてきたお金でどうにかやりくりして行かないと。


 

 「ラーマ市街に着いたら、マイホームを買ってそこを拠点にするのもいいかもな。」



 また、これからはお金を稼ぐ必要がある。

アレトとアイの二人じゃ、どう見ても子供の兄弟にしかわからないだろう。


 子供を雇ってくれるお店なんてないだろうな。地道に薬草を作って売るというのも手だけど。


 それだと、とても効率が悪い。同業者達もいるから尚更稼ぐことは困難であろう。


 アレトが眉間に皺を寄せて考えごとをしていると、アイはそれに気づいたように



「アレト様、金銭面のことであれば私にお任せを。また、その他の生活面に関しても問題ありません。全てサポートしますので。」


「ありがたいけど、今回のようなサーチはあんまりやらないでほしいかな。なんか泥棒みたいで罪悪感ある。」


「かしこまりました。今後金銭面でサーチを使うごとを控えます。」


「うん、ありがとう。俺はこっちの世界から真っ当に生きていくって決めたから、ちゃんとしたルートでお金を稼ぐよ。」


「アレト様流石でございます。しかし、私はアレト様の『ナビゲーター』。アレト様の進む道を示す他に、あらゆる面で不自由なく生活していただく為に私は存在しております。何かお困りごとがありましたら遠慮なくお申し付け下さい。」


「お、おう。頼りにしてるよ。」



 アイの気迫にアレトはたじろぎしつつ、気を取り直して改めて次の目的を言う。



「ラーマ市街に行こう。アイ、ナビゲート最短ルートでよろしく。」


「目的地をラーマ市街にセットします。案内を開始いたします。」



 アレトとアイは共にラーマ市街へと歩き出す。


 灰村と化したカボタ村。


 周囲の木々が風によって揺らぎ、木漏れ日がとても幻想的な模様のように映し出す。


 再び帰ってくる時は、成長した姿を村のみんなに見せられるようにする。




 こんなモブキャラでも立派に成長できるということを証明する為にも、



 全力でこの異世界を生き抜いていこうと思う。





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