第10話 目覚め
「--知らない天井だ...」
一度言ってみたかったこのセリフ。
目が覚めると石壁に囲まれた何も無い部屋にいた。
実際、外に居るものだと思っていた為、誰かの家に連れて来られたかと思った。
しかし、人の家の割には何も無い。机も無く椅子もない。
今、横たわって居る場所も衣類が山積みになったところにそのままいる感じだ。
「おはようございます。そろそろ起きると思いました。」
「あー、おはよう。俺どんくらい眠ってた?」
「3日ほどですかね。」
「3日寝れることってあるんだな。そういえば、ここどこ?」
「カボタ村ですよ。」
「カボタ村?こんな建物あったんだな。」
「ここは、村長宅地下の隠し部屋です。」
「はー、あのおじさん用の護身部屋ってところか」
アレトはエレナ達と遊んでいる時、村の大体の場所は把握していた。
こんな状況にならなければ知る由も無かった場所だ。
「3日間、身の回りのことありがとう。それでさ、寝ている間生存者とかっていたりした?」
アレトは僅かな可能性に賭けてアイに問う。
アイは目を瞑り、少し間を空けてから問いに答えた。
「アレト様が寝ている間に生存者は確認できませんでした。また、現在カボタ村周辺でサーチを行った所、同様に確認出来ません。」
「そうか...」
なんとなく分かっていた変えることのできない結末。
どうしようも無い現実に、幼い頭の中は理解がついていけない。
いや、中身は大学生だから幼い頭は言い訳の過ぎず、現実逃避をしたかった故の結果である。
更にいえば、こちらに来てから6年は経って居るので、本来ならば社会人だ。
歳を重ねてもなんの成長も無かったことにやるせ無い気持ちでいっぱいだ。
「喉が渇いたし、お腹空いたな。アイ、何か持ってないの?」
「道具袋には何もございません。食料を求めるのであれば近くの市街地まで行くことをオススメします。」
市街地か。こっちの世界に来てから他の街に行ったことが無かったが、図書館の本には、一番近い街はラーマ市街ってとこだったような。
「確認だけど、そこに勇者の連中とかいないよね?」
「それは分かりません。一度、市街地まで行ってクラス『勇者』に該当する者がいるかどうかサーチをする必要がございます。」
「ごめん話ついでなんだけど、勇者の『クラス』って何?」
「『クラス』と呼ばれるものはその人の固有ジョブです。例えば、アレト様の場合クラスは『農民の子供』になります。」
「結構細かいんだね...。アイのクラスは何なっているの?」
「私のクラスは『ナビゲーター』です。このクラスは私にしか該当しない為、唯一のクラスになります。」
「へ〜なんかかっこいいね。なんか2つ名みたいで。」
「因みに固有クラスは多種多様ではありますが、クラスによっては重宝されるそうです。また、クラス『勇者』に該当する数は11です。」
「11?あんな奴が他にもいるのか...。」
「クラスの名前が判れば、その情報を元に検索をかけ該当者の数を確認することができます。」
「あくまで数だけなのね。」
「左様でございます。」
アイの能力についてはまだ未知数な所がある。
時間を一時的に止めたり、ゲートオブバビロンのようなポケット、周囲の探索とクラス検索。
なんか、まとめてみるとチートみたいなやつだな。
この世界の主人公は誰だってなった時、誰もがアイって答えるだろうな。
おっぱい大きくてビジュアルもいいし。
「とりあえず、ラーマ市街に行くか。いつまでもここに居られないしな。」
もしかしたら、勇者一行が残党狩りに再びカボタ村に訪れるかもしれない。
名残惜しいがその前にはここから離れなくてはならない。
もう勇者の顔を見たくない。あいつの顔見ると自分の理性が保てなくなりそうだ。
「かしこまりました。次の目的地をラーマ市街に設定します。」
「よろしく頼むよ」
全てを失ったアレトが、大事な人達の意志を受け継ぎ、次なる目的地ラーマ市街へと旅立つ。
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