第3話 思いは招く
よく、思いは招くと言われている。
この世界に転生してから少し違和感があった。
見覚えのある道具、村の人々の服装の色合いなど、自分がやりこんできたゲームに近いなと思っていた。
しかし、カボタ村と言われる村は存在しなかったため確信が得られなかった。
でも、あの男が背負っていたのは間違いなくスコクエ最強装備の伝説の剣。
主人公しか装備できない装備。
ここは、スコクエの世界なのだろうか?
もしそうだとしたら異世界転生じゃなくね?
あ、でもカボタ村なんて場所、スコクエには無かったから異世界ではありそうだな。
今の状況で問題点があるとしたら...
モブキャラって成長要素ってあんのかな。
スコクエはレベルカウント制だったから、レベルを上げる度に強くなれたけど。
一時的に仲間になるNPCでもレベルは固定されていたような気が...
そうなると、モブキャラは尚更レベルという概念が無いよな...
よく、モブキャラが魔物に襲われて死ぬこともあるし...
やばいな...
モブキャラが戦ったり、魔法を使うなんて聞いたことないぞ。
農夫の息子だから、桑もって戦うか...
そんなの理想じゃないな...
唯一、可能性があるとするならば勇者のパーティに入ってレベルを上げることぐらいだが...
悪い予感しかしないな。そもそも、勇者パーティにモブキャラがいることなんて、イベントで後ろに着いていくことぐらいだし。
どうするか...
一人で考えていると、前から薄汚い少女が走ってきた。
「アレト。どうしたの?アレトのお母さんが、帰りが遅いからって心配してるよ。」
「ああ、ごめんエレナ。少し道案内をしていて遅くなちゃった。」
「もしかして、勇者様と会ったの?」
「エレナ、村に来た男の人が勇者ってわかるの?」
「村長が道具屋に来て話してたのを聞いたの。勇者様に畑を荒らす魔物を討伐してほしいって頼んだだって。」
そうだったのか。最近、父さんが帰ってきてから畑のこと嘆いていたもんな。
魔物が畑の作物を荒らし、奪っていく。
確かにこの村で一番強い人となると、隣の婆ちゃん家の息子さんだもんな。頼りないから勇者に来てもらったということか。
畑を荒らす魔物が討伐されれば父さんも大喜びだもんな。
ーーというか待てよ。こんなことスコクエのイベントであったような...
日は暮れていく。最近まで寒かったが今日は暖かい。前世でいうと春に近い空気感だ。木々の葉は緑に色付き、花も色鮮やかに咲いている。
アレトはそんな花々を見ながら考えていたが、やがてエレナがうるさく忙して来るので、家に帰ることにした。
僕が、勇者と関わることはこの先ないだろう。主人公が話しかけるモブキャラは情報欲しさに話しかけてくる存在に過ぎないからな。
「ーーアレト!!また明日ね!!」
「エレナも気をつけて帰ってね。」
エレナがスキップしながら、時折振り返り、満開な花火のような笑顔を見せながら手を振ってくる。
僕らはそれを微笑ましく見守りながら手を振りかえす。
エレナが見えなくなるまで手を振り続けた。
手を振っている間は考えごとも吹っ飛んでいた。
ただエレナが無事に帰路を歩んでほしいと考えているだけだった。
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「今日、レイちゃんは泊まることになったから。」
「あーそうなんだ。なんか意外だね。レイのやつが泊まりたいって言ったの?」
「ううん、違うよ。レイちゃんの家、宿屋でしょ。今夜は勇者様が泊まるから預けてほしいって言われたの。」
レイは無口だから何を考えているかいつも分からないが、エレナとは違って物静かだから、一緒にいて悪い気はしない。
多分レイ本人も、人との接し方が分からないだけで打ち解けたらエレナとも仲良くなると思うだけどな。まだ五歳児だしこれからだよな。
「...アレト、一緒にお風呂入ろ?」
「レイ、いつの間にそこにいたのか。」
「?、僕はずっとアレトの横にいたけど...」
レイって陰薄いよな...
アレトは内心では、幽霊を見たかってぐらいゾッとしていた。
レイはもじもじしながら、
「お風呂の場所ってどこ?」
「教えるから着いて来て。」
アレトは、レイに家の奥の方にある風呂場まで案内した。
何気にレイとお風呂入るのは初めてな気がする。
同年代の男同士がお風呂に浸かる...
いいね...
アレトはウキウキしながら脱衣所で服を脱ぎ出す。
「先入ってるぞ。」
「うん!」
おお。レイが元気よく返事した。レイの奴も楽しみだったんだな。
この世界の風呂は前世で言うところの五右衛門風呂に近いところがある。
シャンプーや、ボディソープはなく、石鹸のようなもので体中を洗いまくる。
前世でも、風呂に入ることは好きだったが、異世界の風呂も味があっていい。
「おまたせ〜」
お、やっと来たか。レイの奴、服を脱ぐのに時間かかったのかな?まぁ、少し抜けているところもあるからな。
「アレトの家のお風呂って落ち着くね。」
「そうかな?」
「僕の家、宿屋だから少しお風呂が大きくて落ち着かないんだ。」
狭い方が落ち着くって言うもんな。
「...ねぇ、アレト。僕のこと好き?」
「なんだいきなりだな。」
「うん...」
「そりゃあ、もちろん好きだよ。なんせ村に二人しかいない内の一人の友達だからな。」
「...エレナお姉ちゃんのことは好きなの?」
「なんだよ急に...」
「エレナお姉ちゃんと、僕、どっちが好き?」
レイ、どうしたんだ?のぼせたか?
あたふたしながらもアレトは答える。
「ま、まぁ、どっちかっていうとレイの方が良いかな。エレナは少し騒がしいし。」
「えへへ//そうなんだ。ふーん//」
おいおいどうしたその反応は?レイが女の子に見えて来たぞ。
僕ものぼせたかな。レイは男だぞ。
男だよな...
「悪い、のぼせたみたいだから先に出るよ。」
「じゃあ、僕も出よーっと。」
レイはお風呂に入る前より気分が上がっているようだ。
僕も早く出てのぼせを取らないと...
そう思った矢先、アレトの視線は衝撃のモノを見てしまう。
無い...
男のアレが無い...
レイには男のアレが無かった。
レイって女だったのか...
思いが招た結末でもあった。
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こんばんは。次の更新も気まぐれにするのでよろしくお願いします。
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