第九話 最後の復讐(一)

 ――俺はどれだけコイツを殴っただろう?


 気付けば辺りは暗くなっていた。


「なぁ、もう終わりか?起きろよ」


 一切ピクリともしない篠田の脇腹に蹴りを入れる。


「······っ!?」


「おぉ、起きたか?まだ終わりじゃないんだから気失うなよ」


 篠田の呼吸が荒く、何度も深く息をする。相当苦しそうだ。肋骨が折れたようで、脇腹を押さえていた。


 ――良い光景だ。俺はコイツらの苦しんでる顔が見たかったんだから。


「······もう、良いだろ。頼むから······止めてくれ」


 篠田は苦しそうにそう言った。でもサイは止めない。いじめをした連中全員を殺すまでは。


 ――俺の中で眠っている晴斗もそう思っているはずだから······。だから、一人たりとも逃がさない。


「言ったろ?殺すまでは終わらない。恨むならこういう事態を引き起こした自分達を恨むんだな」


 サイはしゃがみこみ、篠田に視線を合わせそう言った。


「わる······かった。だからもう······」


 篠田が言葉を言い終わる前に、顔を殴る。篠田の口から、血が吹き出す。何度も殴ったり蹴ったりしたせいか、篠田の両目は腫れ上がりまともに見えていないようだった。


「さて、あまり斎藤を待たしちゃ悪いからもう終わらせよう」


 サイはナイフを取り出すと、篠田に馬乗りになった。抵抗されると面倒なので、頭を地面に力強く押し付けた。


「や、止めろ······」


 震える声で、篠田は命乞いをする。サイは構わず首にナイフを近付ける。


 勢いよくナイフを引くと、首から大量に血が吹き出した。篠田はそこから一切動かなくなった。周りは篠田の血で赤く染められていた。


 サイは近くにある公衆トイレで血のついた服を着替えた。


「いよいよ最後の復讐だ」


 そう呟き、サイはトイレから出ると斎藤がいるであろう場所へと向かった。


         * * * *


 桜井からの連絡を受け、仁科は急いで現場へと向かった。被害者の名前は相崎悠志。頭から大量の血を流し亡くなっている。


 ――これで二件目だ。思ったよりも、展開が早い。早急に真壁晴斗を止めないと次の犠牲者がすぐに出る。


「仁科さん!」


 慌てた様子で、桜井が駆け込んできた。


「どうした?」


「さっき連絡が入って······他でも同様の事件が起こったようです」


「なんだと!?」


 ――まずい!最初の事件が起こってからまだ三日しか経っていないぞ。これで三人目ってことは、次で最後か?


「桜井!行くぞ」


 仁科は桜井と共に、真壁晴斗が通っている高校へと向かった。


 

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