第八話 死神の陰謀(二)

「あの事件の後、教育員会がいじめ撲滅の為に動き出したが、それでもいじめは無くならなかった。だから僕が彼の意思を受け継いで、いじめを無くすんだ。僕は復讐の手助けをし、実行するのはいじめを受けた人間だ。そして、この世からいじめを根絶やしにする。……あの人の為にもね」


 一通り話し終えた死神は、すっきりとした表情をしていた。しかし直ぐに仁科の方に向き直ると、口を開いた。


「ただ、彼はもう制御出来ないところまできてしまった……。もう次の事件も起きてるかもね」


 そう言うと死神は仁科の前から姿を消した。そんな直ぐに事件が起こったらたまったもんじゃない……と思った時、携帯が鳴り響いた。通話ボタンを押し、耳に当てると慌てた様子の桜井の声が聞こえてきた。


「分かった……直ぐに向かう」


 それだけ言うと、通話を切って歩き出した。死神の言ったことがホントになってしまったようだ。


         * * * *


「何故お前たちはいじめをしている?……俺が分かるように説明してくれよ」


 手頃な大きさの石があり、そこに腰を下ろしたサイは横たわっている篠田を見下ろす。


「最初に言い出したのは……蓮だ。蓮の言うことが全てだった。だから、他の連中はお前に手を出した。最初の標的もそうだった。蓮の一言でいじめが始まった」


 ――どうやらこいつらに自分の意志はないらしい。


 サイは篠田を睨みつけた。


「斎藤が死ねと言えば、お前らは死ぬのか?」


 サイの問いに篠田は目を見開いた。何故、そんな顔をする?サイには、こいつらの考えていることが全く理解できていない。いや……篠田たちは何も考えていないのかもしれない。


 だとすれば最悪の人種だ。なにも考えずに、ただ気に食わないだとか目障りという理由だけで人を傷つける。そんな連中にサイは虫唾が走った。


 ――こういう連中はやはり死んだ方がいい。


「そろそろ復讐を始めてもいいか?さっきの話しを聞いて、やっぱお前らに生きてる価値はないと判断した」


 サイは一歩ずつ篠田に近付く。右手を押さえながら立ち上がろうとした篠田だったが、足に力が入らないらしく上手く立ち上がれないでいる。


「来るな……来るんじゃね~よ!」


 最初の威勢はどこかに消え、今は小動物が怯えているように見える。


「いい表情をするな。楽しくなってきたよ」


「このサイコパス野郎」


 ――いきなり何を言い出すんだか。俺がこうなったのは、お前らのせいだろ?


「お前らがいじめなんて下らないことをしてるから、こんな事態になってんだよ。心配しなくても、お前一人じゃ逝かせないから安心しろ」


「お前……他の奴にも手を出したのか?」


 ――勘が鋭いな。


「斎藤も最後に復讐するつもりだ。ってか、もう話すのは飽きた」


 そう言って、篠田の顔を思いっきり蹴り上げた。


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