第六話 『サイ』の暴走(二)

 サイは何度も近藤の顔面に、鉄パイプをめり込ませていく。頭からは大量に血を流し、血飛沫が舞っている。サイの顔や服には返り血が飛び散っているが、それでもお構いなしに殴る。


「もう……やめて」


 近藤は掠れた声でそれだけ言った。しかし、サイに止める気はない。まだ復讐は始まったばかりなのだから……。


「まだこれからだろ?もっと楽しめよ、お前らが普段やってたことだろ?」


「こ、ここまでは……してないだろ。俺を、殺す気か」


 近藤の言葉に、サイは笑いが込み上げてくる。


「あぁ、殺す気だよ。お前だけじゃない。いじめに加担した奴、いじめを首謀した奴……全員殺してやる」


 近藤の顔がみるみる青ざめていくのが分かる。


「悪かった……もうお前に手は出さない。だから、許してくれ」


 頭を下げ、近藤は命乞いをした。その頭にサイは無情にも鉄パイプを振り下ろす。鈍い音がして、更に血が噴き出す。


「言ったはずだぞ。殺す気でいると……。命乞いしたところで、俺の気持ちは何も変わらない」


 その言葉に反応がない。近藤は頭を自分の血で真っ赤に染め上げて絶命していた。


「はぁ、なんだもう終わりか。案外死ぬのが早かったな」


 ――どれくらい殴っただろう?辺りには血が広がっていた。これで二人は死んだ。でも、俺の復讐はまだ終わらない。残り二人……。徹底的に痛めつけて苦しい表情を拝まないとな。他の二人はどんな表情をするのか、今から楽しみだ。


 サイは記念に絶命した近藤の写真を撮り、フォルダーに保存してから血の付いた服を着替え、次の標的が居る場所へと向かった。


         * * * *


「仁科さん、頼まれていた件調べてきました」


 そう言って現場に現れたのは、桜井。肩で息をしている桜井は、遺体の方は見ずに仁科に近付いてきた。


「お前はいい加減慣れたらどうなんだ?今年で三年目なんだから、毎回現場で吐かれたらたまったもんじゃない」


「まだ吐いてないですよ。変なこと言わないで下さい!」


 何故かムキになる桜井。それを気にせず、仁科は桜井に被害者の事を聞いた。すると資料だけを渡してきた。依然桜井は、ブツブツと文句を言っている。


 仁科は渡された資料に目を通すと、やはり被害者はある生徒をいじめていたことが分かった。


 ――ということは……。


「三年前の事件が、再び繰り返されているということか」


 仁科は慌てて現場を駆け出した。後ろからは、桜井が呼ぶ声が聞こえたが構っている暇はない。仁科はそのままある場所へと向かった。

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