12話 プレゼント探し
何でここに母さんがいるんだ...
いつもは、このモールの一階で夕飯の材料を買うだけなのに何で3階にいるんだ...
母さんを見つけた瞬間俺は、近くにあった柱に身を隠し通り過ぎるのを待つことにした。いることがバレてしまうかも知れない緊張感からか心臓がバクバクしていた...
息をひそめ、隠れていることに気づかず母さんは通り過ぎていった...
「あっぶな...!まさかこんなにハラハラするとは思わなかった...」
なんとかやり過ごして、すぐに目的の店に入ろうと走っていると横から大きな声で俺の名前を呼ばれた
「おーい!碧兄ここで何してるのー?!」
「はっ!?いっ...彩春!?何でここにいるんだっ!?」
「なんて言ってるの?聞こえないっ!少し待ってて、今からそっち行くから!」
「...分かったよ!」
彩春に返事をした後、すぐに母さんが通り過ぎていった方を見た。周りを見ても母さんらしき姿はもうなかった。いないことに安心した俺は、安堵の息を漏らしながら彩春がくるのを待つことにした
「でっ...何でこのモールに彩春がいるんだ?」
「今日の授業が、午前だけだったの。だから、家にいたお母さんと一緒にこのモールに来て、私も欲しいものあったからついてきたの」
「そ...そうなのか」
「ねぇー碧兄また何か隠し事してるでしょ...」
「い...いや何も隠してなんかないぞ」
俺が、隠しているのにもう気づいたのか、彩春は頭を押さえながら考えていた。そして、ほんの数秒で何か閃いたのか俺の方を向いてニヤニヤしていた。
「あっ!なるほどね。隠し事してんじゃん碧兄。りりあちゃんを置いてここにいるってことは、記念か何かで渡すプレゼントでも探しにきたんでしょ」
「マジか..何で俺がプレゼントを探しに来たってわかったんだ?」
「んー...何でって聞かれてもなー。まぁあれだね。女の勘ってやつ!」
何で俺の妹は、こう言う時に限って察しがいいのか。
でも彩春には、俺がここにいたことを口止めすれば母さんにバレることはない。
「あのさ...彩春。俺が、ここにいたこと母さんには黙っててくれないか?」
「まぁー、碧兄がここにいたこと黙ってあげてもいいけど口止め料として何か買って欲しいなー!」
「しょうがないな...その代わり、梨里杏に渡すプレゼントを先に買いに行くから彩春も一緒に来い」
「えっ...私も行っていいの!碧兄が、りりあちゃんにどんな物を渡そうとしてるのか楽しみだなー」
彩春には言わなかったが、今から買おうとしている物がおかしくないか見てもらうために彩春について来てもらうことにした。
目的の店まで少しだけ歩き、ついた場所はネックレスの専門店だった
「碧兄もしかして、りりあちゃんに上げようとしてるのってネックレス?」
「そうだけど...彩春だったらさ、ネックレスもらって嬉しいと思うか?」
「私からしたら、嬉しいけど人によって良いか悪いか変わると思うよ。でもそれが、好きな人からのプレゼントなら絶対喜んでくれるよ!」
「そうだと良いけどな...」
少し不安な気持ちを抱えながら店の中に入ると高級なものから、安くてお手頃なものなど多くのネックレスが並んでいた。彩春は、一つ一つのネックレスを見ながら目を輝かせていた。俺は、そんな彩春を差し置いて目的の物の前まできた。
「あった。このネックレスだ」
「碧兄が探してたのってこれなんだ。えっこれなの!良いの見つけたじゃん!」
目的のものを見つけた後、彩春も俺に追いつき買おうとしているネックレスを見ると彩春はさっきよりももっと目を輝かせていた。
俺が買おうとしているのは、金の縁取りをされ黒猫の絵が描かれたネックレスだった。
「このネックレス喜んでくれると良いけど...」
「大丈夫だよ碧兄!絶対にりりあちゃん喜んでくれるよ私が保証してあげる!」
「ありがとな彩春。彩春のおかげで自信が持てた気がするよ」
俺は、ネックレスを手に取って彩春と一緒にレジまで行き会計を済ませ店の外に出た。少し値は張ったが、小遣いはまだ残っている。
そして次は、彩春に口止め料として何か買ってやらないとな。
「ネックレスも買ったことだし、彩春何が欲しんだ?」
「それじゃあ、アイス奢って欲しいなー。ほらあそこのアイス屋」
彩春が指を指したところは、シングルやダブルなどサイズの選べる有名なアイス屋だった。
「俺の買い物に今日はついて来てくれたし、今回だけ奢ってやるよ」
「やった!あそこのアイス久しぶりに食べたかったんだよねっ!」
「ほらっ行くよ碧兄、走るよ!!」
「お..おいっ!待て彩春っ!」
彩春は俺を置いてアイス屋まで走って行った。俺も彩春を追いかけるようにアイス屋まで行くと行列ができていた。最後尾の方まで行くと彩春は、先に並んで俺のことを待っていた。
「碧兄遅いよ。もっと早く来てよ」
「無理いうなよ...梨里杏にも言ってけど俺、運動不足なんだよ...」
ずっと列に並んだまま待っていると、俺たちの番が来るまでに15分ほどかかった。正直彩春に奢るだけのつもりだったが、こんなに行列ができるほど美味しいのなら俺も買いたくなってしまった。
●
「結局。碧兄もアイス買ったんだね」
「最初は買うつもりはなかったけど、あの列に並んでると欲しくなってしまったんだよ」
「あぁー分かる!あんなに並んだのに何も買わなかったら損だもんね」
そのようなことを話しながら近くにあったベンチに座りアイスを食べることにした。多分この姿を母さんに見られたら終わりだな。そんなことを考えながら食べていると、いきなり後ろから手で目隠しをされた。
「おい彩春アイス食べてる最中だから目隠しするなよ」
「えっ...私目隠しなんてしてないよ。って!お..お母さん何でここに!」
俺は、すぐさま目隠しをしていた手を外し後ろを見てみると母さんがいた。俺は、驚きのあまり言葉を失ってしまい沈黙の時間が長く続いた。多分俺は、このまま説教されると思い目を瞑って怒鳴られるのを待っていたが、何も言ってこなかった。おかしいと思いゆっくりと目を開けて母さんの方を見ると何故か笑みを浮かべていた。
「ねぇー碧君。今私に怒られるって思ったでしょ」
「思ったよ...」
「大丈夫。私は、怒らないわよ、安心しなさい」
「何で?俺は、母さんに前借りして貰ったお小遣いもうこんなに使ったんだぞ...怒られる理由はあるだろ!」
「確かに、前借りしたお金を今日の間にほとんど使うのはいけないことだわ。でもね...今日の碧君は、自分の欲しいものにお金を使わず、相手の為にお金を使った。だからね、私は怒るんじゃなくて褒めてあげたいの」
「母さん...もしかして俺たちが買い物してるの見てたの?」
「見てたわよ。碧君が私にバレないように隠れていたところから」
「最初から気づいてたのか...」
「何のためにモールに来たのか大体予想もできてたわ。だからね...碧君。私に何か隠そうとしたってお見通しなのよ。女の子のことについてなら私達に任して。
デート代や今みたいに梨里杏ちゃんに何かあげる時は、言って。相談に乗ってあげるから」
「私も協力するよ。恋愛はしたことないけど少女漫画の知識で助けてあげるから!」
「...ありがとう母さん、彩春。これからもし...こんなことがあった時は、二人に相談するよ」
家族三人で話しているといつの間にか外は完全に日が沈みきっていた。
「そろそろ帰りましょうか」
「私も早く帰りたーい」
「俺もだ。神経使いすぎて腹へったよ...」
三人で学校であったことなど話しながら俺たちは、帰路に着くことにした。
でも俺は、気づいていなかった...
ネックレスを妹と一緒に買っているところを梨里杏に見られていたことに...
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