第11話 梨里杏の誕生日?!


「と言うことがあったの」


「なるほど。だから、昼飯食べてるときあんなことをしてきたのか」


確かに付き合っている彼女が、彼氏に何もしてくれなかったら好きという気持ちが冷めることもあると思う。でも梨里杏のことは嫌いになることなんてないから梨里杏に気を遣わせて心配させたくはない。それに梨里杏に攻められてばっかりだと俺の神経が保たない気がする…


「俺は、梨里杏のことを嫌いになったりしない。だから、そんな頑張らなくても大丈夫だぞ」


周りからの視線がある中、安心させるように梨里杏の手を優しく握った。梨里杏の頬は紅潮していたが、少し不貞腐れた顔をしていた。


「あっ…碧斗君に私の事もっと知って欲しいわ…私たち、付き合うまで殆ど話す機会がなかったからお互いのことをもっと知って距離を縮めたいの!」


「俺も梨里杏のこともっと知りたい」


付き合ってから話すようになった俺たちは、お互いのことについてまだ知らないことが多すぎる。梨里杏の趣味や好きなもの、誕生日すらも知らない…

でも…誕生日については、梨里杏から早く聞いておかないといつプレゼントを渡せばいいか分からないな…


「梨里杏の誕生日っていつ…?」


「いきなりだね。私の誕生日は明日よ」


「えっ……」


こんなの絶対間に合う気がしない。プレゼントを探す時間は、放課後を使えば間に合うかもしれないが梨里杏に何をあげればいいか全く分からない。本人に聞くのが手っ取り早いかもしれないがこういうのはサプライズで渡したい。


沈黙が長かったせいか、梨里杏はずっと俺の顔を見つめて首を傾げていた。


「どうかしたの?」


「えーっと…それがさ…今日親に買い出し頼まれたの思い出してしまって…だから梨里杏と一緒に今日は帰れないんだ…」


「そっか…親に頼まれたのならしょうがないわよね…」


多分俺が、嘘ついたことがバレてなさそうだ。本当は、俺も一緒に帰りたいが今日に限ってはしょうがない。

梨里杏は、明らかに落ち込んでいたが、すぐ俺の前に頭を下げて向けてきた。


「あ…あの…一緒に今日帰れないんだったら代わりに頭を撫でてほしいの…」


「ここでか?!」


「そうよ…」


周りの視線が多い中で梨里杏の頭を撫でたら、視線どころじゃ済まなくなりそうだ、今回は、俺のせいで梨里杏を悲しませている。だから、恥ずかしくても梨里杏のお願いは聞いてあげないといけない…


「分かった…」


俺は、繋いでない手を梨里杏の頭に乗せて撫でた。撫でると同時に周りから、女子の悲鳴のような歓声が聞こえてきた。すごく恥ずかしかったけど、梨里杏は穏やかな笑顔を浮かべていた。


「ありがと…碧斗君。今日は、一緒に帰れないけど頭撫でてくれたから大丈夫です!」


「喜んでもらえたなら良かった」


二人で話していると梨里杏は、思い出したかのように


「そういえば私、先生に頼まれごとがあったんだわ!」


「それなら早く行かないとな…」


梨里杏は、屋上から出ようとドアノブを持ったが、開けず俺の方を振り返った


「ねぇー碧斗君。明日も私のお弁当食べたい…?」


「食べたいです」


「ふふっ…それなら明日も頑張らないといけないわね…」


梨里杏は、そう言い残し屋上から出ていった。


教室に戻る途中梨里杏に言われた言葉が頭から離れず、さっきの昼休みのことで余韻に浸かりたかった。でも梨里杏の誕生日プレゼントのこともあるため何がいいか考えないといけない…


今日の放課後、早速プレゼントを探しに行かないといけないけど今まで俺は、女の子にプレゼント渡したことがないから何を買えばいいか分からない…あまり気は進まないが、加藤に聞くしかないかないか…加藤は、運動神経の良さとイケメンであるため女子からの人気が多い。だから、女子が好きなものとか知ってるかもしれない。

教室に戻って加藤を探すと一人机で寝ていた。


「おーい。起きろ加藤、聞きたいことがあるんだ」


「んっ……なっ…なんだ碧斗か」


「なんだは、余計だろ…まぁー今はいいとして加藤に聞きたいことがあるんだけど」


「なんだ?」


「女子にプレゼント何を渡せば喜ぶと思う?」


「んー分からない」


加藤なら分かってると思ったけど、分からないか…加藤は、伏せていた顔をあげ俺の方を見てきた。


「女子によって好きなもは、異なるから咲野が何を好きなのかは分からない」


「やっぱり…そうだよな…」


「でも、碧斗なら咲野と一番近くにいたから、好きなものとか分からないのか?」


「………分からない…」


「それなら、咲野が持っていたもので好きそうなものは何かなかったか?」


好きそうなものか…昨日一緒に帰った時しか梨里杏の持ち物を見たことがない。スマホにパスケース、財布しか見ていない…

そういえば、昨日パスケース無くした時、梨里杏の財布は、猫がモチーフになっていた。


「あった…梨里杏の喜びそうなものあったぞっ!ありがとう加藤!」


「何か困ったことがあったら、いつでも聞けよ。あっ…あと聞く代わりにジュース奢ってほしい。喉乾いた…」


「やっぱこれからは、自力で頑張るか!」


もし加藤にずっと相談したら、何回ジュースを奢ることになってしまうか…


「冗談だ。俺に奢るぐらいなら、咲野に少しでもいいやつを買ってこい」


「加藤…今日は無理だが、明日ぐらいはジュース奢ってやるよ」


「おっサンキューな碧斗!」



相談に乗ってもらったのに、何も返さないのは加藤に悪いから明日ぐらいは奢るとするか



次の授業の準備をしている間、梨里杏とお互いに話すことはあるけど梨里杏は真面目なため授業中はほとんど会話をしない…

そんな中俺は、何をプレゼントするか授業中考えているといつの間にか放課後になっていた。


「用事があるから先に行くけど、また後でNINEで話そう」


「分かったわ。家に帰って碧斗君からの連絡待ってるわね…それじゃあ、またね」


「うん。また明日…」



教室を出たあと大型のショッピングモールまで急いで走った。



「やっと着いた…」



走ってショピングモールに来たため、体力はもう限界だ…


モールの中に入って目的の場所まで階段を使っていくことにした。梨里杏に渡すものは、もう決まっている。

お金は、いつも五千円ほど持ち歩いているため足りなくなることは絶対にないが母さんには絶対にこのお金を使ったことはバレないようにしないと…

今月は、お金を使いすぎたためお小遣いを前借りしてもらったばかりだ…

だからモールで買い物をしているのが母さんにバレたら説教を食らうことになる


目的の店がある3階にたどり着いた。店までゆっくり行こうとしたら、見覚えのある顔があった…



「マジか…」



その見覚えのある顔とは、俺の母さんだった




何でこんな時に限って母さんここにいるんだよ…

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