第9話 昼休み

「加藤は、俺にボールをぶつけた後、保健室まで運んでくれたってことでいいのか?」


「まぁーそうだな」


俺は、昨日保健室から目を覚ました時運んでくれた人にお礼をしようかと思った。でもその運んだ人物は俺の初めての告白を台無しにした張本人だ。正直お礼なんてしなくても良いと思ったが、もしボールが教室に来なかったら俺は怖気ついて梨里杏に告白できず付き合えてなかったかもしれない。だから礼はしておかないとな。


「まぁ…加藤、色々ありがとな」


「なんで碧斗が礼してんだよ!俺が謝らないといけないのに…」


「いや…ボールが当たったのは確かに痛かったし、告白できなかったけど、加藤は俺の背中を押してくれたし、気絶している俺を保健室まで運んでくれたしさ…」


「そう言ってもらえるのは嬉しいけど……ごめんな!碧斗の告白邪魔しちまって!!」


「いいよ。もう終わったことだし…それに現に俺は梨里杏と付き合えているわけだしさ」


俺は、席に座ったまま顔を上げ加藤の顔を見ながら言うと、加藤は俺の目をじっと見つめてきた。


「あのさー碧斗って相変わらず優しいよな」


「なんだよいきなり…」


「いや、いつもさ困っている人とかいたらすぐに話しかけに行くしさ。行動力すごいよな碧斗って」


「俺を褒めったって何も出ないぞ…」


俺たちが話していると会話を断ち切るように始業ベルが鳴り加藤は自分の席へ戻っていった。

そして梨里杏は、始業ベルが鳴り担任が教室にくる前に駆け足で戻ってきた。席に座った梨里杏はそわそわしながら先生が来るのを待っていた。梨里杏が心配だったので小声で梨里杏に聞く事にした。


「大丈夫か梨里杏…?」


「う…うん。私は大丈夫だよ…」


梨里杏は、大丈夫と言っているけど本当に大丈夫か…でも流石にこれ以上聞くとしつこい人と思われそうなので話すのをやめ先生が来るのを待った…




「はぁーもう昼か…」


梨里杏とはホームルームのときから一切話していない。なんて言葉をかければ良いかわからず悩んでいるといつの間にか昼になっていた。今もどうするか考えていると、左肩をポンっポンっと誰かに軽く叩かれた。


「あっ…あの碧斗君…お弁当一緒に食べますわよ…」


「そっそうだな!」


俺は、朝のことをずっと考えていたせいで梨里杏と弁当を一緒に食べることを忘れていた。席を立って梨里杏と一緒に廊下に出ようとすると一気に周りの視線が俺たちの方に向いた。何事も無く廊下には出られたがどこで食べるかは決めてない。


「梨里杏は、どこで弁当食べたいとかある?」


「あ…あの私…屋上で食べたいですわ…」


「屋上か。外は寒いかもしれないけど日差しが当たるから大丈夫かな…よし、屋上行くか」


「行きましょう!」


俺たちは、階段を登り屋上に出ると人が思った以上に多かった。そして俺たちは、丁度空いていた日差しのない壁に寄りかって座ることにした。


「はい…このお弁当碧斗君のだから…」


「ありがと。早速だけど、あ…開けてもいいか?」


「い…良いわよ」


俺は、梨里杏に渡された弁当の蓋を開けて中を見てみると、彩り鮮やかな弁当だった。揚げ物や野菜、卵焼きなど高校生男子にとって、栄養の取りやすい中身だった。


「これ食べて良いのか…?」


「食べて良いけど…したいことがあるわ…」


「したいこと?」


そう言って梨里杏は、自身の弁当から箸を取り出した。俺の持っている弁当箱から箸で卵焼きを取って俺の前に差し出してきた。梨里杏は、頬を紅潮させて恥ずかしそうにしていた。



「あ…碧斗君あ…あーんして…」


「んっ…!?」



彼女に食べさせてもらえるのは嬉しいけど、周りに人がいるせいで公開処刑されているようなもんだぞこれ……でもここで俺が断ってしまったら梨里杏に恥をかかせてしまう事になる…彼氏として俺もここで頑張らないとな。


「あー…んっ。うっ…うまっ!!美味しいよこれ!!」


「本当に!!良かったわ〜」


俺が、今まで食べてきた中で一番と言っても良いほどの美味しさだ。梨里杏から食べさせてもらった後二人で、食べているとすぐに完食してしまった。


「ご馳走様でした」


「お粗末さまでした」


「あれっ…碧斗君ここにご飯粒ついてますよ…」

「どこ…?」


「ここですわ…」


梨里杏は、俺に近づいて指でご飯粒を取ってくれた。そしてそのご飯粒を梨里杏は食べてしまった。その瞬間周りからの視線がとても痛くなってきた。


「梨里杏…流石に恥ずかしい。周りの人も見てるし…」


「もしかして…こう言うの嫌だったかしら……?」


梨里杏は、頬を紅潮させ上目遣いで俺に聞いてきた。こんな可愛い顔見てしまったら嫌なんて言えるわけがない。


「い…嫌じゃないよ」


「ほ…本当に…良かったー!」


朝とは違い、梨里杏が妙に積極的過ぎやしないか?気になる…梨里杏に聞いてみるとするか。


「梨里杏…朝とは違って妙に積極的になってないか?」


「んっ……!べっ…別に!積極的になってなんかないわよ!!」


何だこの慌てた反応?もしかして本当に積極的になってくれたのか。でも何故、朝じゃなく昼になってこんな行動を取ったんだ?


「嘘だってすぐわかるぞ。なぁ梨里杏、朝とは違って何でこんな積極的になったんだ?」


「碧斗君に隠しても無駄だろうし言うわ…朝学校に来て女子達から廊下に呼び出されたことが始まりなの…」

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