第7話 登校

梨里杏と付き合う事になった翌日。俺は、母さんと彩春に質問攻めされたせいで寝不足だ。そして俺同様母さん達も寝不足になってしまい今日の昼休みに食べる弁当がない。


「碧くんごめんね!弁当作る時間がなかったの…その代わり千円あげるから購買でパンでも買って食べてね!」


俺は、やむを得ず千円を受け取り朝ご飯を食べる事にした。今日は、初めて梨里杏と一緒に登校する日だ。その緊張のせいか、ご飯が喉を通らずいつもより遅くご飯を食べ終わった。2階にある俺の部屋に戻り制服へ着替え梨里杏と一緒にいてもおかしくないよう、洗面所にある鏡を見て櫛で寝癖を直し身だしなみを整えた。俺は、家を出ようと玄関まで行くと彩春が階段から降りてきた。


「碧兄もう行くの?」


「いつもの電車より一つ早いのに乗るからな」


「碧兄くれぐれもちゃんに変なことしないようにね」


「当たり前だろ。それじゃ行ってくる!」


「行ってらしゃいー」


玄関を開けた俺は、空を見上げ快晴の空だったが今の季節は冬な為とても寒い。


「何でこんなに朝は寒いんだよ…」


俺は、この寒さで手がかじかんでしまいそうだったのでポケットの中に手を入れ駅まで歩いた。いつもより早く家を出たため駅には、学校の制服を着た人は少なかった。ホームに上がり電車に乗って周りを見渡した。この時間帯は、通勤する人や登校する人は少ない。いつも俺が乗ってる時間帯だと人が多すぎて、満員電車になることが殆どだ。そして座るか少し考えたが梨里杏が俺を見つけやすいようにするため、立つ事にした。梨里杏と合流する駅に着くまでの間俺はスマホをいじって時間をつぶした。少しして合流する駅に着き、開閉口が開いた瞬間目の前には、白いマフラーを巻いた梨里杏がいた。


「おはよ梨里杏」


「おはよう碧斗君」


「そのま…マフラーしてる梨里杏可愛いよ」


「そ…そ言ってもらえると嬉しいわ…」


梨里杏は、マフラーで顔を半分隠し頬を紅潮させていた。梨里杏がマフラーしているだけでも可愛いのにそんな顔されたら直視できなくなってしまう…そのようなことを考えていると電車は動き出し、梨里杏はなぜかずっと俺の顔を見ていた。


「どうした…梨里杏?」


「えーっとね……私今日碧斗君のためにお弁当作ってきたんだけど…でも作り終わったときに、碧斗君がいつも弁当持参してるの思い出しっちゃったの」


「なるほどな。でも俺今日弁当持ってきてないんだ…」


「えっ…何で?」


「母さんが寝不足になって、作れなかったんだ…」


俺は、梨里杏に弁当がないことを伝えるととても嬉しそうに微笑んでいた。


「よかった…今日碧斗君の分も一様持ってきてたの。だから私のお弁当食べてくれる?」


「もちろん!!」


数分して電車が駅に着いたので俺たちは、電車から出て駅の改札口を抜けた。学校まで梨里杏と手を繋いで登校したいが他の生徒に見られると思い我慢していると梨里杏から袖をつかまれた。


「ねぇー碧斗君…してくれないの…」


「してもいいけど…同じ学校の奴らに見られるぞ」


「碧斗君と手を繋げるなら、見られったって構わないわ!」


「そんなに手繋ぎたかったのか…」


「そ…そうよっ!碧斗君の事好きなんだからしょうがないでしょ!」


俺は、梨里杏と手を繋ぎ歩こうとしたが梨里杏は頬を膨らませていた。


「そうじゃなくて…」


「ま…まさか恋人繋ぎか?」


「う…うん」


俺は、周りの視線を気にしつつ梨里杏の手と俺の手を合わせ指を絡めた。


「ありがとね…私のわがまま聞いてくれて…」


「いや。俺も梨里杏と恋人繋ぎするの好きだから…」


俺たちは、恋人繋ぎをしながら住宅街を歩いていた。駅を出た時、周囲には通勤する人達が多かったが学校に近づくにつれ学校の生徒が増えてきた。俺たちが恋人繋ぎをしながら登校していることに気づいた人たちは愕然とした顔で俺たちの姿を見ていた。


「まさか俺たちが付き合ってるなんて学校の奴らは思っても見なかっただろうな」


「そうね。私も昨日勢いで告白したようなものだから知ってる人なんて誰もいないわよ」


俺たちは、二人で話しながら歩いていると校門の前に着いた。さっきよりも周囲の視線が多くなり、俺たちについて話し合う奴もいた。さすがにこれ以上注目されると後々面倒な事になりそうだ…


「梨里杏、校門の前まで来たから手を離さないか?」


「やだわ…教室に入るまで手を繋いで欲しいの。そうじゃないと私一人だと不安だわ…」


梨里杏は、俺の手を少し強く握りながら言ってきた。学校でいつも冷酷姫と言われ続け、一人不安だったんだ。だから俺は、彼女のためなら周りの視線なんて気にしない。


「分かった。教室まで手を繋ぐよ」


「よかった…でも私、碧斗君に頼りっぱなしな気がするわ…」


「俺のことは気にするな。梨里杏のためにやってるんだから」


校舎の中に入っても周りからの視線は絶えないまま、教室についた。そして俺たちは教室のドアを開け席に座るため手を離した。俺と梨里杏の手が離れるのを見た瞬間学校に来ていた男子達から俺は質問攻めされる羽目になった…


昨日といい今日といい質問攻めはもうキツい………

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