第6話 電話

俺は、梨里杏を家に送り、また電車に乗って自宅に帰り着いた。


「おかえりなさい。碧くん!」


「おかえり。碧兄〜」


「ただいま。今日は、色々あって帰るの遅くなった」


自宅には、俺の母親 片桐かたぎり祐果ゆうかと妹である片桐 彩春いろはがリビングにいた。母さんは、キッチンで食器洗いをしているが彩春はソファに寝そべり少女漫画を読んでいた。


「碧くん!今日帰るの遅かったわね〜。今日の晩御飯はカレーライスよ!」


「マジか腹減ったから早く食べたい!」


俺は、先に制服から私服に着替えるよりも、お腹が空いて倒れそうだったので、椅子に座りご飯を食べる事にした。


「いただきます!」


スプーンを持ってカレーを口に運ぼうとしたときに、彩春が少女漫画を閉じこちらを向いてきた。


「ねぇ〜碧兄今日なんかあったの?」


「な…ないけど…」


「本当かな〜?…碧兄いつもより元気なのは気のせい?」


妹達に彼女ができたことがバレたりでもしたら、しつこく質問攻めされそうで怖い。俺は、嘘をついてることが顔に出ないよう水を飲みやり過ごそうとした。


「もしかしてだけど女関係?」


「……っ!!ゲホっ…ゲホっ」


彩春は、なんで恋愛に対してこんな察しが良いんだ?!なんとか…水を吹き出さずには済んだが、むせてしまった。彩春は、俺のことが心配になったのか側に来て俺の背中を摩った。


「大丈夫!碧兄?!ほらこの水早く飲んで」


「んっ...んっ...はぁー...なんとか大丈夫だ…」


「ごめん!…まさか本当に碧兄に彼女ができるなんて思わなかったの」


「おい…その言い方だと、俺に彼女ができるのがおかしいって言ってるようなもんだぞ」


「あっ...え〜っと。......あっ!そういえば宿題出されてたんだ!宿題しないとだから部屋戻るねお先!」


彩春は、宿題があると誤魔化して2階にある自分の部屋に戻っていった。

そして俺は、カレーライスを食べ終わり勉強しようかと考えながら2階にある俺の部屋に戻ろうとしたとき、ズボンのポケットに入っているスマホが小刻みに振動した。ポケットからスマホを取り出し、画面を見てみるとそこには梨里杏と書かれていたため、すぐさま部屋に戻り梨里杏からの電話に出た。


「もしもし、梨里杏」


「もしもし、碧斗君。いきなり電話してごめんね。あっ...もし、忙しかったら切っていいからね」


「いや。晩御飯食べ終わったばかりだから全然いいよ」


「それならよかったわ。早速なんだけど今日私が碧斗君に電話したのはね、お願いがあるからなの」


「お願い?」


俺には、梨里杏のお願いが何なのか一つも見当がつかなかない…


「あ…あの…碧斗君。私と一緒に明日登校しませんか…?」


「えっ…俺とか?」


「碧斗君以外に誰がいるって言うんですか…」


俺は、梨里杏と一緒に登校することはとても嬉しいが一つ気になることがあった。


「俺と付き合っているのかって噂されると思うけど梨里杏は大丈夫か?」


「大丈夫…だって私には碧斗君さえいれば十分だわ…他の男子なんてひとつも興味ないですし」


「分かった。梨里杏が、それで良いのなら俺も一緒に行きたい」


「やったわっ!そっ…それなら電車の中で合流でいい!?」


「いいよ。俺も、いつも電車使って登校してるから電車内で合流するか」


何時の電車で合流するかも決めた俺たちは、今日あったことを振り返りながら話す事にした。


「まさか、野球ボールが俺に直撃するとは思わなかったな…」


「あの時、私に碧斗君が抱きついてきたから、驚いちゃったわ。えっ…?そういえば碧斗君は何であの空き教室に私を呼んだの?」


「ん…?俺が、梨里杏を呼んだ理由もしかして分かってないのか?」


「う…うん。碧斗君に昼休み呼ばれた理由を放課後まで考えたんだけど全然分からなかったわ…だからね、碧斗君私を呼んだ理由教えてもらってもいい?」


多分ここで、また嘘をついたとしても結局追求されるだけだ…正直今から俺が、告白するみたいですごく恥ずかしいけど言うしかないよな...


「あのとき、梨里杏を空き教室に呼んだのは……り…梨里杏に告白するために呼んだんだ!!」


「………っ!」


「でも梨里杏は、何人もの男子に告白されてるから、俺の告白にも気付いてるものだと思ってた」


「ごめんね。みんなに冷酷姫って言われてるから、碧斗君が私に告白するなんて思わなかったの…」


梨里杏は、男子に告白されるたび断り続けた。その結果女子からの反感などもあり冷酷姫と言うあだ名が梨里杏につけられ印象が悪くなってしまった。だから俺が、告白してこないと思ったのだろう。でも梨里杏は、冷酷姫と言われ続けても告白を断ったのは多分俺のことを思ってくれたってことなのか?


「梨里杏。もしかしてだけど、冷酷姫と言われる前から俺のことを思ってくれてたのか?」


「そ…そうよ。私は、冷酷姫と言われる前から碧斗君のことが好きだったわ」


でも、梨里杏が冷酷姫と言われ始めたのは高校1年の6月頃だ。その頃は、俺と梨里杏はクラスが違ったため接点なんて一つもないはずだ。


「梨里杏が、俺を好きになったきっかけってあるのか…?」


「あるわよ。でも今は言えないわ!…いきなりで、私まだ言う決意ができてないの!」


俺は、梨里杏が俺のことを好きになってくれた理由を知りたいが、俺は梨里杏が言えるようになるまで待つ。それが梨里杏のためだから。


「分かった。梨里杏が言えるまで待つから言えるようになったら言ってほしい」


「言える時が、きたら言うから待っててね碧斗君」


俺たちは、明日授業で行う小テストのことや期末試験のことについて話している内に時計の針が9時を指していた。


「もうこんな時間かー。梨里杏と話すとなぜか時間が進むのが、早く感じてしまうな」


「そうね。私も碧斗君と同じことを思っていたわ」


いつもこの時間帯だと俺が風呂に入る番になる。冷めないうちに入らないと彩春に怒られそうだ


「俺、明日の準備しないといけないから今日はこれで」


「そうね。私も明日の小テストの勉強しないといけないわ」


「また明日、梨里杏っ!!」


「うん。またね碧斗君!!」


俺は、梨里杏からの電話を切り制服から私服に着替えた。リビングに戻るため俺の部屋のドアを開けると、そこには俺の母さんと彩春がいた。


「おいっ何してんだ?!って...もしかして今のずっと聞いてたのか?!」


「ねぇ〜碧兄の彼女ちゃんって言うのか〜」


「まさか本当に碧ちゃんに彼女ができるなんて私嬉しいわ!」




その後、俺はリビングまで連行され梨里杏との関係について質問攻めが1時間以上続いた…


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