第114話 最終ダンジョンへ

 金運は上がるが全体的にステータスが下がってしまういわくつきのステッカーを貼り付けたおかげで、三体のボスモンスターを、決まり手は突き落とし、巴投げ、押し出しで《ボルケーノサラマンダー》が順番に勝利していった。

 今は満足げに口から火炎を噴射し、クラーケンを焼いてくれている。


「これほどまでとは……!」


 浮遊していた《最高位魔術師》が地上に降りてくる。

 あとはコイツを倒して《最終ダンジョンへの鍵》をゲットすりゃいいんだろ?


「フォッフォフォ。ワシは精鋭都市テレスの市長、マーリン! このワシを倒せるかな?」

「自己紹介はそれで終わりか?」


 助手はウサギの回復が終わったようで「いつでも行けます」とウサギの背中を後ろから押して支えていた。ウサギが「な!」と左拳を突き上げているが、本当に大丈夫かよ。


「ワシの技は百八つ」

「一つも見る気はねェな! 行け! ユッキー!」

「シャーッ!」


 SAAから飛び出した《スノーマングース》が、発射された勢いそのままに《最高位魔術師》の顔を下から上へ引っ掻いた。


「ウヒャア!?」


 鷲鼻を攻撃されてうめく《最高位魔術師》に、さらなる追撃として右へ左へと引っ掻き傷が増やされる。


「シャッシャッ!」

「ヒャ! やめて! 痛いから!」

「シャー!」

「ヒィイイ!」


 本来ユッキーはヤマタノオロチに対して有利な召喚獣だったよな。

 でもヤマタノオロチ戦ではてんでかなわなくて。


「鍵を渡してくれたら、やめてやってもいい」

「そうはいかない! ワシにも市長としての意地が」

「シャシャー!」

「ぎゃああああ!」

「意地が、なんだって?」


 気の毒そうに「やめてさしあげましょうよ」と助手は言うが、あたしは《最終ダンジョンへの鍵》を渡してくれたらそれでいいんだよな。


「酷い。酷すぎる……」

「とっとと鍵を出せよ。持ってんだろ。ジャンプしろジャンプ」

「これ、中継されてるんですよね? あんまり見せられるようなもんじゃあないと思いますけど」


 そういやそんなこと言ってたな。


「ばーかばーか! ドラゴンキングに倒されてしまえ!」


 市長としてのプライドはどこいったんだよ。

 なあ。


 マーリンは杖を振りかざすと、再び宙に浮かび上がった。

 ユッキーが飛びかかってそのブーツに噛み付くも「このっ!」と逆の足で蹴落とされる。


「おぬしらはいずれドラゴンキングと戦い『マーリンに負けておけばよかった』と後悔することになるであろう!」


 テレスの地下ダンジョンの床が渦巻いて、その


「チキンっ!」

「フォッ!」


 あたしはチキンを呼び寄せて、引き上げてもらおうとする。


「逃しはしない!」

「ファフォ!?」


 が、マーリンの杖から雷撃が発射されて、チキンが撃墜されて消滅する。


 助手……助手には《テレポート》のカードがあるから……!


「フォーッフォッフォッフォ!」

「このカードでいけるか? 《アイテムスティール》!」


 腰まで埋まりながら、助手は青いカードの束のうちの一枚を探していた。

(※この『Transport Gaming Xanadu』というゲームにおいて、レベル差のある相手のアイテムを奪うスキルが《アイテムスティール》である)


 カードからマジックハンドが伸びて、マーリンの懐を探り、一本の鍵を取り上げる。


「あっ!?」

「そんなのあるんなら最初から使えよ!」


 あたしのツッコミは至極真っ当なもんだと思うが、助手は「カードが多すぎて全部のカードの効果を把握してなくてですね」と言い訳をしている。


「全部のジョブの全部のスキルが最低一枚はあるんですから、まあ無理ですよ」

「盗むな! 真正面から、正々堂々と戦いたまえ!」


 床の渦巻きが逆方向に回転して、あたしと助手が元の位置にまで戻される。

 仕切り直し、ってことなんだろうが……。


「あたしたちとしちゃあ、この鍵さえ手に入っちまえばな」

「そうですね」

「というわけで参宮。《テレポート》しよう」

「いよいよラストですね。気を引き締めていきましょうか」



【Next→???】


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