第82話 Lost some-lie 〈前編〉
私の『ピースメーカー』計画、うまくいきすぎて笑っちゃった。
人類ちゃんは負け確。おつかれさまだよーん。オルタネーターが社会基盤に組み込まれて、ベーシックインカムでお財布を握られているかぎりはおしまい。オルタネーターを加工して作られた缶詰は各世帯に支給されているから、よっぽどの
んまぁ、
でも、刑務所に入るのっていい経験になったんじゃないない? 社会経験として、なかなか出来ないことでしょ。本来ならもっと長くいないといけなかったよん。でもでも、そうすると私の目的がなっかなか達成できなくなっちゃうから。
しばらく見ないうちにずいぶんと、
もう誰も
生理的に無理。
かわいそかわいそ! って思ってたら、第四世代の十四番は――っていうか、あの子にはいろいろ、オルタネーターなんかとは違う仕様があるっちゃあるんだけども――彼のことを好きみたい。よかったねえ。すんごいなついているとは聞いていたけども、まさか
四方谷という名字は、彼が
そうそう。アンゴルモア細胞だとか〝コズミックパワー〟だとかの話を英伍くんにしたんだよん。英伍くんもオルタネーターの成り立ちは興味あったみたいだし?
あれはわかってなかったね。口では「そうなんな」と納得しているそぶりは見せてたんだけどけど。ユニ坊、何言っとるんや? って目で語っちゃってた。宇宙人の身体の一部を人間と同成分の肉塊に組み込むとあら不思議、
「そして今日は、
ここまでいろいろありましたん。
人類ちゃんには申し訳ないけどさーあ、私にとっては、オルタネーターは副産物でしかないわけで。私にとっちゃあ人類ちゃんの行く末はどうでもいいのん。
私の目標は、四年前も今も変わらない。
完成したのん。
「これからユニは魂だけの存在となり、その『Transport Gaming Xanadu』の世界に飛ぶ」
うんうん……うん?
その間、この肉体は――ユニちゃんの身体はどうなっちゃうのん?
「時空転移装置の中で放置されるから、この部屋には何重にもロックがかかっている。拓三にも持たせたセキュリティカードがあっても入ってこれないぞ」
おけおけ。幽体離脱して、気絶した状態になっちゃう、と。肉体の持ち主の私がいないうちにあんなことやこんなことをされたら嫌だしね。
で、私は京壱くんの魂を連れて、そこに寝かしている第四世代のオルタネーターの身体に京壱くんの魂をねじ込む。京壱くんは飛び降り自殺して死んじゃったことになっていて、オリジナルの肉体はとうの昔に骨になっているから仕方ないよねん。
着いたらさっそくモンスターに襲われたらどうしよ。
そんときは
「準備はいいか?」
私は出来てる。
時空転移装置の中に入って、スイッチを押したら転移開始。
――!
なんかすごい、脳が揺れ揺れ、揺れるんですけどお!?
なんだこれ、Gっていうの?
宇宙飛行士がロケットの中で耐えなきゃいけないやーつ?
あびゃばばば!
「ユニ、大丈夫?」
ばばばばば。
びゃー!
ばやばばばば。
んぎゃあ!
「あれ……?」
ぶべっ!
「ユニ、ここが『Transport Gaming Xanadu』の世界か?」
え、ええ、えええ?
うげえ気持ち悪い。
洗濯機の中に入っているぬいぐるみになった気分だったよん……。
「ユニから聞いていた話よりも、ずいぶんと近代的だな!」
私はダブルベッドの上に着地していた。枕はひとつしか置かれていない。大きいサイズが好きな人なのかな、家主。
じゃ、なくて!
ここ違うな?
私の知っている『Transport Gaming Xanadu』の世界じゃないのん!
「そうなのか?」
というか実体化してんの、私。
さっき着てた白衣のまんまだし……魂だけ、ってわけじゃないのん?
「空気中の成分を付着させて人間の形にしているぞ。解除して霊体にもなれる』
さらっとすごいこと言ってんなあ。
……っていうか、これ、転移失敗じゃーん?
部屋の中を見回す。寝室かなあ。部屋の隅っこにおもちゃ箱のようなものが見える。壁にはバイクのポスターが何種類か貼ってあるけどけど。
キョロキョロしてたら、ガラッと扉が開いて、風呂上がりっぽい全裸の男性が入ってきた。お互いに目が合って、固まる。このとき、ユニちゃんが取るべき行動は次のうちどれ!
1,怪しい者ではないと弁明する。
2,えっち! と叫ぶ。
3,頭のいいユニちゃんは〝コズミックパワー〟を借りてこの場から逃げる。
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