第68話 Union more!
京壱くんの名前を出して、ユニの表情が切り替わる。
「そーよそーよ。私は
俺が「ウサギさん?」と聞き返す隙も与えず、ユニは発声練習のように「ウサギさん、ウサギさん、……?」と繰り返した。自身の携帯端末を取り出しボイスレコーダーを起動すると、今度はその携帯端末に向かって「ウサギさん」と喋りかける。ウサギさんって、ひいちゃんの形見のうさぎのぬいぐるみのことか? 漆葉さんの部屋から移動する際に一旦ドラムバッグの中にしまったウサギさんを取り出した。焦った表情のユニは画面をタップして、自分で録音した自身の声を確認してから「ウサギさんのことをウサギさんって言ってるっぽい?」と俺に問いかける。
「俺の耳がおかしくなっていないなら、ユニはさっきから『ウサギさん』を連呼してるよ」
俺はうさぎのぬいぐるみをユニの前でかざす。するとユニは手持ち無沙汰にしていた
「ユニちゃんは確かにコズミックパワー目当てで協力
言ったけども、安藤もあは死んだじゃんか。俺は寝ているだけってことにしたいんだけどさ。ユニは死んでいる派なわけじゃん。コズミックパワーを活用するためだけなら生死は問わなくて、こうやって遺体を俺の祖母宅からここまで運ばせたわけだろ。生きている間も俺が知らないうちにアンゴルモア細胞を採取して、肉塊と融合させてオルタネーターの第二世代を作ってたわけで。ユニと安藤もあは協力関係っていうか、ユニが一方的に安藤もあを利用しているように見える。俺視点だと。宇宙由来の
話が逸れそうだ。元に戻そう。ピースメーカー計画の本質が、安藤もあの魂の部分を製造したオルタネーターの器に移し替えるためのもの、だとしよう。今目を覚ましてくれたら、眠りにつく前よりも大事にできる――と思うんだけど、そうはいかないらしい。あと、
「
『そうしよう』
ユニとウサギさんとの間で優先順位がつけられたらしい。お土産として買って帰ってきてから、葬儀の時の一度しか外に出していないはずのひいちゃんの形見とユニとで会話が成り立っている。ユニのパソコンのパスワードをウサギさんが特定できたのも、以前から繋がりがあったからじゃあないのか。安藤もあは俺のことが好きだったはずだが、俺に対しての隠し事が多すぎる。きっと、俺が真剣に向かわなかったのが悪いだのと言われるんだろ。
「そうと決まれば、タクミは品定めに行ってよ」
銃口をこめかみから離してハンマーの位置も元に戻すと、
「どうしろと」
「オルタネーターたちに襲われてケガしてほしくないし、武器を渡しておくよーん」
襲われてって。思わず苦笑いしてしまう。まだ『ひいちゃんぐらいの年齢の女の子しか作れない』ってのがさっきの説明だった。映像でも、そのぐらいのサイズの女の子しかいない。1メートルあるかないかだ。そんな子たちに囲まれたところで、大した脅威じゃあないだろ。こんな物騒なものを持ち歩く必要性は感じられない。当てられる自信もないしさ。
「いいよ、別に」
俺が返そうとしても「お守りみたいなもん」と受け取ってもらえない。こんな物騒なお守りがあるもんか。ユニは俺をなんだと思っているんだ。
『いざとなったらワタシも戦うから』
ウサギさんもだよ。俺は俺がやばいと思ったら逃げるから。まあ、ないだろうけど、向こうが攻撃してくるんだったらやり返すよ。向こうが先に手を出してきたなら正当防衛だからさ。
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