第22話 黄金都市 〈5〉
「喰らえ」
あたしはSAAの照準をコロッサスの頭に合わせて、トリガーを引く。
パァーンという乾いた発砲音に合わせて銃弾が飛び出した。
「……あ?」
召喚獣ではなく、あと5発しかない銃弾のうちのひとつが銃口から射出されちまった。
コロッサスの盾に突き刺さって爆発し、盾を粉々に吹っ飛ばす。
頭に当たってたら一発で《ゴールドバッジ》が手に入っただろうに。
いや、……バッジもろとも粉砕してたかもな。
こんなに破壊力があるんなら。
しっかし。
あと4発。
あと4発かァ。
泣いても笑ってもあと4発。
この世界で素材は手に入らんだろうから、4発。
あたしは銃口を覗き込む。
次こそは召喚獣が出てきてくれよ?
コイツに勝てそうなやつで。
「キュッ!」
あれを見て!
と言わんばかりにジロウがあたしの腕に飛びつく。
天井を見上げると、排気口からタロウが手を振っていた。
「アイツ……!」
呑気に手なんか振りやがって。
その頬が膨れてないところを見ると何の成果も得られてねェな?
「キュキュ。キュー! キュ! キューキュ!」
ジロウが身振り手振りを交えながらタロウに合図を送っている。
はっはーん?
なるほど?
コイツらの作戦はわかった。
そんなら、あたしがやることはこのデカブツを惹きつけることだ。
振りかぶって、振り落としてくるナタをサイドステップで避けつつ。
「お前に任せた。ユッキー!」
あたしはSAAを床に向けて撃ち込む。
今決めた。
このキザったらしい《スノーマングース》の名前はユッキーだ。
スノーでマングースだし雪っぽい真っ白な毛だからな。
「シャー!」
ヘビん時はちっとダサかったが。
今回お前がやんのは時間稼ぎ。
ちょこまか動き回ってくれよ!
「シャッ! シャッ!」
クッソデカいナタを振り上げて、勢いよく振り下ろしてくるコロッサス。
右に左に動き回りながら避け続けるユッキー。
薙ぎ払いに対しては飛び跳ねてかわしている。
「シャ!」
いちいち決めポーズを挟んでくるのは気になるが、いい働きだ。
いいぞいいぞ。
その間、ジロウはタロウを見上げながら合図を送るタイミングを見計らっている。
コロッサスの位置がふらりとずれた。
よし。
今だっ!
「キュ!」
ジロウが尻尾を振り上げて、ゴーサインを出した。
排気口からジャンプしたタロウがコロッサスの頭部に着地する。
ロッククライミングの要領でその小さな手を引っ掛けながら移動すると、コロッサスに取り付けられていた《ゴールドバッジ》を取り外してその頬に収納した!
「でかした!」
「キュイン!」
あたしは屈んで、ジロウとハイタッチをする。
この《ゴールドバッジ》さえ手に入ればいいんだ。
さっきは《魔動機構》とあたしたちの『ピースメーカー』計画がダブっちまったけどさ。
冷静になれよあたし。
あたしは何のためにこの世界にいるのかを、思い出せ。
メインクエストを終わらせて、元の世界を救うためだ。
「コイツをぶっ壊す必要なんざねェな」
コロッサスだって、望んじゃいないのにこんなところにしまい込まれてんだよ。
ぶっ壊したところであたしの得にはならんもん。
タロウがあたしたちに駆け寄ってくる。
ユッキーは相変わらずコロッサスの注目を集めつつ逆立ちしてみせたりピースしてみせたりしていた。
はいはい、かっこいいかっこいい。
「キュイ!」
取ってきたよ! とその膨らんだ頬から《ゴールドバッジ》を取り出して献上してくれる。
あたしは「よくやったぞ」と頭を撫でてやった。
ほんっとによくやってくれたよ。
えらい。
こんなクソデカくて鎧なんか着込んでるモンスターなんて、まともに戦えそうにねェもん。
嬉しそうに身をよじってから、タロウは消滅した。
恥ずかしがり屋なのかね?
「おめでとうございます。《ゴールドバッジ》を手に入れられましたね」
後ろの壁に寄りかかってあたしの様子を見ていたらしいカグヤがあたしを称賛する。
メインクエストとしてはこれでいいんだもんな。
モンスターが倒されなくても。
「次の目的地は、中立都市ゼノンでございます。もし、差し支えなければ《テレポート》させてさしあげましょう」
なんだ《テレポート》って。
あたしはスマホを取り出して『冒険の手引き』から《テレポート》を調べる。
なんとなんと。
この世界の中を〝転移〟できるっぽい。
そんなもんあんの。
こんな受付嬢レベルのネコでも使えんの?
元の世界より科学技術は発達してねェのに、そういうのは実用化されてんのな?
【黄金旅程終了】
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