第8話





 ——ファァァァァァァァン!




 …え、なに?




 交差点へと足を踏み出したその時、それは一瞬の出来事と呼ぶにはあまりにも唐突な「刹那」だった。


 カーブミラーが設置されていない道。


 けれど、物静かな路地の裏側。


 コンクリートでできた無機質な建物たちに囲まれた十字路の中心へ、急いで向かおうとしていた。



 その「出来事」は、意識の外側からやって来た。


 「外側」というか、それよりももっと、視界に映らないからというか。



 巨大な影と音が近づいてくるのを、反射的に知ることはできなかった。


 足も、手も、視線を止めるタイミングさえもわからない。


 そんな「一瞬」が、瞬く間に訪れた。


 空を切り裂くような金切り音。


 吹き上がる排気ガスの灰色の気体。


 「それ」が何かを認識する時間はなかった。


 少なくともそれが、「自然」の時間の流れの中にあるものには思えなかった。


 

 …いや、そもそも…




 考える時間なんてなかった。


 その現実をのは、今まで経験したこともないような感覚が、体全体を襲ったからだ。

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