僕たちの将来

平 凡蔵。

第1話

タクミは、コンビニのアルバイトを終えて、友人のカズヤと、安い居酒屋で飲んでいた。


「あのさ、ちょっと聞いたんだけど、ケイコちゃん、お見合いするんだって?」

カズヤが、店員に、お替わりの生ビールを注文した後に、そう聞いた。


「ああ、ケイコのおやじさんの取引先の社長の息子なんだ。おやじさんとこの会社も経営が苦しいらしくて、もう倒産寸前らしいんだ。それで、もし結婚ということになったら、おやじさんの会社に援助もしてくれるそうなんだ。」

タクミは、表情も変えずに、そう答えた。


「おいおい、それって、テレビドラマとかで見るやつじゃん。今時、そんな話あるのか。いや、それより、それでお前、平気なの?なんで、ケイコちゃんを止めなかったんだ。」

カズヤは、お見合いの話が本当だったことに驚いたと同時に、タクミの反応に、少しばかり、イライラしていた。


「いや、止めるもなにも、もう決まってたし。取り敢えず、会わないと、おやじさんの顔も立たないっていうんで、ケイコも、取り敢えず、会ってみることにしたんだって。」


「いやいや、その、したんだって、って言い方、気に入らないな。お前、ケイコちゃんのことが好きなんだろう。じゃ、その気持ちを貫けよ。」


「ああ、好きだ。でも、最近、考えるんだ。ケイコの相手は、俺で本当に良いのかなって。俺と一緒になって、ケイコは幸せになれるのだろうかって。なにかさ、最近、自信ないっていうか。ケイコを幸せにしあげられるイメージが湧かないんだよね。」


「バカヤロー。お前が、そんなで、どうする。大体、お前、ケイコちゃんを幸せにする自信がないって言ってるけど、その幸せって何だと考えてるんだ。お前の考える幸せってさ。」

ケンジは、勢いよくビールを流し込んだ。


「ケイコの幸せ、、、、。生活の心配することもない暮らしじゃないのか。だって、俺の目指してる小説家なんて、いつ売れるかなんて、分らないしさ。第一、一生売れないかもしれないわけじゃん。その間、どうやって生活するかっていったら、バイトしかないよね。今みたいに、コンビニとかでさ。その収入で、2人で生活するだけ稼げるかって言ったら、それは、出来ないことはないだろうけど、相当な、苦労をケイコにさせることになるんだよ。もし、そのお見合いの相手と結婚したら、そこそこのマンションに住んでさ、生活費の心配をすることもないんだ。それが幸せっていうんじゃないのか。」


「バカヤロー。お前、全然、解ってないな。女の幸せっていうのはね、いや、これは何も女に限ったことじゃない。人間の幸せっていうのはね、誰かに愛されていると感じられる事なんだよ。愛されているだけで、幸せなんだよ。たとえ貧乏してもね。そいうもんだ。」


「誰かに愛されるのが、幸せか。それなら、その見合い相手に愛されてもケイコは幸せってことになるじゃない。」


「あーあ。どうして、そういう思考回路になるのかね。あのね、誰かに、どこの誰でもいいから、愛されるのが幸せなのは、それは真実だ。でも、その愛される相手が、自分の好きな人なら、それが、最高なんだよ。そうだろ。お前とケイコちゃんは、愛し合ってるんだろ?じゃ、お見合い相手に愛されるより、お前に愛される方が、幸せなんだよ。」


「ケイコも、俺の事、本当に好きなのかなあ。俺がケイコを好きな度合いと、ケイコが俺を好きな度合いは、どっちが重いんだろう。」

タクミは、焼き鳥の串を口にくわえて、先にある2個ほどを引っこ抜いた。

「うん、このタレの焦げてるとこ、美味いね。」


「お前、何他人事のように言ってるんだ。それより、愛の重さを、比べるな。たとえ、どっちかの愛が強くて、どっちかの愛が、それより弱くても、愛し合っているという事実には、間違いがない。それは、たとえ、相思相愛にみえるカップルでも、同じ温度で愛し合ってるってことは、まず無いんだよ。そんなことを、岡本太郎さんの本に書いてあったな。しかし、お前は、幸せだよな。俺なんか、誰にも愛されてないもんね。お前はいいよ。羨ましいよ。」


「でも、お前だって、親には愛されてるだろう。」


「違う、違う。そんなんじゃない。そりゃ、親は愛してくれてるだろう。でも、俺が欲しいのは、そんなんじゃなくて、男と女の愛なんだよ。詰まりはさ、女に愛されたいっとことだよ。ああ、誰か俺と付き合ってくれないかなあ。」

そう言って、ケンジはため息をついた。


それを聞いた隣のテーブルの女性が言った。

「お兄ちゃん、うちが、愛したろか。」

60才位の女どうしで飲んだくれている2人組の派手なお姉さんの内の、より派手な服を着たお姉さんだ。


ああ、これだから、大阪の女性は、厄介なんだ。

人の話に平気で入り込むし、何か面白いこと言ってやろうみたいな、変なノリがある。


そうタクミが思っていると、当のケンジは、まんざら嫌でもなさそうなのである。

ケンジは、ちょっと嬉しそうに、「ほんま?」と言った。


「ああ、ほんまやで。うちら、まだまだ女ざかりやで。」

お姉さんも、本気なのか。

「いや、ほんまの、ほんまに、愛してくれるの?」

「そやから、ほんまやて。年上の女は、ええもんやで。」


ケンジは、真剣に考えているのか。

「でも、もう少し、若い子探してみるわ。言っても、俺も20代やし。それでも、見つかれへんかったら、その時は、お願いしますわ。」


そう言ったら、隣のお姉さんが、寂しそうに、ケンジの事を見ずに、呟いた。

「ああ、フラれてしもたわ。ああ、あたしも愛してくれる人が欲しいな。」

何となく、お姉さんが、可哀想に見えた。


そう、誰だって、誰でもいいから愛してくれる人が欲しいのは、真実なのかもしれない。


タクミとケンジが、店を出たら、やけに月が赤い。

どこかで、さかりのついた猫が、「ふぎゃー。」と鳴きやがった。


帰り道、タクミは、1人歩きながら、考えていた。

ケイコも、俺と同じような気持ちで、俺を愛してくれているなら、俺は、ケイコが、ケイコの抱く幸せに、少しでも近づくように、俺自身が変わらなきゃいけなのじゃないかと。


今のままじゃ、ケイコが可哀想だ。

小説家なんて、そんな夢みたいなことを考えているようじゃ、ケイコを、心から愛しているなんて言えないだろう。

愛してるなら、自分の夢を諦めてでも、ケイコの為に、生きる選択をしないとダメだ。

ケイコが、もし俺と、一緒に暮らすのが夢なら、俺は、それを叶えてあげたい。


それに、俺の本当の、幸せって何だって考えてみた。

ケイコと、ずっと一緒にいることじゃなかったのか。

それなのに、小説家になろうなんて、ケイコの事を考えていない証拠じゃないか。


よし、俺は、小説家の夢を捨てる。

そう決心して、タクミは、一般企業に就職しようと申し込んだ。

そして、運よく内定を貰ったのである。


ああ、これでケイコを幸せに出来る。

「お見合いなんて、クソくらえだ。」

少し、吹っ切れたように、小さな声で、ただ力強く吐き捨てた。

ああ、ケイコを愛してる。

ケイコに、今すぐにでも、会いたい。



ケイコは、さっき掛かってきたタクミからの電話の言葉を、何度も、頭の中で繰り返して、自分の気持ちを整理しようとしていた。

その電話と言うのは、タクミが、一般企業の就職の内定をもらったという内容だった。

食品会社の営業だそうだ。


タクミに、営業なんて、できるのかしら。

だって、喋るのが下手な人だしさ。

そんなことより、小説家の夢は、どうしちゃったのよ。

諦めたの?


っていうかさ、その決断って、ひょっとして、あたしの為に就職の道を選んだ?

ちょ、ちょっと待ってよ。

あたしは、そんなこと望んでいないよ。

あたしはね、あなたの事を、応援したいの。


普通の生活なんて、望んでないわ。

ううん、それは、やっぱり収入面で不安よ。

でも、たとえ、どんな貧乏してでも、あなたに夢を叶えてほしいのよ。

最終的に、叶えられなくてもさ、諦めて叶わないのと、やったけど叶わないのじゃ、ぜんぜん、違うよね。


ねえ、あなた、あたしが貧乏な暮らしに弱音を吐くって思ってるの。

あたし、そんな女じゃないよ。

うん、ごめん、やっぱり、弱音吐くかもだけど、別に、弱音吐いたって、いいでしょ。

泣いてもいいでしょ。

でも、それでも、あなたに付いていくからさ。


あ、そうだ。

この前お見合いした相手ね、あたしのことを気に入ったんだって。

今までに会った人の中で、一番、可愛いって。

ねえ、どうよ。

あたし案外モテるみたいよ。

お金持ってるし、写真で見るよりカッコよかったよ。

高級レストランで、高級なワイン飲んで、そんな暮らし、ちょっと想像しちゃった。

ディナー食べた後に、「美味しゅうございましたわ。」なんて、言っちゃうよ。

想像だけだからね、いいでしょ。

でも、あたし、公園で缶コーヒー、あなたと飲んでる方が、幸せに思えるんだよね。


ベンチで、話してくれる将来の夢。

遥か遠いところにあるタクミさんの夢。

いつも、俺なんか、全然ダメなんだよね、なんて言いながら、あなたの目がキラキラと光っていたよ。

あの優しい目が好きだなあ。


ねえ、夢を諦めないでよ。

あなたが、あたしの為に、夢を諦めるなんて、あたし耐えられない。

あなたの、キラキラ光る目がみたいのよ。

就職して、営業の仕事して、それで、キラキラとした目でいられるの?

無理でしょ。

だって、あたしのために、夢を犠牲にしたんだもん。

あなたの、その時にしている仕事って、犠牲なんだよね。

毎日、毎日、会社に行くことで、毎日、毎日、あなたは、犠牲を感じるのよ。

そんなの不幸じゃない?


ねえ、あなたが、あたしの為に、夢を諦めるんだったら、あたしたち、別れる方がいいのかもね。

別れるっていうかさ、あたしが別れを告げるわ。

あなたに、夢を叶えて欲しいのよ。


あたしが去っていく。

だから、あなたは、夢を選んで。


ああ、タクミさん、愛してる。

大好きよ。

でも、あたしは、去っていくね。

そうケイコは決心をした。


タクミは、ケイコの為に、夢を諦めて、生活の安定を選んだ。

それが、ケイコの幸せになると思ったからだ。


ケイコは、タクミの為に、タクミと別れることを選択した。

タクミに、夢を追いかけて欲しかったからだ。


そんなことがあった或る日。

ケイコは、タクミのアパートにいた。


ケイコの作った料理を前にテーブルに、ふたりが座った。

お互いに何かを言いだしたい気持ちで、お互いを窺うような妙な雰囲気だった。


ケイコが先に言葉を声に出した。

「ねえ、タクミさん。あたしたちのことなんだけど、別れよ。ううん、別れたいの。」

その言葉を聞いてタクミは、ビックリした。

どうしたんだ、俺は、ケイコの為に、就職をして、そりゃ、収入は少ないかもしれないけど、安定した生活をしようと思ってるんだよ。


「ちょっと待って。どうして?俺が嫌いになった?」

「嫌いにはなってないわ。好きよ。」


「それなら、何故。これから就職して、ケイコと一緒に暮らそうと思ってたんだよ。」

「うん、ごめん。あたし、お見合いの人と結婚する。そう決めたの。」


「おやっさんの事を考えてのことなのか。」

「うん、まあ、そんなとこ。」


ケイコは、別れる理由が、タクミに夢を諦めて欲しくないからだという本当の理由は口に出さなかった。


「ケイコ。好きじゃない人と結婚するなんて言うなよ。そんなの幸せになれないよ。少なくとも、俺は、ケイコを愛してる。俺と、一緒になってくれ。就職もしたし、ある程度の収入も入ると思うんだ。今までの、夢を追いかけてる俺じゃないんだよ。変わったんだよ。」


タクミは、それがケイコの為だとは、言わなかった。


「何言ってるのよ。あなたの収入と、お見合い相手の収入じゃ、ごめんだけど、全然、違うのよ。お金のことを考えない生活って、それって、ある意味、幸せってことじゃない。ねえ、そうでしょ。悪いけど、あなたの収入じゃ、苦労すると思うのよね。ごめんね、あなたの悪口じゃないのよ。」


ケイコは、そんなことを言いながら、涙がこぼれそうになるのを必死で抑えていた。

ああ、何を言ってるのだろう。

本当は、貧乏でもいいから、あなたと、一緒に暮らしたい。

そう何度も言おうと思ったけれど、言わなかった。


「そうかあ。俺には、お金がないもんな。というか、何も無い。」

泣きそうな、声でタクミが言った。


「何言ってるのよ。あなたには、小説家の才能があるじゃない。あなたなら、きっと人気作家になれるわよ。それより、早く料理食べてよ。冷めちゃうよ。」


ああ、あたしって、何を作っちゃったんだろう。

これが最後のふたりの食事だってのに、丸美屋の麻婆豆腐だって。

これって、豆腐にインスタントのソースを掛けるだけの料理じゃない。

中学生だって作れるメニューだよ。

ああ、あたしって、どうしてこんなにバカなの。


ねえ、あたしだって、他に、もっとちゃんとした料理だって作れるのよ。

いつか、あたしとの最後の食事を思い出して、あの時の料理、美味しかったなあなんて、思って欲しいのに。


でもさ、この麻婆豆腐ってさ、あたしが、あなたに最初に作ってあげた料理なんだよね。

まだ、あたしも、人のために作ったことなんてなくて、この麻婆豆腐だって、必死に作ったよ。

でも、それを、美味しいって言ってくれたんだよね。

あの時の、目をもう一度見たいな。

どうして、そんな悲しそうな目をするの。

いつもの夢を語る時のキラキラの目であたしを見てよ。


「ねえ、美味しい?」

「ああ、美味しい。」タクミは、そう言った瞬間、涙が流れた。


でも、少しだけ安心したタクミがいた。

これで、ケイコは、将来、お金で悩むことがなくなった。

子供が出来ても、ちゃんと学校に通わせることもできるだろう。

きっと、有名な私立学校だろうな。

ちょっと大きめの制服を着た女の子が、ケイコに手を引かれて小学校に通う。

ああ、可愛いだろうな。


良かった。

これで、ケイコは、幸せになれる。

そう思った。


ケイコは、考えていた。

これで、タクミは、自分の夢に向かって進んでくれるのかな。

そうでなきゃ、あたしが別れを告げた意味がないもんね。


「ねえ、今日の事、小説のネタにして書いていいよ。」

そうケイコは、タクミに振ってみた。

タクミの気持ちを知りたかったからだ。

あたしと別れたら、また夢を追いかけてくれるのかどうか。


「今は、そんな気になれないよ。」

力無く言った。


いや、待ってよね。

それじゃ、あたしが困るのよ。


ねえ、タクミ、あなた、あたしのことを愛してくれてるのよね。

だから、あなたの夢を諦めたのよね。


あたしは、あなたを愛しているよ。

だから、あたしも、あなたが夢を追いかけられるように、別れ話を切り出したのよ。


ふたりとも愛し合っていてさ、ふたりとも夢を諦めるっての、それ意味ないじゃない。

ナンセンスだよね。


夢を諦めるのは、ひとりだけでいいのよ。

そう、あたしだけでいいのよ。

あなたと一緒にいるっていう夢を諦めるからさ、あなたは、あなたの夢を追いかけてよ。

でなきゃ、この別れ話はなんだったのよってことになるんだからさ。


あなたが、夢を諦めて、あたしが、あなたと一緒にいるっていう夢を実現させてもいいかもだけど、やっぱり、そんなことをして得られたあなたは、あなたじゃない。


「ねえ、これから、あなた、どうするの。」

ケイコは、夢を追いかけてと言いたかった。


「さあ。どうするかな。」

曖昧な返事しかしない。


ねえ、これであなたが夢を追わないってことになったら、どうするのよ。

それなら、そうと言ってよ。

今からでも、別れ話を撤回するからさ。


だって、あたしは、あなたを愛してるんだよ。

離したくないんだよ。

でも、あなたの夢の為に、別れるんだ。

でも、あなたが夢を諦めるんなら、別れる理由がなくなるじゃない。

たとえ、イキイキとした目じゃなくなっても、あなたがいるなら、それで幸せなんだよ。

あなたの傍にいたいよ。

ずっと、一緒にいたいよ。

ねえ、どうなの?


「ねえ、タクミさん。今から、ふたりで駆け落ちしちゃおうか。」

勇気を振り絞って、そう振ってみた。

しかし、それはケイコの本心だった。


「、、、行くとこなんて、ないさ。」

タクミが、ぼそりと言った。


ケイコは、ああ、終わってしまったと思った。


「食器、洗ってないけど、このまま出ていくね。」

ケイコは、タクミに言った。


そして、ドアを開ける時に、振り返って、「絶対、小説家になって。お願い。」と上ずる声で言ったら、ボロボロと涙がこぼれ落ちた。

自分でも、顔がへの字になっているのが解る。

ああ、情けない顔してるなあ、なんて思ったが、どうにもならない。


バス停に、嗚咽しながら走った。

その後姿を見て、タクミは、ひょっとして、ケイコが、お見合いの相手と結婚すると決めたのは、親の気持ちを考えてのことじゃなくて、タクミが夢を追い続けられるようにと嘘をついたのではないかと思った。


そうなの、ケイコ。

俺の為に、お見合いの人と結婚するって言ったの。

それは、俺に対する愛から生まれた嘘なのか。

もう一度、ケイコに会って、それを確かめたい。


でも、タクミは、ケイコを、追いかけることはしなかった。


タクミは、テーブルに戻って、残された冷えた麻婆豆腐を、スプーンで掬って口に運んだ。

「ああ、ケイコ。やっぱり、ケイコの麻婆豆腐が、この世で一番美味しいよ。」

何で、麻婆豆腐なんて、食ってるんだろう。

そう呟きながら、何も考えることができずに、ただ、ケイコの幸せを願って、信じてはいない神様に向かって、手を合わせていた。



それから、2年後、ケイコとタクミは、偶然に街中で会うことがあった。


「ケイコじゃないか。どうしてるの。」

「うん、お見合いした人と結婚したよ。でも、すぐに分かれちゃった。それで、親の会社も倒産したわ。だから、チョー貧乏してるわ。あなたは、タクミさん。」


「ああ、あのままサラリーマンしてるよ。でも、仕事が合わなくてさ、もうほとんど死んでるよ。」

「そうだ、サラリーマン辞めて、作家の夢を、また追いかけたら?」

「ああ、そうだね。」


「君こそ、今は、幸せなのか。」

「ええ、そうね。」


お互いに、小さな嘘をついた。

そして、お互いに言いだそうとした言葉を、言いだすことが出来なかった。


《今から、ふたりで、もう一度、諦めないことを始めないか、、、愛してる。》


そして、2人は、別れて帰る道で、お互いに思った。

夢を諦める必要なんてなかった。

結局、同じじゃん。


そして、今でも、愛してる。

あの時のように燃えるような恋じゃないけど、愛しいと思う心が、湧き上がってくるのを感じていた。

でも、それから、2人が会う事は1度もなかった。

人生なんて、こんなものだ。

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僕たちの将来 平 凡蔵。 @tairabonzou

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