第7話 離婚へのカウントダウン

そんなある日の夜、仕事先の先輩と飲みに行った時の事だった。


本当は広志がいるから真っ直ぐ帰るべきなんだろうけど……


お義母さんには一応、報告しておいた。




「夏蓮ちゃん、どう?あれから夫婦関係あったでしょう?」



首を左右に振る私。



「えっ!?一ヶ月以上経つわよ?本当にないの?」

「はい、ありませんよ」


「…そう…?それにしても綺麗になっているのは、どうして?」


「えっ!?私が……ですか…?」


「自分では気付かないからね。女性は恋愛すれば綺麗になるものよ。キラキラしているから。好きな人でも出来た?駄目よーー。浮気したら。相手がいなきゃ夏蓮ちゃんは、そこまで綺麗にならないわよ?」




私が綺麗に?


ふと、昌輝の顔が脳裏に過る。



「あっ…!今、その人の事、考えたでしょう?」



ギクッ



「ち、違いますよ!」


「クスクス…結婚しても好きな芸能人だったり、男女問わずいたりするからね?それで?実際、どうなの?」


「本当に…いません!」


「もしかして話しにくい事情でもあるのかな?この際、お酒飲んで吐いてもらおうかしら?」


「えっ?駄、駄目ですよ!今日は旦那いるし…酔っ払って帰ったら大変です!」


「良いんじゃない?」


「先輩!」



私達は騒ぐ。


そして、私は勇気を出して話す事にした。




「先輩…嫌わないで聞いてもらって良いですか?」

「うん?何?」

「旦那に…弟いるんですよ」

「うん」


「弟、カッコ良くて…でも…彼女がいるんですよ」

「うん」

「だけど…そんな中、弟から告白されて…」

「そうなんだ」


「はい。最近、弟は彼女と別れているんです」

「そうなの?」



「はい…実は…その弟と私…相思相愛で身体の関係もある仲で…」


「そうか…だから綺麗になっているのね。随分と変わったわよ。夏蓮ちゃん。相思相愛なら幸せでしょう?」


「はい。あっ…」


「クスクス…良いんじゃない?弟の彼氏がいるから、あなたがいて、彼のお陰で綺麗になっているのはお互い愛し合ってるから」


「…先輩…」


「じゃあ…旦那さんが知らないなら辛いでしょう?」


「そうなんです。だけど…旦那も浮気してるみたいな事、弟から聞いて…多分…離婚のカウントダウンが始まっているのかもしれません」


「そうだったのね。彼はあなたの味方。私はあなたの幸せを願うから何かあったら相談しておいで」


「はい、ありがとうございます」




私達は、もう少し飲み帰る事にした。




先輩と別れ家に帰る私。


玄関に入ると突然電気が点灯した。


センサー式じゃない為、誰が点けたと思われる。



「遅かったな」



ビクッ

突然の声に驚く私。



そこには広志がいた、





「…ただいま…ごめん…お義母さんには話しておいたんだけど……」


「別に聞いてはいたし。男じゃないんだろ?」


「うん」




《男?どうしてそういう事聞くの?》



私は、広志の意外な言葉に驚くのと、恐怖を感じた。





「それなら良い。じゃあ、俺は寝るから」


「う、うん……」



そう言うと自分の部屋に行ったようだ。




《広志…何か…いつもと…違う…?》

《気のせいかな?》

《飲んでいる様子だったし》



「おかえり、夏蓮さん」



ビクッ

突然の声に驚く。



「…ビックリした〜…」

「大丈夫?何か考えている様子だったけど」


「…昌輝…君…。…ねえ、広志、いつもと変わらなかった?」




私は小声で尋ねてみた。



「えっ?特には…ただ…お酒飲んで帰って来て…家でもずっと飲んでたかな?」


「…ずっと…?…そう…」

「何か気掛かりな事あるの?」


「ないとなると嘘になる…かな…?帰り遅い事を言ってきたかと思ったら、男と一緒だったのか?って…初めて確認されて…。…いつもと違う気がしたから…」



「…いつもと…違う…?」


「うん…取りあえず、お風呂に入ってくるね」


「…ああ…うん…。余り気にしない方が良いとは思うけど」


「うん…」


「何かあったら俺は駆け付ける」


「…うん…」




私は、お風呂に入る事にした。


お風呂からあがり、部屋に行きベッドに入ろうとした時だった。




スッ ビクッ

背後から抱きしめる人影。




「夏蓮」

「広志?」



振り返らせると、キスをし、ゆっくりと倒していくと股がり、私の首筋に唇を這わせ進めていく。




ビクッ

突然の広志の行動に強張る。




「ちょ、ちょっと…急にどうしたの?」

「夫婦だろう?」

「ふ、夫婦だけど…」

「今日は、お前を抱きたい」

「…えっ…?」



再びキスをし、首筋に唇を這わせ、体に触れていく。




「や、辞め…」



手を止めない広志。



「広、広志、辞めて!」


「辞めてだ!?夫婦なのに、夫婦関係を拒むなんて男かっ!?他に男いるんだろっ!?」


「えっ…?ち、違っ!」





バシーーッ

頬を打たれた。



突然の出来事だった。



「………………」



「夏蓮さー、お前、急に雰囲気変わってんの俺が知らないとでも思ったかっ!?バレてんだよっ!」

 


ビクッ

広志の怒鳴り声に身体が強張った。




そして、先輩の言葉が脳裏を過ぎった。



『自分では気付かないからね』




「………………」



「答えろよ!まあ、大体は予想つくけど…昌輝だろう!?」


「ち、違っ…!昌輝君は関係……」



言い終える前にグイッと片腕を掴まれ引き上げられ、再び、バシーーッと頬を打たれた。




ドサッ



「……っ…!」

 

「アイツに抱かれたんだろう!?どうだった!?なあ、夏蓮。俺がいながら弟と関係持ったんだろう!?答えろよっ!」




グイッと今度は両腕を掴まれベッドから引きずりおろすと床に押えつけられ荒々しく洋服を脱がし裸にしていく。




「広志…!や、辞め…」




バシーーッ

再び頬を打たれた。



「………………」


「どうだった!?アイツと寝た感想は!?」




容赦なく、私の体を広志の手や唇が這う。


家の中なのに、恐怖からか部屋じゃない場所でレイプ(強姦)されているような錯覚を起こしそうになる程、広志は違う人のように豹変していた。





「………………」




私は怖くて仕方がなくて言葉が出なかった。



「何も言えない程、良かったのか!?なあっ!?夏蓮っ!!もう何回寝た!?アイツと!弟と!」




「………………」




「答えろよ!それとも答えきれない位、抱かれたのかっ!?」




私は首を左右に何度も振り



「…ご、ごめん…なさい…広志…」


「お前は俺の妻だろう?なあ、夏蓮。今から、結婚前みたいに抱いてやるから、昌輝とどっちが良いか今からお前を毎日抱いて分からせてやるよ。夏蓮。この際、子供、つくろうか?俺達、夫婦だしな」



私は首を左右に何度も振る。



「辞めて…」



「…………………」



「第一……私じゃ…なくても…他の女性(ひと)でも…良いんでしょう…?」


「…何言って…俺はお前を愛しているんだぞ!」


「…じゃあ…どうして…?どうして!結婚してから抱いてくれなかったの!?私は…広志の何…?」


「妻だろう?」


「…違う…妻なんかじゃない…!広志に他の女性がいる事、知っているんだから!」


「俺に?いるわけないだろう?俺は、夏蓮だけだ!」




そう言うと強引にキスをされた。



「や、辞めて!」






私はグイッと押し退けた。



「…そうか…余程、昌輝と関係持った事が良かったようだな」


「えっ…?」



バシッと頬を打たれ、押えつけられた。



「お前は、俺の妻なんだから、俺の傍に、ただ、いれば良いんだ!浮気なんてしたらいけないんだよ!分かったかっ!?」




私は首を左右に何度も振る。



「俺の言う事が聞けないのか!?」


「私は…広志の…お手伝いさんでも、置き物なんかでも、家政婦さんでもない!ただ、傍にいるだけで良いとか…何の為に結婚したのか分かんないよ!」


「口答えするのか!?」


「今の広志は、私の事なんて愛していない!夫婦関係のない私達は一緒にいる意味なんかないよ!」




私は部屋を飛び出そうとした。



グイッと引き止められ、私を押し飛ばすようにすると、股がって両手を押えつけた。



「や、やだっ!離してっ!」



その時だ。






「なあ、何か騒騒しいんだけど…どうかしたのか?開けるぞ!」



騒動に昌輝が、私達の部屋に訪れた。



カチャ

ドア開く。



私達は、気付きもしない。




「あれ?もしかして…お邪魔…」



黙らせようと、私の頰目掛けて平手が振り落とされ、私は瞳を閉じた。





























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