第4話 夫婦関係 〜 禁断の恋の始まる前兆、交わす唇 〜

ある日の事。



ガチャ

部屋のドアを開ける私。



「うわっ!ビックリした!夏蓮さんっ!?」



昌輝君の部屋に、私は訪れた。



「おかえり。昌輝君」

「入る時くらいノックしろよ!」

「あー、ごめん。ねえ、昌輝君、彼女いる?」

「いるけど」



「そうだよね。いない方がおかしい。だって、昌輝君、カッコイイし。青春楽しまなきゃだよね?」


「で?何?それがどうかした?」


「彼女とデートする度に関係持ってる?」

「関係?それってつまり身体の関係って事?」

「うん」

「いや…そんなのあんたに言う必要ある?」


「そうだよね…ごめん…私も…結婚前に…戻りたいな…」


「…夏蓮さん?」


「結婚して私に一切触れないのって、おかしいよね?」


「えっ?…いや…俺に聞くなよ。兄貴に言えば?私を抱いて〜って」


「前に言ったよ」


「言ったんだ!だったらヤれ…夫婦関係あったんじゃねーの?」


「ないよ!」


「は?」


「私の事が大事だからって…。それに、仕事で疲れているから分かって欲しいって」


「ふ〜ん…じゃあ、分かってやれば?」


「簡単に言うね…」


「いや…だって、それしかなくね?もしくは、自分から押し倒して襲っちゃえば?」


「拒まれるよ」


「いやいや、夫婦なんだし。拒む理由ねーじゃん!」


「…結婚して一切ないんだから…」


「えっ…!?マジで言ってる?」


「嘘じゃないよ」



「……………」


「今まで言ってたの信じてなかったけど……兄貴……もしかして浮気してたりして」


「えっ…?…浮気っ…!?じゃあ…私よりも色気ある人と関係持ってるから、私に触れようとしないのかな?」


「いや…納得すんなし!否定しろよ!奥さんなんだから」


「否定?関係持たないのに出来るわけないじゃん!」


「…兄貴、あんたとの時間大事とか、子供はまだいいとか…まだ若いから遊び盛りとか言ってたけど?」



「………………」



「それにあんたが、この前、先輩と出かけてる時、男といたりしてって俺が言った所で疑わない。それだけ本当に信じているのか…もしくは…結婚して安心しきってんのか…それは知らねーけど」



「……………」



「…だったら結婚する理由…分からないよ…私は…置き物じゃないし…お手伝いさんでもない…」


「好きな女だから、傍においておきたいんじゃねーの?」


「…そんなの…結婚前と変わり過ぎだよ…結婚しなきゃ良かったじゃん!……ごめん…昌輝君に愚痴っても仕方がないよね…部屋に戻るね」



私は部屋を出て行き始める。




グイッと腕を掴まれ引き止められたかと思うと、ぐるりと視界が変わると、両手が壁に押さえ付けられた。



ドキッ




「ちょ、ちょっと、昌…」



キスされた。



「一人の女なのにな。結婚して幸せそうじゃねーのって神様もあんたの未来には何を与えてんだろうな」



「…そ、そんなの…」



再びキスをされ、深いキスをされ、私は崩れるように腰をおろしペタンと座り込んだ。



「………………」



突然の出来事に驚くも、久しぶりのキスと弟である彼としてしまった事に砕け落ちてしまう。


そして、かああああ〜っと体が熱くなったのが分かった。


勿論、顔が赤くなっているのも分かった。



「…えっ…?ちょっとからかったつもりだったんだけど、その反応って…まさかキスもしてない感じ?」



「………………」



「…マジかよ…じゃあさ…」



グイッと私の手を掴み押し倒すと私に股がり両手を押さえ付けた。



ドキッ


久しぶりの感覚と上から見下ろされる体勢に私の胸はドキドキ加速する。



「過ち犯してみる?」


「えっ…?何言…」




キスをされ、首筋から鎖骨辺りまで唇を這わした。



「…っ…!」



離れる昌輝君。



気付けば私の洋服は乱れていた。



グイッと私の手を掴み起き上がらせる。



「悪い…」



私は首を左右に振る。


スッと片頬を触れる。



ドキン…



「兄貴が、あんたを抱かない理由、全然、分かんねーけど、原因は何かあるんじゃないかと思うし、正直考えた方が良いと思う。俺は何も出来ないけど…話を聞く事なら出来っから」



グイッと抱き寄せられた。



ドキン



「…うん…」




私は、昌輝君の部屋を出た。






〜 昌輝 Side 〜




夏蓮さんが部屋を離れていく。



正直

兄貴が手を出さない理由は分からないけど


あんな姿の彼女の表情を見ると

ブレーキがかからないと思った瞬間だった




―――そんなある日の事だった。



学校帰り、俺は友達と別れ薄暗い街中、

一人帰っていると




「兄貴?…隣の女の人…誰だよ。夏蓮さんいて…先輩とか上司ならまだしも…」



兄貴が夏蓮さん以外の女の人と歩いているのを偶然見かけた。


俺は見間違いかと思った。


様子を見ていると、女の人は兄貴の腕に自分の腕を絡ませる姿は二人の仲の良さが伺える。


俺は後を追った。




二人が向かった先は……



ホテル街だ。



それだけならまだしも、更に目を疑う光景を目の当たりにした。


女の人は、兄貴の首の後ろに手を回し熱っぽい視線で、兄貴を見つめ兄貴も女の人の腰に手を回し、かなり体を密着させ濃厚なキスを角度を変え何度か繰り返し長くしていた。


その後、言うまでもなく建物の方へ姿を消していった。



その日、夜遅くに兄貴は帰宅してきた。




「ただいま」

「おかえり。遅かったね」



リビングにいる夏蓮さんは迎える。



「ああ。予定より仕事が長引いて」

「そうか。ごはんは?」

「外で済ませてきた」

「そうか」

「取りあえずシャワー浴びて先に寝るから」

「うん」




お風呂あがりだった俺は


偶然に聞こえた会話



予定より仕事が長引いて?


女とホテル街にいたのに?


その理由は、おかしい話だ。



流れは大体想像つく


ホテルに行き


ホテルに出て


食事を済ませて帰ってきた




シャワー浴びるという事で


仕事から帰って来たという


口実に繋げる




兄貴は部屋に行く。




「………………」




目撃してる以上


俺は正直


兄貴の言動には


驚いた


浮気していると確信している





俺は自分の部屋に一旦戻った。





兄貴が、お風呂を済ませて来て部屋に戻った事を確認し、今一度リビングにいる事が分かり声をかけた。




「夏蓮さん」


「ビックリした!昌輝君、まだ起きてたの?良い子は寝る時間だよ」


「俺、悪い子だから、まだ寝ない」


「出たよ!憎まれ口は叩く言い訳」





私と昌輝君は、二人でいると、いつもこんな感じで普通に会話をするようになった。


だけど、他の家族がいる時は、流石にしないと言うより出来ないのだ。


でも、唯一、本音トークしてる相手だと言える。




「なあ…」

「何?」

「あれから夫婦関係あった?」

「…それは…」

「その反応ってないんだ」



「………………」




「夏蓮さん、兄貴の事、もっと考えた方が…」

「そうだね…だけど…話にならなさそうだし」

「…夏蓮さん」


「さて、私も寝ようっと!昌輝君も早く寝なよ。じゃあ、最後の電気消しよろしくーー」




グイッと引き止められ、背後から抱きしめられた。



ドキン

胸が大きく高鳴る。



抱きしめられるのと同時にピッとリモコンでリビングの電気を消す昌輝君。



「ま、昌輝君…?どうしたの?」



抱きしめた体を離すと一旦、私を半回転させると再び抱きしめた。




「ま、昌輝君。だ、駄目だよ。見られたら…」

「見られたらまずいから電気切ったんだけど?」




ドキン


胸が大きく高鳴る。




「なあ…もし兄貴が浮気してたらどうする?」

「えっ?浮気?…それ、前にも言ってなかった?」



抱きしめた体を離す。



「兄貴、信じんの?」

「それは…」

「じゃあさ、あんたの気持ちは?」

「あんたは兄貴の事、好きなの?」


「私は…」

「選択肢は好きか嫌いか、どっちか答えろよ!」

「えっ?」


「それは正直分からないのが本音だけど、どちらかと言われると好き…なのかな…?…って」



「……………」



「嫌いという選択肢は、ないんだ」

「それは…」


「身体の関係が、一切ねーのに?あんたは、浮気されても平気な感じなんだ」


「昌輝君…さっきからどうし…」


「兄貴、他に女いると思う」



「えっ…?」


「たまたま、今日見かけて。……もし、あれが本当なら…あんたは幸せになれない」


「…そっか…私よりも色気ある感じだった?」


「えっ…?」


「…ごめん。なんて嘘だよ。ごめんね。ありが…」




言い終える前にキスで唇が塞がれた。



「俺があんたを変えてやるよ!」

「…えっ…?か、変え…る…?」



スッと私の胸を指差す。



「俺が、あんたの心の想いを俺に向かせる!」


「む、向かせるって…彼女いるんでしょう?私を都合の良い女になんかにしないで!」


「勝手に先走んの辞めろよ!」


「えっ…?だって…」



グイッと後頭部を押すとキスされた。




「俺は彼女と別れる!すぐには無理だけど、俺、今の夏蓮さん見てらんねーんだよ!」


「…昌輝…君…」


「だから俺の事…少しでも考えてくんねーかな?」


「…そんなの…昌輝君は広志の弟なんだよ!考えてなんて無茶苦茶だよ!」


「じゃあ!浮気されてて関係ないまんま、あんたは兄貴の妻として、これからもずっとやっていくの?下手すりゃ、あんた奥さんの座、紙面上だけの関係だけど?何の為に結婚したんだよ!」



「……………」



「料理作る為だけの女?身の周りの面倒を見るだけの女?それじゃ、家政婦やお手伝いさんと変わんねーじゃん!」



スッと両頬を優しく包み込むように触れる昌輝君。




「だったら…俺が…あんたの事を愛してやりたい。あんたは、お手伝いさんでも家政婦さんでもない。一人の女なんだよ…!」


「…私…」


「あんたは幸せにならなきゃならない。いや…幸せになって良いんだ…!」




抱きしめる昌輝君。


すぐに抱きしめた体を離すとキスをし、更に何度も何度も深いキスをされた。


唇が離れると、吐息と共に名残り惜しむように声が洩れた。




「…そんなになるくらい感じてんの?息上がってるけど?」




至近距離で言われ、オデコ同士をくっつける。



「…俺…あんたの事…マジになって良いかな?いや…絶対になる自信ある!」




そう言うと、キスをし、電気を付けられた。





「じゃあ、夏蓮さん、電気切ろよ!宜しく〜〜」



イタズラっぽい笑顔をし、足早にリビングを去った。



「えっ!?ちょ、ちょっと…!」



































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