第3話 涙 〜 Tears 〜
「はあぁぁ〜…」
大きい溜め息を吐く私。
お風呂上がり、私は、鏡とにらめっこ。
バスタオルを体にまいて、ボンヤリ中。
「結婚したら、こんなに変わっちゃうのかな?普通、今なら、まだ、ラブラブで夫婦関係は付き物なのに…つーか…私…欲求不満?普通じゃないのかな?何か毎日したいみたいじゃん!」
「………………」
「…でも…結婚してからキスも関係もない私達って…紙面上だけの結婚だよね?ていうか…仮面夫婦?」
「………………」
次の瞬間、脱衣場の扉が開いた。
「うわっ!ビックリした!夏蓮さんっ!」
「昌輝君」
「何してんだよ!?洋服着ろよ!」
「色気ないから良いんじゃない?」
「夏蓮さん、そういう考え辞めた方が…」
「だって…!広志と夫婦関係ないから色気ないんでしょう?昌輝君から見ても色気ないんだろうし」
「………………」
「…私…広志の奥さんなのに…まるで…お手伝いさんみたい…」
私は洋服を持って部屋に行く。
「夏蓮っ!その格好、弟がいるんだぞ!」
部屋に戻ると、広志が私に言った。
「弟なら脱衣場で会ったよ」
「会ったよって…お前は、俺の奥さんなんだぞ!」
「色気ないから良いんじゃない?広志も私に一切触れようとしないから色気感じないんでしょう?」
「夏蓮っ!」
「じゃあ抱いてよっ!」
「………………」
「広志にとって私は何?私の事、本当に好きなの?こんな事だったら結婚しなきゃ良かったよ…結婚した途端、私に一切、触れようとしない…私は、置き物じゃないんだよ!お手伝いさんでもないの!妻なのに…」
私は部屋を飛び出した脱衣場に行く。
「うわっ!…夏蓮…さん?まだ洋服来てねーの?いい加減……」
私はズルズルと、ゆっくり下に崩れ落ちていく。
「…っく…」
「…夏蓮…さん…?」
「………………」
「…夏蓮さん…洋服着な…事情はどうであれ俺も男だし、そんな格好でウロつかれっと目のやり場ねーし」
「…私…広志の…何なんだろうね…」
「えっ…?…夏蓮さん…」
昌輝君は、腰をおろすと、私の洋服を手に取る。
頭を入れ、右手、左手と腕を通していく。
上半身に洋服を着せるとバスタオルを外すと足の上にのせる。
「後は、自分で着な。俺は、あんたのお手伝いさんじゃねーし」
そう言うと私の頭をポンポンとすると脱衣場を後に出て行った。
ある日の事。
「なあ、兄貴。兄貴にとって結婚って何?」
「えっ?」
「夫婦って?」
「何だよ、急に」
「別に。気になったから」
「結婚はスタートだろう?夫婦になる第一歩って所かな?」
「スタート?じゃあ…夫婦って?」
「夫婦は…協力とか分かち合っていく関係?まあ、二人でいれば、一人の男と一人の女だったり夫だったり妻だったり愛があるからこそ、子供が出来るんだろう?そして家族が出来るんだろう?」
「二人共ーー、ご飯よーー。昌輝、食べるなら来なさい」
「食べるならって…感じ悪いな!」
リビングに行くと
「あれ?母さん、夏蓮は?」
「仕事先の先輩と朝から出かけて来るって外出中よ。聞いてない?」
「俺、寝てたからな〜。あっ!母さん、俺、明日からまた出張だから」
「そうなの?」
「ああ」
「夏蓮さん、男と一緒だったりして」
「それはないだろう?」
「へえ〜、信じてんだ」
「夫婦だからな」
「ふ〜ん」
「夏蓮ちゃんも子供がいれば少しは良いんだろうけど…。広志、子供の予定はないの?」
「まだアイツ、21だし遊びたい盛りだろう?俺もまだ子供は良いし」
「そう?」
「それに、まだ結婚して数ヶ月だし、二人の時間必要だし」
「だけど、早い方が良いわよ?」
「まあ、時期がきたら」
「そう?」
「ああ」
《二人の時間…ねぇ…》
《夫婦関係ねぇのに、二人の時間なんて綺麗事かよ》
《…夏蓮さん…幸せそうじゃねーんだけど》
《この間、泣いてたし…》
まだ、この時は、知らなかったし
気付きもしなかった……
兄貴と彼女と俺の間や関係が波乱になるなんて―――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます