第2話 不安

ある日の夜、みんなが寝静まり、お風呂に入った後、バスタオルで、体を包み、脱衣場でぼんやりしていた。




そこへ――――



脱衣場の扉が開く。



「うわっ!ビックリした!何してんだよ!」


「えっ…?あっ!ごめん!もしかして昌輝君、お風呂済ませてなかった?」


「いや、済ませてるけど。今から着替えるならどうぞ!出てくし!」


「あ、大丈夫。私が、着替え持って部屋に移動するから」


「いやいや、ここで着替えた方が…あっ!それとも、今からお楽しみの時間?」


「違います!」

「だったら、着替えれば…」

「…ねえ…、昌輝君、私、色気ないかな?」

「は?いきなり何?俺に聞くなよ!」


「いや…高校生から見ても私、色気ないのかな?って…」


「それ、誘惑でもしてんの?つーかさ、結婚して夫婦なんだから関係なくね?愛し合ってんだろうし」


「…そうだね…本来なら…そうだね…」


「えっ…?」


「…ごめん…」




私は着替えを持って部屋に行った。



「……………」




ある日の夜。




「広志、私の事……好き?」

「えっ?急にどうしたんだ?好きだよ」

「…じゃあ…色気がないのかな…?」

「色気?夏蓮、どうしたんだ?」



「結婚してから、全然私に触れようとしないからだよ!」


「それは、お前が大事だから」


「…大事って…結婚して大事って…結婚する前は関係持ってくれてたのに…私達、結婚して一切、関係ないじゃん!普通、大事だから手を出せないって…恋愛と結婚は違うんだよ!」




ガシッと広志の両腕を摑んだ。



「私は広志の、お手伝いさんじゃないんだよ!広志の奥さんなんだよ!それなのに……ねえっ!広志っ!」



ドンッ


私を押し飛ばす。




「きゃあっ!」




ドサッと勢いで床に転倒した。


その拍子に、そのまま押さえ付けられ私の上に股がった。



ドクン…


私を上から見る広志の目が今まで見た事のない表情に冷たく感じ怖いと思った。



「別にさ夫婦関係なくても良いじゃん!お前は俺の奥さんなんだから。俺、朝早いし疲れてるんだよ。それ分かってよ」


「…でも…」


「でも、何?別に夫婦関係ないからどうなるわけでもないんだから」




そう言うと私から降りる。




「じゃあ、おやすみ」



そう言うと、自分のベッドに横になった。




「…………………」




私はリビングに行く。


結婚して夫婦関係が、一切ない!


そんな夫婦ある?


結婚する前は関係があったのに……


私は疑問しか残らない。


私は時々、不安になる。


夫婦関係がないのに


どうして平気なのだろう?と―――――



旦那にとって結婚とは?


夫婦とは?


何なのだろうと――――




「夏蓮さん?」



ビクッ



名前を呼ばれ驚く視線の先には、昌輝君の姿。




「…昌輝君…」

「眠れねーの?」

「…うん…」

「遅くまで起きていると良くないんじゃね?」

「別に色気も何もないから関係ないよ」



「………………」



「兄貴と喧嘩でもしたの?」

「喧嘩?…まあ…似たような事は…」

「ふーん」

「まあ、昌輝君には関係ないから早く寝なよ」


「なあ…あんた…今、幸せ?」

「えっ…?」




私の向かい側の席に腰をおろす昌輝君。



「…うん…幸せだよ…」



「………………」



「本当に?」

「本当だよ」

「俺には、そう見えない」


「昌輝君…や、やだなー。仕事と家事両立して疲れているからじゃないかな?」


「だったら早く眠れるだろう?」



「………………」



「考え事してたら眠れないから。何か悩んでいるんじゃねーの?」


「大丈夫だよ。大丈夫だから」




「………………」



「そっ!」




昌輝君は、席を立ち、私の傍に来ると頭をポンとした。



ドキン…



「余り悩むな!」


「…うん…」


「うんって…やっぱり悩み抱えてんじゃん!」

「違っ……!」



クスクス笑う昌輝君は、私をリビングに残しリビングを後に去った。








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