第8話

 数日後、部屋でゴロゴロしていたらメッセージが脳内に流れる。

 相手はバハであった。

 内容はこうだ。


『クラスに合った人以外も沢山ボス部屋に来ます』


 ま、そうだよな。

 何となく分かっていた。

 初めて管理者資格を得た人がやりがちな、言わゆる初心者ムーブだ。

 強いモンスターを1箇所に集めて相手を倒す脳筋戦法。


 だが、それだと意味が無い。

 寧ろ単体の時よりも弱くなる可能性が高い。

 今回起こっているのはそう言う事だろう。


 理由は単純、数が居たら広範囲で高威力の魔法は使えないし、大きく武器も振り回せない。

 きちんと、その一人一人のモンスターの長所に合わせた場所、そしてチームに訓練が必要だ。

 適材適所を見極めて配置を行うのは管理者の役目。


 俺の場合は俺よりも参謀役の人の方が優秀なので任せている。

 賢いモンスターは時間を掛けて教養を身につけないといけない。

 モンスターエナジーだけで超賢いモンスターなんて出来ない。

 AIだってそうだ。いくら進歩しようがゆっくりと手間を掛けないといけない。


 取り敢えず、静観しよう。

 あっちのサボーターがその事を注意してくれる筈だ。

 サポーターの意見は基本的に聞いた方が良い。


 さて、その事をバハに伝えてから再びゴロゴロする。

 好きなボカ〇曲を流しながらゴロゴロ昼寝するって贅沢だ。

 我々学生は夏休みと言う長期休みを頂き、一学期を終えようとしている。

 しかし、社会人である我が両親はそうはいかない。

 社会人足る者、国の為世の為にせっせこ暑い中働くのだ。


「兄貴〜」


「なんだ〜」


「なんか甘百合雪姫って人が来てるよ〜兄貴呼んでる〜」


 俺は自分でも驚く程の超スピードを出して玄関に出た。

 ドアを開けて見ると、確かに甘百合雪姫その人が居た。

 夏の私服だろうか? 白いワンピース。

 雪姫と言う天使を引き立てる良い服だ。

 つまり、めっちゃ似合っている。


「ど、どうしたの?」


 あれ? てかなんで家知ってんの?


「あの、私の家に来てくださいませんか?」

「喜んで」


 内容なんて後で聞こう。

 雪姫が誘ってくれたのなら、俺に、いやこの世の全ての男に断る理由など存在しては成らない!

 あ、でも彼女持ちや奥さんがいる場会は要相談だね。


 甘百合雪姫の家は屋敷だった。

 両親が金持ちなのは知っているけど、実際にこんな屋敷に住んでいると、不便ではないだろうか?

 あ、俺が言える立場か怪しな。ダンジョンあるし。


「実はですね」


「はい」


 客室か、そのようなモノに通された。

 柔らかいソファーに深く座り、出された紅茶を啜る。

 ここら辺のマナーはマナーに厳しい仲間に何度もやり直され、覚えた。

 管理者足る者、マナーはしっかりして欲しいのか、誰も止めなかった。

 対面には雪姫が居る。


「貴方に、折り入って話があります」


「なんでもフェルカムです」


「ありがとうございます。では、私の仲間に成ってくれませんか!」


「勿論さぁ⋯⋯え、甘百合さんってアドベンチャーラーなの?」


「はい。私はあの時のダンジョン内であそこまで知性の高いモンスターを召喚していた貴方に興味が湧きました。きっと、貴方はとても凄い強い仲間になると思います。私⋯⋯我々の仲間に成ってはくれませんか?」


「我々?」


「はい。大手ギルドの強者をちょくちょく集めています。当然、こっちはサブにしていますが」


「目標は、なんですか?」


「それはですね。17年前に唐突に出現して今まで1度も最後まで攻略された事の無い世界最高難易度と言わる、難攻不落迷宮、SSSクラスダンジョンの攻略です」


 ⋯⋯俺の、ダンジョン、だよな?

 それ以外にSSSクラスまで上がった管理者居ないし。

 しかし、自分で自分のダンジョンを攻略、及び仲間と戦うなんて⋯⋯出来ないよ。


「ダメ、ですか?」


 少しうるうるとした瞳を向けて来る。

 流石にそれは反則だろ。

 しかし、俺にはそこに仲間が居るのだ。

 当然、答えは!


「全力でやります!」


 俺に、雪姫のお願いを断る程の力は無かった。


「⋯⋯ッ! ありがとうございます!」


 パッと明るくなる雪姫の顔を見たら、罪悪感も消えた。

 雪姫が仲間を紹介するとの事で、屋敷の地下にある訓練場に案内された。

 SFチックな作りに少し興奮するが、今の世界だと普通に出来ると思い冷めた。

 SF作品が既にSFじゃないんよ。マジで。

 寧ろ日常の方がSFになっているよ。


 案内された場所には整列している人達が居た。

 前もって通達されていたのだろう。


「右から順に説明しますね」


 こいつの顔を見たら女は止まり黙って写真を取れ。

 己の顔と実力を信じて疑わないナルシスト、大規模ギルド『フェンリル』のギルドマスター、大剣をメイン武器として扱う金髪青年。

 フェンである。イギリスが母国らしい。


 同じく『フェンリル』の副ギルドマスター。

 己の美貌と体と実力と知能と人を見る目は疑わない、疑いたくない青髪の女性。

 フェンの行動に毎回頭を痛めている苦労キャラ。

 メイン武器はメイスと言うまさかの脳筋タイプ。

 見た目に騙されるな、相手はゴリラだ。

 その名もアイス。食べるアイスでは無い、名前のアイスだ。

 氷魔法が得意らしい。得意料理は肉じゃがらしい。

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