第7話

 きちんとバレないような変装をした後に、傘下の管理者の下を訪れた。


「や。お邪魔すよ」


「は、はい」


 中に入り、部屋に案内される。

 少し散らかっていた。


「あの、姿を見せてくれませんか? 同級生なんだし!」


「断る。それよりここにダンジョンを開設して」


「え」


「いいから」


「はい」


 ダンジョンを開いて貰い、中に入る。

 俺が持って来て、体内で溜めている状態のダンジョンエナジーを使って、ゲートを開く。

 そこから、大きな黒龍が姿を現す。


「今日から当面の間、こいつをここにおいておく」


「⋯⋯」


 黒龍の大きさや見た目の威圧感で黙り込む管理者。

 今更だが、管理者って言うのもあれだな。


「名前、なんて言うの?」


「え、同級生で俺の名前知らないんっすか」


「逆に聞くけど、なんで知られていると当たり前に思ってんの?」


「そりゃあ、アドベンチャーラーだし」


「あのさ。アドベンチャーラーは能力者なら誰でも成れるんだよ? なんでいちいち覚えてないといけない訳? それにさ、珍しくも何ともないアドベンチャーラーのしかもペーペーで『ここなら俺の事を皆知ってる』とかイキるにも程々にしろ。で、名前は?」


「山吹、山吹太輔です」


「そうか。山吹のサポーターは?」


「私です」


「今からエナジーダンジョンに注ぐから」


「はい」


 山吹のサポーターが近くに来て、手を握る。

 俺はサポーターに向かって、俺のダンジョンのゲートから取り出したエナジーをサポーターに流す。

 すると、すぐにサポーターは手を離して、離れた場所に移動する。

 四つん這いになり口から虹色の物体を放つ。

 ドロドロとして、見ているだけで気持ち悪さと食欲が失せる感覚のする、アレである。


「す、すみません。エナジーがあまりにも濃厚だったもので、酔いました」


「あー、そんな事あるのね。うん。1回ダンジョンに流してから流すは」


「ありがとうございます」


 俺とサポーターはダンジョンの床に手を置く。

 ダンジョンの床にエナジーを流して、少し和らげて、サポーターへと流す。

 サポーターはそれを使ってダンジョンの強化と拡大をして行く。


「最大でどのくらいに致しましょう」


「それはな⋯⋯」


「おい待てよ! いくらボスと言っても、ここの主は俺だぞ! 俺が決める」


「良いよ」


「そうだな⋯⋯100階だ!」


「却下だ」


「何故だ!」


「大きくし過ぎても管理出来ない」


「そんなんモンスターやサポーターの役目だろ?」


「違う。サポーターはあくまで管理者としての権能を使う時のサポーターだ。迷宮管理は管理者の役目。清掃その他諸々、そんな脳筋理論ではいずれ潰れるぞ」


「あぁもう! 勝手にしろ!」


「じゃ、最初だし10階で行こう。隠し部屋などの用意はそっちでやって」


「畏まりました」


 その工程を時間を掛けてダンジョンを広げて行った。

 次は普通に山吹の仕事だ。

 俺がエナジーを与えて、それでモンスターや報酬のアイテムを作り出す。


「しっかり、難易度と報酬が似合うようにしろよ」


 理由は単純、相手のモチベだ。

 苦労して敵を倒す達成感、そしてそれで得られる報酬で満足感を得る。

 そしてまたこのダンジョンに来る事になる。

 もしも難易度だけが高いのに、報酬がゴミだったら誰も来ない。

 相手は人間が作ったと分かっているのだから。


 言うなれば我々管理者はゲームマスター、運営。

 挑戦者はそのゲームをプレイするプレイヤーだ。

 バトルでは死なない程度をきちんと行う必要がある。

 しかし、手加減し過ぎてもつまらない。


 難しいモノだな。

 そこら辺の調整を既にする必要の無くなった俺。

 だから上手い具合に出来るか心配だな。


 数時間行い、ある程度の形に成った所で昼となった。

 俺は自分のダンジョンに帰り、そこで食べる。

 料理人が用意した料理はどれも美味いが、やはり家族と食べるのが1番美味いと思う。

 だって今、俺一人で大きな机でメイド達に囲まれながら食べてるし。

 気が休まらん。


 再び戻り、外に出る。

 次にやる事はちょっとした犯罪行為だ。

 ま、噂では国公認らしいけど。


 山吹は問題を起こした。

 国に管理者と言えば何かの厄介事に合う。

 そして、紐ずる式にもう1人の管理者の存在が浮上する可能性がある。

 なので、目立たせる訳にはいかない。

 傘下は絶対に命令を聞く訳の奴隷と主人の関係じゃない。


 ただ、相手は少し従順なだけだ。

 流石に無理を通せば相手は反抗して来る。


 パソコンを立ち上げてとあるサイトを開く。


「ほ、ホームダンジョンサービス?」


「そう。家の中にダンジョンを開設してアイテムを自ら売って生計を立てる人も普通に居る。だけど、いずれ限界が来るというか、育たないからいずれ詰む。そこで出来上がったのがコレ、ホームダンジョンサービス。ここに自分のダンジョンを掲載する。そのダンジョンを攻略する人からメッセージが来る。料金を貰い、ダンジョンを楽しませる」


 そう言うサービスサイトである。

 相手は確実にしもアドベンチャーラーでは無くても良い。

 相手はある程度の満足感と達成感と報酬が得られる。

 こっちは攻略者と言うエナジー稼ぎプラス金も稼げる。

 ウィンウィンの関係に成るのだ。


 管理ダンジョンではアイテムと安全を得る。

 無人ダンジョンでは経験やアビリティ強化が出来る。


 管理ダンジョンの活性化は管理者が意図的にやる。理由としてはモンスターを外に出す為。

 暴れたらアドベンチャーラーが倒し、ダンジョンも攻略されて、段々と衰弱させる。

 もう1つは暴走である。

 ダンジョンにはダンジョンが自らを維持する魔力が流れている。

 その扱い等が乱れ、暴走し、勝手に活性化する。

 その時はゲートの色が赤くなる。

 そして、精神力の弱いモンスターは暴走して、勝手に外に出て暴れる。


 その乱れのチェックもサポーターを通して管理者の役目。

 そして、エナジーを使って治すのだ。


 と、今はそれはどうでも良い。

 重要なのはここにここのダンジョンを載せると言う事だ。

 このサイトは絶対遵守のルールがいくつか存在する。

 その1つに絶対秘匿がある。


 ま、損が基本無いので破る奴は殆ど居ないだろう。

 ササッと登録する。

 山吹のダンジョンのクラスは多分⋯⋯Bくらいかな?

 一気に強くしても山吹の体が持たん。

 ダンジョンと管理者は言わば一心同体だ。

 片方が膨張し過ぎると、反対がそれに耐えれなくて下手したら死ぬ。


「さて、後は数日間の間に誰かからメールが来るだろ。後はそれを丁寧な対応で持て成して、必要な金を受け取って、ダンジョンに入れさせる。住所とか明かすから気をつけろよ。誰か1人くらいは護衛に家に潜ませておくのも手だ。さて、当面はこれを続けろよ」


「ああ。なんか、詳しいな」


「こう言う情報収集を担当させている奴が居るんだよ。じゃ、帰るは」


 今日は色々と疲れた!

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