第4話 受付嬢にも、ままならない

「あ、お姉さん!コッチコッチ!」

女子大生ペアが店の入口に立つ協会受付嬢を見つけてテーブルに呼ぶ。


「遅くなってごめんなさい。ちょっとゴタゴタがありまして……」


そう言って俺の方をさりげなく見るが、俺もさりげなく目をそらす。


「う〜ん、協会の職員も大変なんですねぇ」


おっとりタイプの綾香ちゃんは、腕を組みながら将来自分が目指す職業の大変さの一片を見たといった感じである。

腕を組むと強調される胸をビールを飲みながら堪能する我々男子チーム。

さらにニットなのがポイント高い。ニット巨乳は正義である。ノーブラだったら尚良し!

本当、いいモノ持っていらっしゃる。


「(ゴクリ)……肉食べればああなる?」

ボソリと呟いた肉食系不思議女子高生もアレに釘付けのようだが、人間、無い物ねだりは良くない。


「人間には二種類の人間がいる、持つ者と持たざる者だ」


「クッ!」


「先輩、お姉さんも来てくれた事だし、もう一回乾杯するっす!」

いい感じで酔ってるはずの宮田に助けられた。

このての問題にはあまり関わってはいけない。


「それでは、我々同期と、美人受付嬢の出会いに!」

「「「乾杯!!」」」


宴もたけなわ、それぞれに将来の夢や希望を語りあう同期達。


「それでぇー、お姉さ〜ん。今日は何がぁ、あったんれすかぁ?」

覚えたての酒に飲まれつつあるウブ女子ブンちゃんがお姉さんに絡む。


「コラコラ、ブンちゃん、仕事の話しなんか聞くもんじゃないよ」


「だぁれが!ブンちゃんて呼んでいいとぉ、言ったぁ!」

据わった目で俺を指差してくるブンちゃん、マジうぜぇ。


「まぁ、端的に言うと暴力事件です。探索者同士の喧嘩なんて、まぁ、良くある話しなんですけどね。今回のは皆さんと同じ受講者が病院送りになってしまったんです。三人も同じに」

そう言って俺の方を見るお姉さん。


「受講者が探索者相手に調子こいてやられたとか?」

「あぁ、ありそうっすねぇ」

「まぁ、協会の推測では、"そうかもしれない"といった感じになってますが、何せ暴力沙汰はよくある事なので、協会はあまり調査しないでしょうね」


ちょっとお姉さんの目線が冷たい気がするが気のせいだろう。


「それじゃあ同期が減ってしまうかもしれないな。本当に残念だ」


渾身の名演技を披露してみたがダメそうだ。

お姉さんは、今にも舌打ちしそうな口と、眉間と額に皺を寄せて凄い形相なのだ。

可愛い顔が見事に台無しである。


これは、バレてるかも知れない。


「そうだぁ!鰻犬蒲太郎さんは元軍人だったんですよねぇ?」

顔が台無しのまんまのお姉さんが尋問官に見えてきた。


「そ、そうですね。ちょこっとね。後方支援の部隊でしたが。それが何か?」

ここまで来たら、シラを切り通す所存。


「ヘェ〜、後方支援部隊ですかぁ。そういった部隊でも銃は扱うんですよね?」


「は?じ、銃ですか?勿論、射撃訓練等はやってましたよ?」

「銃砲取扱い許可書の申請を出してませんよね?」


ダンジョンに持ち込む武器でも銃関係は別途免許が必要になる。

合宿中に取れる免許ではあるが、費用も別途である為、俺は受けない。

そもそも、丙種免許で取るヤツなんか早々おらんだろう。


「5万円です」

「は?」

「銃砲取扱い許可書の講習と試験代です」

「え?」

「受けますよね?明日までに申請出して下さい」


もうコレ、脅しと言っても過言ではない。

出さないとバラすぞ的な。

キッチリ5万ってところが恐ろしい。


「講習受けますか?それとも、「勿論、受けます」そう!良かった!」

何なのかは分からないが聞かない方がいい事も世の中には五万とある。

なんちゃって。


お姉さんは悪魔の形相から天使の微笑みへと表情を変えてくれた。

5万は痛いが、昼間の奴らから頂いた講習代が消えたと思えば……

それに、お姉さんの笑顔はプライスレス!

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