Lv2.拉致監禁? じじいとの邂逅!


 前回までのあらすじを語るぜ!

 気づけばまさかのスライム転生! そして変なじじいに捕まり拉致監禁状態である。

 囚われのスライム俺! 悪いスライムじゃないのに酷いじじいですわ。



「じじい言うな成金饅頭」


 成金饅頭とは俺の事――ぐぼおおお!? ナンダクォレハ!?

 痛い! 触れられてないのに全身が捻れれれれれ――。


 ぺいっと解放された、ほんまなんやねん。


「ワシはシド迷宮の賢者、シド・アクィエルである!」


 ドン! って勢いでじじいが胸を張った。なんか濃いよ……いきなりキャラクターが濃い、あと暑苦しい。

 というかここって迷宮なんですか。マジモンのダンジョンじゃねーか、このじいさん倒したらクリア扱いなの?

 イテッ、また捻れた。なんや薄々気づいてたけど心読まれてますがな。


「じじい言うな」



■賢者シド



 じじい言うの辞めた。急展開過ぎて置き去りにされてたが冷静になってみるとこのじいさんが初めて出会う人間じゃん。


 第一村人遭遇、なんちゃって。


「ワシは賢者じゃ」


 ジョブに拘るじいさんですな。ちなみにじいさん扱いはセーフらしい。じじいもじいさんも変わりなんて無いだろうにぃ!? 痛たたたたたっ!!


 謎の抓りがヤバすぎる。


 ごめんなさい。俺は謝った。


「素直に改められる所は美点じゃな」


 許してもらったぞ、やったぁ。

 落ち着いた所で聞きたいことがあるんですが、そもそも何故ワタクシは誘拐されたので?


「分からんか?」


 分かりません。


「じゃろうな」


 おい何故確認したんだ今。

 賢者のじいさんは一人納得した様子でふむふむと頷きながら俺を見てくる。

 あんまりジロジロ見られると恥ずかしーからやめてくれい。結局連れてこられた理由も説明されてないですよね!?


「いや何、滅多に人も居らん最下層に部外者が紛れ込んでおったからな。覗いてみれば強い自我もある、能力値も異様じゃったので拾っただけよ」


 ほう、異様ですか。



■エリート0歳児



 じいさん曰く。


「種族基盤を超越した潜在能力がある。もはや別種」

「特に賦活性能が異常、更本来のその種族かが持ちえない妙な異能まで持っている」

「闘神の欠片持ちか疑った、獣王因子も関係ない。異能の由来がマジで謎」

「身体の色が黄金、見るだけで痛い成金色」


 との事だった。

 成金色とは一体……。

 全く身に覚えのない言葉ばかりでございます。特に! 闘神の欠片と獣王因子って何よそれ。


「知らぬのなら下手に探らない方がよいぞ。無知で助かる命もあるからの」


 滅茶苦茶物騒な返事が返ってきた。

 聞いたら死ぬの? 知らない方がいいならさあ! 気になるような引き方やめてくださいよ!

 頭の中はその二つの単語で一杯だった。闘神の欠片獣王因子闘神の欠片獣王因子闘神の闘神の闘神の……って、あ、俺頭ないじゃん。スライムだし。


 冷静になったんで他の説明詳しくお願いできます?


「冷静になる要素が今の成り行きのなかにあったかの?」


 とぼけるのいいんで、ちゃちゃっとお願いしまーす。


「気分の落差が激しいやつじゃ……ついていけん。お主が一つずつ質問せい」


 よっしゃぁ! ガンガン行くぜ!

 潜在能力についてお願いします。分かりやすく噛み砕いて説明頼みますよ!


「ふむ。言った通りなんじゃがな、通常種と比べてお主の"底"は無尽蔵じゃ。基礎の段階で造りが違っておる、変異種だからじゃろう。本来の枠組みを外れている故に、成長に無限の可能性を秘めておるのだ」


 ???

 ……よく分かりません。


「次の質問はあるか?」


 スルーされた!? いや、ウーン。まあええわ!! じゃ次は異能についてお願いします!

 できるだけ! 噛み砕いて! 馬鹿な俺にも分かりやすく頼んます!!


「異能か。それなら単純じゃ、魔素放出型のアビリティを持っておるだけじゃよ。ワシも初めて見る能力であるし、知らん。恐らく唯一無二ユニークかもしれんな」


 だからわかんねぇよおおおおおお!! 放出型って何! 魔素って!? アビリティもユニークも具体的にお願いしますよ賢者さまああああっ!


「仕方の無いやつじゃのう」


 賢者の癖に話が難解なんですよ、いや賢者だから?

 一人コントを始めようとしてたら何やらじいさんが杖を持ち出してきた。わ〜お立派。まさに魔法使い! って感じですねー。


 それで杖を出してどうするので?


「こうするのじゃ――ふんヌリァアアアアッッツツツ!!」


 あの、待って待ってそれを振りかぶってどうすぅううううう!!!!



■全てを理解したスライム



 三途の川と宇宙が見えた。


「分かったか?」


 はい、分かりました……。

 叩きつけられた杖は識啓杖アクィエルといってこの世界ではオーバーテクノロジー扱いの超が付く秘宝である。秘宝の割に使い方がぞんざいだったのは置いといて。

 杖の効果の一部に接触によって知恵を授ける賢者的なパゥワーがあって、理解力の無いスライムと説明力の無いじいさんの間で情報共有するにはうってつけのアイテムというわけだァ!


 つまり説明が面倒くさくなったじいさんは杖でお手軽知識のインストールをしたわけだ! ちなみにこれ、適性が無い奴に使うと脳が沸騰して死ぬらしい。


 完全にやべーやつじゃねーかよ。三途の川見えてましたがな。オレ、スライムデ、ヨカッタ。

 過ぎ去った危機にプルプル震えていると杖を戻して帰ってきたじいさんが話しかけて来た。


「それでお主何時までここに居るつもりじゃ」


 誘拐した本人が何か言ってますよ?


「誘拐いうな……物珍しいから拾ったが正直もう飽きたしの。邪魔になるからどっか行ってくれんか」


 飽きたから捨てるって?! 酷い!

 ぽよぽよジャンプで遺憾の意を表明してみた。待遇の改善求む! 気分は黄金のゴムボールだ。頷くまでいつまでもどこまでも跳ねるぞ!


 待遇の改善をぉおおお!


「無理じゃ無理。ここで発生したモンならまだしも、お主のような転生体だと迷宮内の不干渉の制約も掛けられん」


 制約ってなんですかー?

 あと転生者ってバレてますやん。隠すつもり無かったけどね、ほんと何者なのこのじいさんさぁ〜。


「最下層を荒らされても迷惑じゃしな、上層手前まで飛ばしてやろうぞ」


 ダメだスルースキルが高すぎる。全く聞き届けて貰えないのであった。もう面倒だからって話聞かずに進めようとしてません??


「では達者でな」


 話聞けやじじい。


「じじい言うなッ!」


 ブチ切れたじいさんがむにゃむにゃ言いながら手のひらを向けてくる。何やってるんだ、ってぐるぐるしてる!? ほんとにどうなってんの?


 景色が歪んで捻れて波立つ。俺の意識もフワッとしてきましたね、フワッと。

 上層に送るとか言ってたけどこういうスピリチュアル的な展開になるとは思ってもみなかった。じいさんが消える、景色も変わる。


 気を取り戻したら再び洞窟の中に俺は居た。


 What?


 

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