黄金スライム

天津麻羅

Lv1.転生!? 俺はスライム!



 目が覚めたらスライムになってました。


 何を言ってるのか分からねー人もいるかもしれないが某Web小説サイトの常連さん達は秒で理解出来るだろうしガッツリ割愛させてもらうぜー!


 ……。


 冗談は置いといて、ほんと脈絡もなく気づいたらスライムだった。ビビるわマジで。

 それに文句を言いたい気持ちもある。

 どうせならよ? もっとこう、インパクトのあるファンタジー生物にしてくれちゃっていいワケよ? ドラゴンとかなら男の子のハートをがっちり掴めるっしょ。掴んでどーすんだって話ですが。

 最低限人間系の生き物なら納得したというのに……。


 なんでスライムやねん。


 チェンジ! チェンジを要求するゥううっ!!


 一匹虚しくぽよぽよ跳ねていた。一人デモだ。この切実な思いが届くまで俺は辞めないぜ!!




 飽きた。




 まぁね? 辞めるでしょ、フツー。そもそも抗議を受け取る相手が居ないっす。この身体まず喋れないし、跳ねてるだけで凄く地味ですよ。


 諦めて永住する事にした。ちなみにマイホームは光る苔が生えた巨大洞窟です。全部俺の物よ! ローンも無いし最高だ。


 なんて、本音はボッチで辛い。辛いわ、自分以外の生き物とかいないので? 永遠に放置プレイは流石に拷問ですよ。

 人肌の恋しいスライムであった。



■暇



 ヒカリゴケ(俺命名)をモシャリながら寛ぐ俺に今世最大の危機が迫っております。



 ヒマだッッッツ!



 この洞窟は超がつくレベルで退屈だった。ヒカリゴケしかねー。最初は洞窟の中なんて滅多に見ないから興奮はしたよ? 少しね。


 でも何事にも限度があるってもんです。特に飽きやすい性格だったから数分で見慣れた。時間感覚無いからわからんけど。

 ただの光る苔が生えた洞窟だ。ほんとに何も無い。


 出来ることはひたすらヒカリゴケをモシャるのみ。


 苔食ってんのはスルーしてもらってOKです。退屈に殺されないためには、この過酷な環境に適応するしか無かったのだ……。

 味も匂いも分からんのですが暇なので食ってます。


 岩全体に生えた苔が俺のHPバー、大事な生命線だ。これ食い尽くしたら本当にやることなくなって死んじゃうよ?


 やばいなー。


 頑張って節約しよう。



■暴食



 最後のヒカリゴケを食い尽くした。あれだけあった群生地がパーだ。

結局後先考えずに食っちゃった俺の頭もパッパラパーでござるってか。

 なんてことだ。洞窟内唯一の光源が消えた。


 まあ見えるんですけどね。スライムの身体、目が無いのにどうなってんだか。


 しっかしどうしましょ。他に食べれそうなものないし。


 移動しますか!


 探検することになった。


 洞窟は一本道。前と後ろどっちに行くか迷ったけどこの饅頭スタイルに前も後ろも無いですね。

 ヒカリゴケで食あたりしなかった自分のリアルラックを信じて適当に進むことにした。ダンジョン制覇だぜ〜。


 スススーっと移動する。スライムってどんな移動方法なのかわかんなかったんだけど、ナメクジみたいに這うんじゃなくて滑ってんだよねこれ。


 滑る。滑る。おぉおおお止まらんぞおおおおおおお!!!


 滅茶スピードでるわこれ。移動上に生き物いたら轢き殺しちゃうんじゃ? って勢いよ、今日から俺はトラックスライムだ。


 なんて、調子に乗ってたのがいけなかったのか。



■ラスダン最下層



 ――pyaaaaaaaa!!!!


 吹き荒ぶ旋風、顎から漏れ出す業火。

 分厚い鱗に覆われた六本腕には余すことなく剣、斧、槌を握り、一目で「あ。やべーわ」と分かってしまう禍々しいオーラを醸し出している。


どういう状況かって?


 殺意マシマシな六本腕竜人にすてみタックルをしてしまったのだ、まる。


 まるじゃねーッ!!!!


 初エンカウントが物騒過ぎるだろ!? スライムからの落差が酷い! 明らかにボスっぽいやつじゃんよぉぉおお!


「ふしゅるるるるッ!」


 怒ってる!?


 俺、モンスター。貴方もモンスター。モンスター同士仲良くしたい……そんな幻想はどっかの馬鹿が腹にタックルぶちかまして粉々になりました。どうも馬鹿です。


 急に出てくるから止まれなかったねん、許してくれよう。


 無理でした。


 竜人さんが武器を振り回しながら迫ってくる。剣から炎が上がってるんですが、魔剣ってやつかあ!? こんな所でファンタジーを味わいたくねー!


 あんなので切られたら燃える! 溶ける! 当然逃げ出した。


 ハイスピードエスケープ! ぐんぐん遠ざかる竜人のようななにか!


 ふふふ、こちとら速度には自信アリよ。くっそ強そうな竜人さんだったけど逃げ切れば俺の勝ちだもんね!


 フハハハハハッ!!!



 グイッ。



 えっ?


 急に止まったと思ったらまん丸ボディを掴まれていた。うっそ私遅すぎる……?


 竜人さんかとプルプル震えたが違った。じじいの手だ。


「面白いやつがおるのう」


 じじいの声だ。何も無い空間にぽっかりと穴が空いていて、そこから伸びた手に捕まってました。


 プルプル揺れながら引き込まれる。


 え?



 いやほんと……何コレ?




 


 




 

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