エッセイ2

 ここに丸いケーキがあります。あなたにペンを渡します。3分割してください。

 もしそう言われたら。

 あたしは迷わず12分割するだろう。縦横斜めなどと時計の文字盤のようにきっちり12分割。そのうえで4つ分を強めの太線で引き、3分割、というわけである。3×4で12ね。12÷4で3ね。3分割。あたしならこうやるな。絶対。

 でもさ、ケーキがぐちゃぐちゃじゃん? とか言わないでもらいたい。あたしはそういう人間なんだから。

 失格ではないから、赦してもらいたい。


 あたしはコーヒーメーカーが嫌いだ。

 コーヒーをよく飲むのだが、その際はいつもドリップ式のコーヒーの淹れ方をしている。そう。コーヒーメーカーで淹れるコーヒーは大嫌いである。

 ああああああああ。

 思い出しただけで気が狂いそう。ていうか狂っている。

 コーヒーメーカーで淹れた後コーヒーの垂れた液体が熱された面に滴ってじゅっと音を立てて蒸発してしまうのが大嫌いなのである。おわかりいただけるだろうか?

 耐えられない! 匂いじゃない。音だ。気持ちが悪い! 滴った! 蒸発した! 水なら赦せる。ただの水なら! でもそれコーヒーだから!!!! ああああああ!!!!

一滴でも雫が熱された面に落ちて蒸発して消えていく、あのときのじゅっという音が気持ちが悪くて不快なのだ。

コーヒーがコーヒーメーカーの熱された面に落ちてしまって液体が一滴でも蒸発してしまうのが、とてもじゃないけど耐えられないので、毎回ドリップで面倒くさいのに淹れている。そういう人間なんだ。

 しつこいようだが、あたしはコーヒーメーカーが大嫌いである。 

 

 

 あたしは昔から楽譜が読めなかった。ピアノを弾くのも苦手だった。歌を歌うことは大好きだった。あたしは常に思っていた。あたしは楽器を弾くのは向いていないようだ。だから、自分の喉が楽器だと思っていた。あたしが歌を歌えば、自分で楽器を奏でたことと一緒になる。そう思い込んでいた。楽譜を読めないから、ピアノを教えにくる先生の指の動きと音を記憶してそれを頭のなかで再現して弾いていた。次はこの曲を弾きましょう。先生は言った。そのときに先生は曲を弾きはじめる。あたしは全神経を集中させて、一生懸命先生の弾いた曲の音と指使いの動きを記憶する。そうやって楽譜を見ずにピアノを弾いていた。紆余曲折あってその事実が発覚した後母親はため息をついてピアノを辞めさせた。やる気がないと思われたようだった。あなたはピアノに向いていないようね。母親はがっかりしていた。歌うことは好きだったけど、あたしは倍音という奴だった。倍音。ここではあまり詳しくは書かないが、要するに、楽譜通りに歌えない特殊な才能がある、ある種の音痴の一種だった。倍音は大人になってもながいこと治らなかった。30歳を過ぎて数年経ってからようやく治したが本当に苦労した。音痴じゃないけど音痴。学校の音楽の先生は倍音のあたしに優しくしてくれた。音が外れるあたしを笑う生徒に、あの子は倍音ていうの、と言ってたしなめてくれた先生。本当にありがとう。今でも歌うことが大好きです。

 

 

 



 

 

 



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あたおかの日常脳内妄想。 寅田大愛(とらただいあ) @punyumayo

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