第35話 何故なら私は、生粋の腐女子なのだから!

「は?」




マリア様が、ヒュー団長に聖水を渡したと聞き、気になった私は、リーナにヒュー団長の動向を探るように頼んでいた。


ヒュー団長がどのように司書様に使うのか気になったというのもあるが、私はまだヒュー団長に対して少し不信感を抱いていた。


マリア様は大丈夫だと言っていたけど、日頃の私への態度はいただけない。


そんな奴が、司書様にあの媚薬を使うとなると、私も気が気ではなかった。




『お前が今飲んだものは、お前を淫らにする薬だ。』


『みだら……??』


『ははっ、もう効いてきたみたいだな。』


『ら、らめぇ……!!』




はっ!!!


いけない、いけない。


違う、そんなつもりでリーナに感じを頼んだわけじゃない。


私は本当に、本当に、司書様を心配しているだけ。


司書様が辱めを受けないように、ヒュー団長があの聖水を悪用しないように、私は最前の行動を取っているだけ。


そう、それだけなのだ!


それだけだったのに!




「ヒュー団長が聖水を飲んだ!?」




リーナに逐一報告できるようにと渡した通信ができる血晶石から、そう連絡が来たのは日が沈んですぐの事だった。


まさかの展開に言葉を失う。


リーナも、最初は見間違いだと思ったらしいのだが、フラフラしながら司書室に向かっているのを見て確信したらしい。




「待って……それじゃあ、司書様が危ないんじゃ……!!」


「あ、キスしてます。」




リーナの冷静な実況中継を聞き、気絶しそうになる。


BがLする展開は大好物だが、大好きな司書様に危険が及んでいるのだとしたら話は別だ。




「私も直ぐに行く……」


「いえ、恐らく大丈夫かと。」


「なんで分かるのよ。」


「ヴィル司書が……その……」


「何よ。」


「……凄く、興奮していらっしゃいます。」




え。




「え、待って、司書様ってヒュー団長のこと好きなの?」


「知りません。」


「それとも、誰にでも股を開くような人だから、ただただ性に奔放なだけ?」


「知りません。」




確かに、そんなことリーナが知る由もないだろう。


マリア様はこのこと知ってるのだろうか?


知っててヒュー団長に聖水を渡したのだろうか?




ヒュー団長のことを、信用してもいいのだろうか。




「どうしますか?聖女様が止めに入れとおっしゃるのでしたら、そう致しますが。」




マリア様は、ヒュー団長と幼なじみだと言っていた。


ヒュー団長が聖水を欲しがっていたのも、好きな子に振り向いて欲しいからだと。


あの聖水は他の誰でもない、マリア様が渡したものだ。


マリア様が、ヒュー団長なら信用できると思って渡したもの。


だったら、私にヒュー団長を止める権利は無い。


マリア様が信用しているのなら、私もそうしなければならない。


だって、あの聖水は、マリア様が作ったものだから。




「いや、もう帰ってきて大丈夫。」




司書様のことが本当に好きなのかどうかは、私には分からない。


だって、ヒュー団長のこと信用してないし。


でも、マリア様のことは信用してる。


だったら、私は見守るしかないよね。




何故なら私は、生粋の腐女子なのだから!

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