第21話 『魔女』
森の中を歩きながら、ロウエンは魔獣について話し始めた。
「魔獣が何で人を襲うか。人間の魔力を奪うためだ。だが、魔獣は人間の魔力を食うて生きとるわけじゃない。」
「!」
デューク団長とノアは、驚いた顔をした。
「魔獣はのぉ。そもそも操られとるんじゃ。」
「操られてる?誰に?」
「『魔女』と呼ばれる者。そいつが魔獣を操り、人間から魔力を奪っとる。」
『魔女』。
ロウエンがそう呼んでいた者は、約1000年もの間、魔獣を操り生き延びてきたらしい。
そもそも魔獣と呼ばれるものは、魔女が森に生息する動物たちに大量の魔力を注いだことで生まれた生物であり、本来魔獣というものは存在していなかったのだそうだ。
しかし、魔女は魔獣という生物を作り出し、魔獣同士を交配させ、また新たなる魔獣を生み出すという行為を繰り返していた。
そして、今に至るというわけだ。
たくさんの数の魔獣を操っているのだ。
魔女が持ってる魔力は相当なものなのだろう。
そして、それはたくさんの人間が犠牲になったことも意味していた。
そう考えると、とても悲しくなった。
「お前は操られてないのか。」
デューク団長はロウエンに問いかけた。
「わしもそこの子も、操られてはおらんよ。わしらはガロウ様のお父様に呪いを解いてもらったのでのぉ。」
ガロウ様と呼ばれる獣人の父親は、魔獣でありながら魔女に操られることなく生きていたそうだ。
「お父様は、「スフィア様に助けてもらった」と口癖のように言っておった。」
「!!」
スフィア様?
「え、誰?」
「なんじゃ、知らんのか。」
「先々代の聖女様だ。」
デューク団長にそう言われ、私はようやく思い出した。
そういえば、この世界のことを学んでいる時にその名前を聞いた気がする。
でも確かその聖女は……。
「スフィア様は、お父様を魔女の手から救うために、神聖な力をお使いになって亡くなったらしい。」
そうだ。
先々代の聖女様は、早くに命を落とされていると聞いた。
点と点がようやく繋がった。
スフィア様は魔女の存在を知り、Sランク魔獣を呪いから解放しようとした。
しかし、それと引き換えに命を落としてしまった。
魔女の呪いから開放された魔獣は、人間の女性と恋に落ちる。
そして生まれたのが。
「獣人であるガロウ様ということじゃ。」
なるほど。
だから、魔獣と人間は結ばれることが出来たのか。
「不思議なことに、魔女からの呪いが解けても、わしらは魔獣から襲われることは無い。しかし、ガロウ様は半分人間の血が入っておる故、魔獣から狙われることが多いのじゃ。だから、わしらがこうしてガロウ様に仕え、お守りしておるというわけじゃのぉ。」
「え、お父様の血を使っているわけじゃないの?」
「?……ああ、『魔除け』のことか。血、という訳ではないがのぉ、家の近くにはお父様のお墓があるぞい。」
なるほど、そうして父親は子供を守っているというわけか。
めちゃくちゃいい話じゃないか。
誰だ、父親の血を置いてるとか言った奴。
私はジロリとデューク団長を睨んだ。
「そろそろじゃぞい。」
ロウエンがそう言うと、森の中から一個の家が見えてきた。
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