第18話 なんで獣人は山奥に住んでいるの?

「それで?なんで「助けてもらった」になるんだ?」


「え、」


「膨大な魔力が暴走したんだ。魔獣の群れは倒したんだろ。」


「は、はい……。」




魔獣に襲われそうになったが、魔力が暴走したため、魔獣たちを倒すことが出来た。


だとすると、考えられるのは……。




「魔力の暴走が止まらなかった……?」




やっと鼻血が止まった私は、ノアにそう問いかけた。


ノアはこくんと小さく頷く。




「なるほどな、そういう事か。」




魔力の暴走が止まらないということは、魔力を放出し続けているということだ。


魔力が体内から無くなることは、この世界では死を意味する。


つまり、かなり危険な状態だったということだ。




「獣人さんはどうやってあなたの暴走を止めたの?」


「だ、抱きしめてくれました……。」




抱きしめた……。


魔力が暴走した状態のものに近づくのは危険だ。


それこそ、練習場に置いてあった魔法吸収装置などがあれば話は別だが。




「獣人さん、多分、け、怪我してて。め、目を覚ました時に、服に、ち、血がついてて。」




獣人は、どんな人なんだろう。


なぜ、ノアのことを助けたのだろう。




「私が、その獣人に会いに行ってきます。」


「は!?」




デュークが立ち上がった。




「お前、何考えてんだ!森の中がどれだけ危険か知ってんのか!」


「知ってるわ。毎日あなた方を治療してるもの。」


「じゃあ、」


「なんで獣人は山奥に住んでいるの?」


「え?」




マリア様から話を聞いている時、ずっと不思議に思っていた。


獣人も私たちと同じ人だ。


なのに、なぜ獣人は山奥に住んでいるのだろう。




「獣人だからだ。魔獣の子供だからだ。」


「でも半分は人間でしょ?ってことは、獣人だって魔獣に狙われる可能性があるんじゃないの?」


「!そ、そうなんですか?」




ノアも驚く。


でも、魔獣は人の魔力に敏感だ。


だとしたら、半分は人である獣人も、魔獣に狙われている可能性は少なくない。




「デューク団長、何か知ってるんですよね?」




そう問いかけると、デューク団長はゆっくりと私の方を向いた。




「お前の言う通りだよ。獣人も、魔獣に狙われてる。」


「……獣人は、どうやって生活してるの。」


「俺達もよくやる手法だが、恐らく魔獣の血を置いてる。」


「魔獣の血?」


「魔獣の血を置くと、しばらくの間魔獣がそこに寄り付かなくなるんだ。恐らく、獣人もその手法を使ってる。」




なるほど。


それで魔獣から狙われるのを防いでいるのか。




「まぁ、未だに生きてるってことは、置いてるのは恐らくそこら辺の魔獣の血じゃないだろうがな。」




……父親の血を置いているのか。




「デューク・ロバーツ第3騎士団長。」


「!」


「私を獣人の元へ連れていきなさい。」

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