第17話 特待生

「ねぇ、この世界ってもしかして、イケメンとか美少年多かったりするの?」


「いけめん?なんだそれ。」


「端正な顔立ちの人。」




訓練中に邪魔してしまった為、訓練が終わるまでヒュー団長の執務室で待たせてもらうことになった。




ノアはすごく可愛かった。


本当に天使が舞い降りたのかと思うほど、端正な顔立ちをしていた。


そして、私はノアを見た瞬間に気づいたのだ。


この世界には、イケメンが多いということに。




隣にいるデューク団長も、リアム団長も、ヒュー団長も、ノアも、そして他の騎士たちも。


ジャンルは違えど、端正な顔立ちをしている者ばかりだった。




「そんな興味深く見た事ねぇから、知らねぇよ。」


「でも、リアム団長は綺麗な顔してるでしょ?」


「お前っ……!」




デュークをからかってはいるが、実際リアム団長はすごく綺麗な顔立ちをしている。


結局デュークがかっさらって行ってしまったが、デューク以外にもリアム団長を好きだった人はいるのではないだろうか。


もちろん逆もまた然りだ。


デュークに抱かれたいと思っていた人がいても、不思議ではない。




もしかして、この世界はBLの世界だったりするのだろうか。


異世界BLとか。


……なんて素晴らしい響きなんだろう。


もし、仮にBLの世界に私が召喚されたのだとしたら、獣人とあのノアという人物も結ばれる可能性がある。


というか、この世界にいる男全てが男と結ばれる可能性があるということだ。




「おい!鼻血出てるぞ!」




おっと、興奮しすぎて鼻血が出てしまった。


しかし、やはりマリア様が目をつけた通りだ。




『獣人が、人間に恋をしているという噂があるのです。』




あの話し合いの時、マリア様はそう言っていた。


マリア様、実は元々腐女子だったのでは?と思わせるほど嗅覚が鋭い。


今回も恐らく当たりだ。


獣人はノアに恋をしている。


ノアはあの見た目だ。


もしかしたら、獣人はノアのことを女の子だと勘違いしている可能性もある。


それはそれでまた。




「あの、聖女様、お待たせしました。」




デュークから貰ったハンカチで鼻血を吹いていると、ノアが執務室に入ってきた。




「え、鼻血!?せ、聖女様大丈夫ですか!?」


「だいじょうぶ、だいじょうぶ」




鼻をつまんでいたので変な声になってしまった。




「おい、俺が話聞くから、お前は鼻抑えてろ。そのままじゃまともに喋れねぇだろ。」




確かに。


私は説明をデュークに任せて、聞くことに徹した。




「お前、前に遠征から帰ってきたとき、「獣人に助けてもらった」って言ってたよな。」


「は、はい……。」




デュークの表情が険しい。


ノアも萎縮している。


これは私が聞いはた方がいいのでは……。


そう思ったが、鼻血がなかなか止まらないので、仕方なく任せることにした。




「え、遠征に行った時、ぼ、僕、魔法を使っちゃって、」




"魔法を使っちゃって"?


どういうことだろう?




「僕、ふ、ふたつの属性の魔法を使えるんです。で、でも、一つは、その、暴走しちゃうんです。だから、使っちゃいけないって、言われてて、」




デュークは私の方を向き、「分かるか」と聞いた。




ごめんなさい、説明お願いします。




「魔法には5つの属性があるのは知ってるか。」


「はひ。」


「基本的にこの世界の人間は、この5つの中の1つしか属性を持っていない。例えば、俺だと火、リアムだと水、あの蛇野郎は土って感じでな。」


「なるほろ。」




だから、ノアのように2つの属性を持っている人間は珍しいということか。




「ぼ、僕は、小さい頃から魔法が使えたのですが、その、制御出来なくて、」




だから「特待生」か。


なるほどね。


ノアは小さい頃から膨大な魔力と2つの属性を有していた。


しかし、その膨大な魔力をコントロールするすべを知らなかったノアは、魔法学校に「特待生」として入学式。


2つのうち、1つだけは力をコントロールできるようになり、無事卒業をした。


もう1つの方は、卒業後に少しずつコントロールできるようにしていくつもりだった。




「でも、遠征の時に、ま、魔獣の群れに囲まれて、」




パニックになってしまったノアは、もう1つの魔法を使ってしまった。

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