第14話 騎士たちに、『癒し』と『愛』を

「私の聖水をお持ちだったのですね。」




マリア様に事のあらましを全て説明した。


というか、リーナが全部言った。




私は明日、死んでるかもしれない。


せっかく異世界に来たけど、仕方ない。


楽しかったよ。


ありがとう。


さようなら。




「私の聖水がそのような場所でお役に立つとは思いませんでした。」


「……え、怒らないんですか?」


「怒る?何故ですか?」


「いや、だって、マリア様の聖水を勝手に使って、……あ、あんなことになってしまいましたし。てっきり私は明日にでも処刑されるのかと。」


「処刑!?そんな、とんでもございません!」




良かった、どうやら明日も生きられるみたいだ。




でも、どうしてマリア様は許してくれたのだろう。


マリア様の聖水がお役に立てばという気持ちはもちろんあったが、正直あの男にマリア様の聖水を渡したのはめちゃくちゃ邪な考えだったのに。




「正直なことを申し上げますと、あなた様が持っている本に、私も感銘を受けました。」


「……え。」




感銘?


ハマったってこと?


マリア様が?




「もし、そうしてなかなか一歩が踏み出せず困っている騎士や民がいるのであれば、私はその者たちの力になりたいと思ったのです。」


「力に……。」


「私では力不足でしょうか?」


「とんでもないです!」




マリア様の聖水は、もう少し使い方を研究すれば、いくらでも応用がきくだろう。


疲れていまいち力が出ない時も、マリア様の聖水があれば疲れもたちまち吹き飛ぶかもしれない。


可能性は無限大だ。


騎士たちを治療することだけが、『癒す』ということでは無い。


ちょっとした疲れを取ってあげたり、リフレッシュさせてあげたりするのも、『聖女の役割』だと私は思う。




「マリア様、やりましょう。騎士たちに、『癒し』と『愛』を届けましょう!」


「……!ええ!」




私はマリア様の手を握った。


マリア様も、それに答えるように握り返した。




すると、リーナが確信をつく一言を言った。




「でも、そもそもあのお二方以外に、想い合っている方なんていらっしゃるのでしょうか?私は今まで気付かなかったのですが。」




確かに。


今回はたまたまあの二人が想い合っていただけだ。


私も、では他に誰がいるかと聞かれると、首を傾げてしまう。




「いえ、いらっしゃると思います。」




マリア様はそう言った。




え!




「誰ですか!?」


「私も気になります。」




私とリーナは、ずいっと前に出てマリア様の顔を見た。




「『獣人』と呼ばれる者がいるのをご存知ですか?」


「もしかして、あの山奥に住んでる者のことですか?」


「そうです。」




『獣人』?『山奥』?




「私、あの方に関して、一つだけ気になることがあるのです。」

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