第12話 ちなみに、何をご覧になりましたか

あれ?


ここは何処だろう?


何だか、頭が少しふわふわするよ。




「……女様、聖女様!」




気が付くと、私はマリア様に揺さぶられていた。




「本当に申し訳ありません!」




マリア様が涙目になりながらそう言った。




いや、違うでしょ!!




「マリア様さんが!大丈夫でしたか!?」


「え?」




私はなんてことをしてしまったのだろう。


この世界の麗しい聖女マリア様に、あろうことか、び、び、BLを見せしまうなんて……!!




「本当に申し訳ございませんでしたァァァ!!!」




かの有名なギャグ漫画のような謝り方を来てしまった。


いや、しかし、これは謝って済まされるような事案ではない。


マリア様を怪我してしまったことが、もし他の人にバレたら……。




殺される!!




「何故あなた様が謝るのですか!悪いのはこの私です。あなた様の大事なものを勝手に見てしまったのです。私が悪いのです。」


「違うんです!違うんです!」




涙が止まらない。


私があんなことを言わなければ、あんなお願いごとをしなければ。




「……ちなみに、何をご覧になりましたか。」


「作品のタイトルは分かりませんが……その……男性が……口に枷を……」




結構ハードなやつ読んでたァァァ!!!




私がマリア様を穢してしまった。


マリア様の純情なお心を、私が。


許されない。これは決して許されることは無い。


長年腐女子をやってる者として、1番やってはいけないことをやってしまった。




手遅れだ……もう……。




「……?聖女様?どこへ行かれるのですか?」


「……へへっ……お気になさらず……。」




マリア様が私を呼んでいた気がするが、今の私にはもう何も届かなかった。


そして、さらに追い打ちをかけるような出来事が私を襲う。




行くあてなど、どこにもない。


特に目的もなくフラフラ歩いていると、建物の間から何やら声が聞こえてきた。


どうせまた騎士たちが喧嘩でもしているのだろう。


くそ、こんな時に。


そう思いながら、声がするほうを見た。




私の呼吸が止まった。




そこには、興奮している様子のデューク団長と、甘い鳴き声をあげるリアム団長がいた。




そして、反対側の通路から、その光景をリーナが見ていた。

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