13

13


 僕はここで走るのをやめたくない。体力はとっくの昔に限界を超えているし、気力だっていつまで続くか分からないけど、倒れる寸前まで走り続けるんだ。


 僕は絶対に試練の洞窟を突破しないといけないんだから。


「ぐ……うぅ……。僕は……走るのを……やめたくないッ!」


「やれやれ、本当に強情なヤツだ……。よく言えば意志が強い、悪く言えば石頭だな。分かった! 休息した分はタイムリミットを延長してやる! だから素直に休むのだ!」


「っ? ホ、ホント……だね……?」


「あぁ! 嘘はつかんっ!」


「てはは……は……」


 ミューリエの言葉を聞いた途端、不意に僕は全身から完全に力が抜けた。休息をしたあとも稽古をつけてくれると分かって、安心したからかもしれない。


 そして勝手に体のバランスが崩れて、そのまま倒れ込みそうになる。当然、それに抗う力なんか残されていない。とてもじゃないけど踏ん張れそうにない。


 ――でもその時、僕の体は柔らかさと温かさに包まれた。


 気付くと僕はミューリエに支えられていて、程なく心地の良い力が体の中に流れ込んでくる。


 チラリと視線を向けると彼女の体は蒼い光に包まれ、それが僕の全身に作用しているようだ。どうやら彼女は回復魔法をかけてくれているらしい。


 直後、僕の意識は薄れ……自然と……目蓋が閉じ……て……。


「まったく、極端なやつだ。このままでは身体が壊れてしまうぞ? ……さて、そろそろ賭けに出てみるか」


「…………」


 ミューリエが何かを話していたような気がするけど、薄れゆく意識の中ではその内容がどんなものだったのかまでは分からなかった……。



 →71へ

https://kakuyomu.jp/works/16816927862192814506/episodes/16816927862195446225

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る