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遅い昼食を採ったあとも僕は走り続けた。自分には思っていた以上に根性だけはあったみたい。もちろん、全身が痛くて疲労感も半端なくて、気を抜いたら倒れてしまいそうだけど。
また、それが自分でも分かっているから、休もうという意識は起こさない。
残された時間を最大限に使うんだ。無駄にはしたくない。
そしてとうとう太陽は地平線の向こうへ沈み、闇が周囲を染め始める。要するにこれからはモンスターたちが活発になり始める時間帯へ突入するということ――。
もっとも、屋外でモンスターに襲われたことは一度もないけど。ドラゴンとは出会っただけで戦闘になってないもんね。
猛獣だってレインさんを助けた時の熊ぐらいなものだし。
もしかしてこれだけ敵との遭遇率が低いのって、僕の運が良いってことなのかな?
――理由は分からないけど、それならそれで僕にとっては好都合。まだまだ空には明るさが残っているし、本格的な夜になっても月や星の光がある。
ミューリエが稽古をつけてくれるのは日没までって約束だけど、捉え方次第では次の太陽が昇るまでって言い張ることだって出来る。つまり今日という日は終わっていないんだ。
そう考えれば、そのあとに少し休息を取ったとしても試練の洞窟へ挑むまで猶予がある。だから最後の最後という瞬間まで走り続けてやる。
もしかしたら、ほんの数分でもミューリエが剣を握らせてくれる時が来るかもしれないし。
まぁ、彼女の性格を考えれば、その可能性は99.999%ないだろうけどね……。
でも残り0.001%の希望に、僕は全力を注ぐだけ。やらずに後悔するくらいなら、やって後悔したい。
「はぁ……ぁ……は……ぁ……っ……」
「お、おい、アレス! そろそろ休めっ!」
周囲が暗くなってもひたすら走り続ける僕を見て、ミューリエは戸惑ったような声を上げた。今まではけんもほろろに軽くあしらわれていたのに、今回は彼女の方から口を出してくるなんて。僕がここまでやるとは想定外だったのかもしれない。
てはは……これって一矢報いたことになるかな……?
だけど、いくらミューリエが休めと言ったって、素直にそれに従うわけにはいかない。だって僕には時間がないから。ギリギリまで走り続けてみせる。
「まだ……だ……ッ! まだ……がんばる……!」
「バ、バカもの! 体力をつけるには休息することも必要なのだぞっ!?」
確かにミューリエの言う通りなのかもしれない。休息して回復する時に体力や筋力などの能力がアップするって、何かの本で読んだような気がするから。
ただ、ここで足を止めてしまったら、きっと明日まで動けなくなってしまうと思う。
――さて、どうする?
●休息する……→50へ
https://kakuyomu.jp/works/16816927862192814506/episodes/16816927862194936668
●もうしばらく走り続ける……→75へ
https://kakuyomu.jp/works/16816927862192814506/episodes/16816927862195559631
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