第31.5話 舞台裏にて
所属事務所の会議室にネクストジェネレーションの5人が全員集められていた。
リーダーのヒマワリが青ざめた顔でパイプ椅子に座っているのを見たセイは、嫌な予感で胸がいっぱいになった。
入ってきたマネージャーとプロデューサーの顔を見て、セイは予感が確信に変わった。
「ヒマワリが週刊誌に彼氏とのツーショット写真を撮られた」
処分――ヒマワリに彼氏の存在を打ち明けられた時、ヒマワリは事務所にバレたらどんな処分が下されるか分からない、と言っていた。
セイはヒマワリへの処分を言い渡されるのかと心臓がキュッとなった。
「言い訳しようもない。ノーコメントで通す。メンバーも一切口を割らないように」
「ノーコメントって、余計に心象悪くなりませんか? ちゃんと会見した方が――」
ミオの言葉に、セイもうんうんとうなずいた。
「事実です、彼氏で間違いありませんって公表できるわけがない。初の武道館ライブが決まってプロモーションもバンバン入れてるって言うのに。来週にはネットに出る。知らぬ存ぜぬで通せ」
「しばらく騒がれるだろうが、静観に徹すれば武道館のチケット販売までには収まるだろう。何もなかったことにしてやり過ごせ」
言い切ると、マネージャーとプロデューサーは会議室を出て行った。
セイはホッとした。
ヒマワリに処分は下されない。騒動をなかったことにしてやり過ごす。
「ごめん……大事な時なのに」
ヒマワリがまるで顔を上げない。
いつも引っ張ってくれる大好きな頼れるリーダー……セイは悲しくなってきてしまった。
「大事な時だからこそ、みんなで一致団結して乗り切ろう! 全員で武道館に立とうよ!」
ミオが大きな声で明るく言うと、ユイナもうなずいた。
「ヒマだけのせいじゃない。私たちも何も言わなかったんだから、連帯責任ってやつだよね」
みんな、ヒマワリがネクジェネのために時間も労力も惜しまず誰よりも精力的に仕事に励んできたのを見ている。
彼氏がいると知っても、誰も苦言を呈さなかった。
「絶対にヒマの彼氏の話はしない! どれだけしつこくてもダンマリ通す!」
「セイが一番心配なんだよなあー。つい言っちゃいそうで」
「そうそう、セイは煽り耐性低すぎなんだもん。挑発されたらしゃべりそう」
「そっ……そんなことない! ヒマを守るためだもん!」
立ち上がって懸命に訴えるセイを大人メンバーが笑う。
「セイこそ、気を付けなよ」
エマが冷めた目でセイを見上げた。
またか。エマはすぐに絡んでくるんだから……。
「何に」
「週刊誌」
「私は彼氏なんかいないから撮られようがないんだけど」
自分から絡んできておいて、エマは無言で立ち上がると会議室を出て行った。
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