子供の見える世界

バブみ道日丿宮組

お題:ひねくれた雑草 制限時間:15分

子供の見える世界

 子供はいいました。

『どうして元に戻す必要があるの』と。

 それを聞いた大人たちは困惑しました。

 強制することはできません。

 したところで、子供の頭脳を操作することは彼らには無理だったのです。

 天才と、普通の人間、雑草のような人間、人間以下の雑草のようなもの。

 いろんな人がいるこの世界の中で特殊すぎたのがこの子供でした。

 この世界を変えたといっても過言ではありません。

『喧嘩をなくすにはその逆にすればいいんだよ。そうすれば、何もなくなるよ』

 無邪気に笑う子供はまるで悪魔の微笑みのようでした。

 実際、悪魔の子供。

 そう世界では恐れられていました。

 暗殺することも、殺害することも、教育することも、特別扱いすることもできません。

 なぜならば、子供をどうにかしてしまえば、この世界を改変させたことをもとに戻すことは二度と不可能になってしまうから。

 教育するにしても、特別扱いするにしても、天才の考えは理解できません。

 ある意味でその子供はひねくれてたのです。

 人間以下の雑草と呼ばれる世界でゾンビ化した生活を送る人間のように。


 だから、大人たちは困惑しました。


 世界を戻すにはどうしたらいいのか。

 ウィルスを止めるにはどうしたらいいのか、感染を防ぐにはどうすればいいのか、治すには何をしたらいいのか。

 考えに考えをぶつけても壊れるばかり。

 それも子供が作ったウィルスのせいでした。

 悪いことはいいことになる。いいことは悪いことになる。

 つまりは、喧嘩ばかりして離婚しようとしてた夫婦が円満な夫婦生活を始める。

 そのために、天才だった子供は不思議なウィルスを考えてばら撒いたのです。それがどんな被害をもたらすかなんてことは子供には理解できませんでした。

 子供の世界は、家の中。

 喧嘩ばかりが起こり続ける親を見る生活ーーそれだけでした。

『いいことをしたんだよ。みんななかよくなったでしょ?』

 大人は首を動かせませんでした。

 戦争が終わったところ、はじまったところ……。

 あまのじゃく現象が各地で起こってるのです。

 それをいいことだとは思えませんでした。

 確かに戦争が終わったことはいいかもしれない。けれど、仲の良かった国同士が争い始めるのはいいことではありません。

 

 そうして、子供が大人になった時世界は完全に変わってしまいました。

 1人の天才のためにある『世界』へと。

 ウィルスは結局止められず感染者しか残らず、唯一対抗手段がわかる大人になった子供がその世界をにっこりと笑うーーひねくれた毎日が今日もまたはじまりました。

 それが月曜日のはじまりと、書籍には残されてた。

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子供の見える世界 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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