救世主の意味
バブみ道日丿宮組
お題:愛、それは任務 制限時間:15分
救世主の意味
悪といえば悪、正義といえば正義。罪は罪、過去は過去。
変えられないものは変えられない。
かつて、いや……今も続いてる気持ちが仮に嘘だったとしても、あったことには変わらない。知らない歴史、生きてなかった時代。それはさすがにボクにもわからない。
見たものが所詮生きてたものの限界点。それ以上は頭には入らない。通り過ぎた人の顔を全部覚えられないようにどうでも良い記憶から消えてく。
それが……今回知り合い、恋人を殺すことになるだけの話に過ぎない。
「……どうした不服か?」
「いえ、別にそうではないです」
不服。不満。
愛がなかったわけじゃない。恋でなかったわけでもない。
叶った想いがあった。恥ずかしい絆さえあった。
それが、それが過去になるだけなのだ。
「別にお前にやらせなくても他がやるだけだ。そのために自分でここにきたのだろう? 選んだのは他でもないお前だ。救世主さん」
その名前は嫌いだ。
世界を救うために変えられた運命の力。
「……そうですね。その通りです」
「ならばいけ。遅くなるだけ、お前の記憶はより厚く消えぬものになる。それにーー」
同じ時は生きられない。
空から落ちる。
そんなゲームも昔はやったことがあるし、バグでみたこともある。
まさか自分がそんなことをして地上へと降下するなんて夢にさえも思わなかったな。
『生きたいか、生きたくないか』
選択肢。
それをボクは間違えたのだろうか。安易に決めてしまったのがいけないのか。死にたくないと願うのはいけないことだったのか。
まさに悪魔との契約ーー世界のために悪に変わる全てを破壊する任務を受ける死者。
そんな存在になるなんて知ってればこうならなかったのか?
「……今更遅い話」
生きたおかげで、恋人との時間を過ごせた。
過ごせなかった過去を送ることが出来たのだ。
ボクがすることは悪であり、これから起こるための正義にもなる。
もう罪の意識は感覚としてなくなってきてる。
いや、最初から切り捨てられてしまってたのかもしれない。
人間は人間ではない。
救世主は、救世主ではない。
人を救うために人を殺す。
人を殺すために、何かを犠牲にする。
さぁ、本当の救世主とは何か教えてくれ。
ボクを助けてくれた神様とやらは、『救世主』が何人も世界に必要だと話す。
自分の手は汚さず、同じ人間だったものが救う。
神様に愛はあるのだろうか。
愛を持って、ボクらを作ったのか。
何かの意味があったのか。
地上にたどり着いた時、ボクは既に人の認識から消失してた。
救世主の意味 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます