少しふしぎな小話集

「灯」

自分の住んでいる集落には、火祭りがある。

数キロの道のりを松明を持った大行列が移動するという、観光客の参加も大歓迎のお祭りだ。

なんでもかつてこの場所で行われた合戦を由来とするそうで、常連の中には手作りの甲冑を装着したり、足軽のコスプレして参加する人もいる。

暗闇からぽつ、ぽつと松明の火が灯され。それがだんだんと長い行列になって集落内を移動する景色はそれはそれは幻想的。

自分の家はその行列が綺麗に見える場所にあるんで、毎年楽しみにしてるんだ。

で、コロナで。ここ数年、お祭りが中止となったんだ。

でも、去年、見ちゃったんだよ。5、6個ぐらいの灯が暗闇の中、ふわふわと移動してるのを。

は！？中止じゃん！？とびっくりして見てると、ルート全部は通らずに、途中でフッって列の前から順番に消えてったんだ。

実はその消えた場所、かつて鳥居があったと言われる場所付近だった。

もしかすると、合戦で命を落とした人たちの人魂だったのかなと。

毎年の松明行列の灯に、ひっそりと忍び込んで参加してたんじゃないかなー。

続けて中止になっちゃったから、寂しくて出てきちゃったのかな、と。

今年は出来るかな。もしかしたら松明の灯以外の灯が、紛れ込んでるかもしれないから見てみたいなって思った。