「お墓とおっちゃん」

その集落はいわゆる「山間地域」に属する場所にあるんだ。ちょっときつい言葉で言うと「過疎地」「限界集落」と呼ばれるようなところね。

子供がいる家はちらほらとはあるけれど、集落の8割近くが60代以上のおっちゃんおばちゃん、じーさん、ばーさんという、今の日本には少なくないと思われる、田舎の集落。

そういうところの墓地は裏山や奥庭、畑の近くなど、家の土地の一角を綺麗に整備して建てられていることが多いんだ。

ある年のお盆に、用事があって、その集落にある、ある家を訪れたんだ。

おっちゃんに用事があって一応先に連絡はしてたんだけど、家には奥さんしかいなかった。

「あの人なら今、お墓で楽しく飲んでるわよー」と、奥さんに裏庭まで案内されたんだけどさ。

おっちゃん、本当にお墓の前で酒盛りしてた。

ビール片手にすんごくいい笑顔で、ほろ酔い気分っぽくお墓を見てたんだ。

何故かお墓は、なんかもやに包まれたように輪郭がぼんやりしてたんだけど、よく見てみるとさ、なんかそのもやが人影っぽくも見えたんだよね。

ああ、お盆だからご親族の方々が戻ってきてるのかな。おっちゃんもそれを感じて、いい笑顔で酒盛りしてんのかなーって。

なんとなくおっちゃんたちの酒盛りを邪魔しちゃアレだなって思っちゃったんだよね。

特に急ぐ用事じゃなかったんで、奥さんに後日また伺いますってお伝えして帰ってきたんだけどさ。

なんか素敵なお盆だなーって思ったな。

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