「一反木綿…?」

まだ、小学校の頃のことだ。

通学路をいつものように、友達と一緒に歩いて帰ってたんだよね。

その通学路は学校側から見て右側は住宅地、左側は住宅地を造成したときに山を削ったそのままの法面で、下を流れる川や下方部にある昔ながらの住宅地がよく見え、そして空や遠くの山々も見渡せるという、結構見晴らし良い場所にあった。

色鬼だとか石蹴りだとかふざけながら帰ってたら、前方にいた他学年のグループが空を見上げてなんか騒いでたんだ。

なので自分たちもつられて、その視線の先を見上げてみたんだよ。

そしたらその先には、白くて布のような物体が、体を上下にくねらせながら空中を泳いでたんだ。

風に飛ばされてるシーツじゃね?という声もあったけど、明らかにシーツよりは長さはあって幅も細かった。

そして、その物体は風に吹かれて飛んでるというような感じではなく、本当にクネクネと意志を持って動いてるようにして空中を泳いでるとしかいいようがない、不思議な動きをしていたんだよ。

小学生の少ない知識で思い浮かんだのは妖怪の「一反木綿」。

やはり他の子もそう感じたようで「あれ、一反木綿じゃね?」と誰かが呟いた結果、「一反木綿だよ!」「本当にいたんだ!!」と、みんな大興奮で大騒ぎした。

そのまま、ずっとずっと一反木綿らしきものを見てたんだけどクネクネと空を泳ぎながら、山向こうへと消えていったなぁ…。

その後、また一反木綿が見られないかと、そこを歩くときには気をつけていたんだけど、目撃できたのはあの一回だけ。

それでも実家に帰って、あの近くを通るたびにいつも空を見上げてしまうのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る