「鈴」
そいつが社会人になって引っ越した家は、神社の隣にあった。
字名も神社に関する字名で、かつては(今も?)神社の領域だったのかもしれない。
そんな土地に今から暮らすわけだし、お隣さんになったことだし、挨拶ぐらいはしておかないと失礼だろうと、引っ越した日にお参りしたらしいんだよね。
隣に引っ越してきました、これからどうぞよろしくお願いします、って。
そしたら、なんか「リンッ」って鈴が鳴るような音がしたらしいんだ。
まぁ、小鳥かなんかの声がそう聞こえたんだろう、そのときはそう思ったそうだ。
まだあまりものがない、ちょっと殺風景な部屋で初めての夜を明かして。
翌日、ドアを開けたらびっくりしたそうだ。
玄関先にぽつん、とちょっと古ぼけた感じの鈴が落ちてたという。
ああ、あのとき聞こえた鈴の音は聞き間違いじゃなかったのか。そして神社の住民に、自分は受け入れてもらえたのかもしれない。
そいつはそう思って、「いただきます。ありがとうございます」と、心の中でお礼を言って、鈴を受け取ったそうだ。
そいつの家の靴箱の上には、その時もらったという鈴が今でも大切に飾られているという。
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