【実話】盛り塩

 昔、バイトをしていたホームセンターの屋上の自動ドアの近くに盛り塩が置いてあった。


 目立たないような隅に数箇所、綺麗な白色の盛り塩が自動ドアを囲むようにして、配置されていた。


 定期的にカート回収をしに屋上に行っていたが、その度になんとなく盛り塩を確認していた。


 いつもある程度の期間で盛り塩は新しくされているので、誰かがきちんと管理しているようであった。


 別に盛り塩事態に霊的の意味がないとはわかっていたので、別に怖くもなんともなかった。店などに置かれる盛り塩の多くは商売繫盛等の願いが込められているものらしいからだ。


 ある日の夜遅く、することもなかったので屋上へカートを回収しに向かった。


 エレベーターに乗り、屋上へ上がる。エレベーターの扉が開き、正面に屋上の自動ドアが見えた瞬間だった。

 

 自動ドアがゆっくりと目の前で開いた。手前にも奥にも誰もいない。そして閉まりきる直前にもう一回だけウィンと開いた。


 故障かぁ。店長に報告した方がいいのかなぁ。そう考えながら自動ドアに近付いたが、自動ドアは開いたままであった。


 とりあえず、カート回収してから考えるかと思い、屋上に出る。屋上には、車が数台だけ端っこの方で停まっているだけで、人影は一切なかった。


 カート置き場へと向かうと、背後で自動ドアが閉まった気配がした。カートは数台だけだったので、そのままゆっくりと押しながらエレベーターの方へと向かう。自動ドアは閉まったままであった。


 そして、いつも通り自動ドアに近付いた時に、チラッと下の方を確認した。盛り塩が一箇所だけ、風に吹かれたのか、圧倒的に量が少なくなっていた。それでいて、少しだけ黒ずんでいて、珍しいなと思った。


 もしかしたら、さっきの自動ドアも関係してる?霊障か?なんて、心の中でニヤニヤしていたが、まぁそんなわけないかとカートを押して自動ドアを潜り抜ける。


 カート回収してからは何しようかなぁ、何か作業あるかなと思いながらエレベーターのボタンを押す。一階からエレベーターが昇ってきて、屋上に着き、チンと音を立てて扉が開く。エレベーターの中には誰もいない。カートを押し込んで、一階のボタンを押す。


 その後は普通に品出ししたりして、閉店まで時間を潰した。


 後になって、この話を振り返った時に「そういえばおかしいよなぁ」と気付いて、少しだけ怖くなった。

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