第6話 美女勇者シーラ登場(後編)
南の勇者シーラは、自己紹介をしてくれた。
クロノス国出身のシーラは、大魔王戦パーティーにて活躍した大僧侶ジェシカの娘で年齢は22歳。
左目尻のほくろがチャームポイントで、母ゆずりの癒し系魔法を得意とするらしい。
ルビが思うにおそらく町で見かければ、男性10人中9人は振り向くであろう美貌とスタイルを備えていた。
さらに、勇者としてカンストしている猛者でもある。
「あ、あの~すみませんでした。まさか入浴中とは思わなかったものでして……」
ルビは、あたふたと目のやり場に困りながらシーラに弁解する。
「うふふ。いいのよ。ちょっと驚いちゃったけど事情が事情だし……恥ずかしかったけど許しちゃうわ。」
(ああ……これが大人の女性の包容力!フレイヤ女王とは、また違った女性の魅力がある。アーネとは大違いだ。)
「何よぉ~~?」
アーネは、ルビの視線に気づき、いぶかしげに絡みついてくる。
「き、気にしないで……」
「気にするわよ!」
アーネは、ルビの心を見透かしたように頬を膨らませ、そっぽを向く。
「ルビよ。これで南の巨乳シーラ……じゃなくて南の勇者シーラは、いつでも呼び出せるわい。」
宝玉は、シーラの膝の上にしっかりと鎮座しながら語りかけてきた。
(なんて言い間違いをするんだよぉ!アーネが物凄い形相で睨んでるじゃないかぁ!)
ルビは、心の中でそう叫んだが、シーラの胸をチラッと見て、言い間違える気持ちは分かるとも思った。
ルビは、気を取り直してタマに話しかける。
「そういうもんなのか?」
「召喚したい相手の名前を念じるか、呼びながら召喚すれば可能じゃ。」
シーラは、いつの間にか膝の上に乗っていた宝玉を凝視して言う。
「よく見るととても珍しい宝玉だわね。補助宝玉の一種みたいだけど……」
「何コイツ?えいっ!」
アーネが、指でピンと宝玉を弾いた。
「何をするのじゃ!転がってしまうじゃろ!移動は、魔力を消費するのじゃ!やめるのじゃ!」
「へぇ~えい!えいっ!こいつに名前は無いの?」
「名前?まだないな……今日もらったばかりだしな。城の地下宝物庫で見つけたんだ。掘り出し物だったのかもな!」
いつまでも宝玉にイタズラを続けるアーネ。
「だからやめろって言ってるじゃろ!この貧乳め!」
「何ですって~っ!私はこれでも西の勇者なのよ!たかがサポート玉のくせに生意気!もうコイツの名前は『タマ』でいいんじゃない?」
「『タマ』な~宝玉に名前を付けるもんなのか?別に何でもいいんだけどな~う~ん。じゃあ、面倒だし『タマ』で決定で……」
「お、お前らっ!名前は、大事なんじゃぞ!真剣に考えんか!愚か者ぉっ!」
タマが、いつまでも不満を言っている時だった。
シーラが、驚いた表情でアーネに近づいて来る。
「ああっ!落ちるっ!落ちるぞい!」
タマが、シーラの膝から転げ落ち、壁にぶつかり停止する。
「アーネさんが、あの有名な西の勇者だったのね。ぜひ、一度お会いしたいと思っていたの。母と大賢者アミー様は、とても仲が良かったと聞いているわ。私達も娘同士仲良くしましょうね!」
シーラは、会えて感動とばかりにお互いに母同士の関係を説明してくれた。
「え、ええ……こちらこそお願いします。呼び方は、アーネで構いませんよ。」
「そう?じゃあ、私のこともシーラと呼んで下さいね。」
「それとこっちは、勇者マリアンヌ様の息子のルビよ。」
アーネは、ついでとばかりにルビを改めて紹介する。
「そうなのぉ?マリアンヌ様が、子供を育てているとは聞いておりましたが、そうですか……あなたが…………ルビと呼んでいいかしら?」
「もちろんです。シーラさん。」
「うふふ。シーラでいいわよ。」
「じゃあ……シーラと呼ばせてもらいます。」
ルビは、とても照れくさそうに呼び返した。
(シーラか……とても気さくな人だな。母親は、大魔王戦の勇者パーティーメンバーか……一体どんな熾烈な戦いが繰り広げられたのだろうか?母さんが生きているうちにもっと話を聞いておけばよかったな。)
ルビは、奇妙な出会いもあるもんだとシーラを見つめながら運命を感じていた。
すると、アーネが鼻の下を伸ばしているルビの腕をつねった。
「イテェェェ!何すんだよ!」
「知らない!」
「うふふっ!ルビとアーネは、恋人同士なのですか?」
シーラが、直球に質問をしてくる。
「な、ななっ!だ、だ、誰がこんな奴と!ただのご近所の知り合いよぉ!」
アーネは、顔を真っ赤にして全力否定する。
「そ、そうですよ!誰がこんなブレイズアローばっかりぶっ放す狂暴勇者なんかと!」
「はぁ?いっつもあんたが悪いことするからでしょ~」
「うふふっ。そう……二人とも可愛いものね~」
シーラは、その二人のやりとりを楽しむように見つめていた。
(あれはワザとじゃな……南の勇者シーラ。美人じゃがかなり癖がありそうじゃの~)
宝玉……ではなく、タマは、シーラを見つめながらため息交じりに思うのだった。
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