第5話 美女勇者シーラ登場(前編)

「分かった。とりあえず一人勇者を召喚してみることにしよう。」

ルビは、初めての魔法スキルに興奮していた。


「ふむ。名前を呼ばない初勇者召喚の場合は、一番近くにいるレベルMAXの勇者を召喚することになるぞ。」

(へぇ~ボケたサポートアイテムと思ったが、まともにサポートするじゃないか。)


「いくぞ!レベルMAX勇者召喚っ!」

ルビの目の前に青白い魔法陣が形成され、光り輝く。


(よしよし!いい感じだ。まるで召喚師になった気分だぞ。これで上手くいけばアーネに自慢できる。もう無能呼ばわりはさせない!)

魔法陣に人影らしきものが、じわじわと見え始める。


「来た来たぁぁ!勇者様いらっしゃーーい!」

ボンッ!


「キャーーーッ!」

「え?叫び声?これは女性……女勇者?」


ルビが目を凝らすと大量のお湯も一緒に召喚されたようで床が水浸しになっていた。湯けむりが邪魔だが、髪の長い女性らしき姿が確認できる。


「ぬほほぉぉっ!入浴中の女勇者が来たわいっ!」

興奮した宝玉の声に事態を察するルビ。


(勇者がお風呂に入ってる時でも召喚されちゃうんだぁ!ど、ど、どうしよっ!?ゴクリ、このまま湯けむりが消えると全部見えちゃう!いいのか!いいのかよぉ!?)


その時だった。

「こんばんは~ルビぃ~謁見はどうだったぁ?ご飯でも食べながら話……を……」

「ア、アーネ…………こ、こ、こん……ばんは……」


(このタイミングでアーネが来たぁぁ!俺、お、終わった……)


「は、裸の女の人が泣いてるぅ!?……心配して来てみれば、ルビぃぃぃあんたって人はーー!」

顔を真っ赤にさせたアーネは、完全に別次元の怒りに震えていた。


「ブ、ブ、ブレイズゥアローォォ!」

ドッカーン!

アーネの攻撃魔法が、ルビに炸裂した。


「イテテッ……」

ルビは、ブレイズアローで軽い火傷を負うが、アーネの回復魔法で事なきを得た。


もし、アーネが本気でブレイズアローを放っていたらルビの家など一瞬で吹き飛んでいたであろう。


「そういうこと……それならそうと早く言いなさいよ!」

事情を聞いたアーネは、召喚された女勇者に予備の自分の服を着せながら言い放つ。


「そんな余裕があったか?」

「な、ないわね……ごめん。」

アーネは、ペコリと素直に謝罪した。


「私は南の勇者シーラです。まさか伝説のユニークスキルで勇者召喚されちゃうなんてね。あん!ちょっと胸がキツイわ……なんだかこの服……見えそうで落ち着かないわね……」


大人の魅力200%の美女勇者シーラは、モジモジと何度も服のあちこちを引っ張っている。

「お、おおぉぉ!」

ルビと宝玉は、声を揃えた。


「貧乳で悪かったわね!そこぉ!チラチラ覗かない!私だって大人になれば、あれくらいになるもん!そ、それにしてもスキル無しの無能なあんたが、伝説のユニークスキルなんてどういうことよぉ!?」


アーネは、そう言った後、とても悔しそうにルビを見ていたが、少しホッとしたように微笑んだ。


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