第4話 謎の宝玉

「ふぅ~疲れたぁ!」

ルビは、自宅に戻るとため息混じりに椅子に座り込んだ。


「これで旅に出られるな…………母さん……何があったんだよ。」


1か月前にルビの育ての親であるマリアンヌが、隣町へ向かう途中で何者かに暗殺されたのだ。

現役を退いていたとはいえ、仮にも勇者が殺されたということでラーンザイル王国に激震が走った。


「母さんを倒せるような奴……もし、見つけたとしても俺なんかが勝てるはずがない。そんな事は分かってても俺は……」

そう呟きながら先ほど城の地下宝物庫からもらってきた宝玉を見つめた。


「やっぱりこの札って封印の札か何かだろうな……どこで買い取ってもらおうか?」

ルビは、宝玉の中心に垂れ下がる分厚い札に少しだけ触れてしまった。


パシッ!

その瞬間、何か弾ける音と共に札が取れてしまう。


「いっ!いぃぃぃっ!?ちょっ!?やばいやばい!これやばいだろぉ!」

宝玉が、怪しく輝きだす。


「ひぃぃっ!やっぱり呪いのアイテムなのかぁぁぁぁ?どうして封印が解けたぁ!?」

その怪しい光は、部屋中に広がり一気に明るさが増す。


ピキピキピキッ!ピカーーーッ!

(これ……死んだな。うん!死んだ。母さん、何もできなくてごめん……そっちに行くよ。)

ルビは、あの世で母さんに会う覚悟を決めた。


シューーーーーン……

だが、さっきまでの輝きが嘘のように徐々に光が集束し、消えていく。


ルビは、薄目を開けながら状況を確認する。

「……あ、あれ?…………助かったの?」


「……ここは……どこじゃ?」

「ひぃっ!」

いきなり宝玉が話し出したのでルビは、驚きで飛び上がりそうになった。


酷く掠れた声が聞こえた。

その声は若くはなく、中年以上の男の声に聞こえた。


「お前は……誰じゃ?」

「お、お、お前こそ何者だよ!」

ルビは、宝玉の問いに問い返した。


「質問に質問で返すのか?わしは……わしはな……」

「お、おう……」

ルビは、極度の緊張感からゴクリと喉が鳴った。


「……誰だっけ?」

「ええぇぇっ!?」

全神経を集中し、その物体の回答に期待していたルビは、肩透かしを食らう。


「まあそれはそれでよいがのぉ~」

「いいのかよ!自分が何者か分からんのに軽いな!」

ルビは、あまりにも予想外な展開に宝玉のペースに巻き込まれていく。


ピコーン!

「ルビは、宝玉主従効果によりユニークスキル『レベルMAX勇者召喚』を獲得しました。」

システム音と共にその宝玉は、いきなりサポートアイテムのようなメッセージを告げてきた。


「なんだ?ユニークスキル『レベルMAX勇者召喚』?」

「うん?ルビとは誰じゃ?」

「俺だよ!」

ルビは、まるで漫才のように突っこんだ。


(おいおいおいっ!まさかこの宝玉の正体ってボケたサポートアイテムなのかぁ?確かにそれはある意味で呪いのアイテムだ!こんなの高く売れんぞ!それどころか逆に買取手数料を請求されかねない!)

ルビは、どうすべきか頭を抱えて真剣に悩む。


「ルビとやら……早速、ユニークスキル『レベルMAX勇者召喚』を使ってみてはどうじゃ?」


(そうだそうだ!ユニークスキルだったな!いやいや、しかしだ!『レベルMAX勇者召喚』だと?怪しい!怪しすぎるっ!勇者を召喚なんてできるのか?しかもレベルMAXで?)


「心配しなくてもよいぞ。初めは誰でも不安なのものじゃからの~」

その宝玉は、まるでルビの心を見透かすように話しかけてくる。


(こうなったらとにかく確認するしかない!どの道この宝玉に価値がなければここで詰みだからな!)

ルビは、このユニークスキルとやらに挑戦する覚悟を決めた。


「それで……使い方は『レベルMAX勇者召喚』とでも唱えればいいのか?」

「そうじゃ。ただ、魔法スキルと同じで心から念じる必要はあるぞ。あと、一度の必要魔法力は、1万MPじゃ。」


「い、1万MP?俺にそんな大量のMPは無いぞ!」

ルビは、やっぱり使えないという感じで肩をすくめた。


「何を言っておる。お主のステータスをよく見てみい!現在のおぬしのMPは、10万MPはあるぞ。」


「はぁぁぁ!?そんなわけあるかよ!……って!本当に10万MPになってるぅ!ゴクリ……これはひょっとして強力な魔法も打てるのか?」


「ふ~む。残念じゃが、おぬしは何か強力な封印がなされておるの~使えるスキルは『レベルMAX勇者召喚』だけみたいじゃぞ!」


「強力な封印だってぇ?」


(なんだ?俺に封印が?まあボケたサポートアイテムが言うことだ。どこまで正しいか分からないが、見たところスキル欄に本当に『レベルMAX勇者召喚』だけはある。駄目で元々だし、こうなったら使ってみるしかなさそうだ。)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る